詩 

2011年07月からの分は→ 詩NO3へ
2009年12月までの分は→ 詩NO1へ
 日記的に書いたもので、推敲が十分ではありません。お見苦しい点は、御容赦願います。

 掃除の過程で、15歳頃から35歳時に書いたと思われる作品が出てきました。
 2010.05.22から、当分の間、順不同で掲載いたします。




新作(2011.06.29)

 初夏そよぐ

午後七時を過ぎても明るい
観世音寺から戒壇院を回り
裏道を歩く
西日が正面にあり
まぶしさに帽子の庇を下げ
肌に心地よい風を浴び
都府楼跡へと向かう

菖蒲は花を終え
紫陽花も主役の座を
降りようとしているけれど
庭の隅にシャラの花が
ひっそりと白い顔を見せ
石垣の中頃に
ドクダミの群生が
あったりする

ゆっくりと光る風に
向かい歩きゆくと
公民館のあたりが騒がしく
光が窓ガラスに揺れ
ドアが何度も開かれては
閉ざされる

側溝を流れる水が澄んでいて
小さな音を奏でながら
かなりの早さで流れ
水草を楽しませる

都府楼跡の原っぱには
十人と人の姿はなく
伽藍跡を四王寺方面に向かい
歩けば
折からの風になぶられ
トウカエデの繁りが
サワサワサワと鳴るばかり




新作(2011.06.26)

 
六月の台風

風速三十メートル
ではあるけれど大型だという
珍しく朝鮮半島の方に向かいゆく
台風の端がかすめるだろう
位置にあってさえ
一日中鼾をかくときのような
まぜっかえしの風が強く鳴る

暑い
蒸し暑い
通りに出れば電線が撓み
シャツの背中が膨らむ
湿りを帯びた風を
切るペダルが重い
木の葉が吹き千切られ
低く舞い散る
暑い、やけに暑い
三十九度八分というのは
昨日のことだけれど
台風が持ってきたには違いない

この時期
このコース
覚えがない
覚えがないことが多すぎて
少々のことでは驚かないけれど
べったりした風だけは
爬虫類の舌のように
纏わり付いてやまない



新作(2011.06.24)

 
緑深く

今年の新芽の色は緑が濃い
ツバキ、サザンカ、カキなどの葉は
緑というよりも黒緑に近い
日射しを貪欲に浴びて
ぷくぷく太っている

ニュースで報じられた新茶の葉も
丸々とした健康優良児の
そのもののようだった
放射能汚染が限度を超えているから
使い物にならないという新茶の葉が

野菜、果物、牛乳、魚介類
どれもがいつの年にも増して
健康そのもののようだった

目に見えない放射能という悪魔が
今年に限って悪戯の限りを
尽くしているのだろうか

先の見えない
断崖絶壁のような今であればこそ
木々の緑はあくまでも深く
日射しに煌めき翻り躍らせ
精一杯の花を開かせ
摘み取った新茶の芽を火に燻べ
絞りたての牛乳を
そのまま廃棄しろというのだろうか



新作(2011.06.21)

 
去年と今年

去年と今年とでは大きく違う
大震災のせいで
明日が来ることさえ信じ難くなった

薄明かりが射し
小鳥の囀りがあちこちから聞こえ
朝靄があがり
朝刊配達のバイクがやって来て
郵便受けがカタンと鳴る

日射しがカッとあたりを照らし
だんだん穏やかな光となり
玄関が開かれ
ヘルメットを被った
子供たちが飛び出してくる

夕日が西の空を染める頃
子供たちは賑やかな足音をたて
通りを戻って来る
手に手にヘルメットをぶら下げて
 
今日が来た
ちゃんと今日が終わった
なんという何気ないことだろう
こんな何気ない日々が
これまでずっと過ぎてきたことに
立ち止まり
ありがとうと言い
明日もちゃんと来てくれるよう
願うばかりだ




新作(2011.06.17)

 
カワセミ

黄濁し音たてて流れる川辺に
青い宝石のようなカワセミが
岸辺に佇み
うっとりと水を眺めている

親愛の情を示そうと
ゆっくりと近づき
一メートルの距離まで近づいた

うっとりと水を眺めているかに
見えたカワセミは
近づくものの気配を察したのか
コクンと首を一つ振り
エメラルドのような羽を
すばやく広げると
真下の水に向かい
弾丸のような礫と化して
飛び出し

勢いのままに
鈍色の空のあわいに
鋭角に切り込んで行った




新作(2011.06.15)

 
花の季節

六月、瑞々しい花が咲く
紫陽花、菖蒲、菩提樹の花
雨の粒を受け青や紫や黄の花弁を
静かに開いている

大粒の雨滴に濡れそぼる
紫陽花の花弁は清々しく
たおやかで高貴だ

紫や白の自らの立ち姿を
水に映して咲くけなげな菖蒲は
この季節に舞い降りた
天女のようだ

小さな黄色の花弁を
こぞって下に向け
香しく匂う菩提樹は
なぜにこの季節に花開き
見上げる凡夫どもに
何を語ろうというのだろう




新作(2011.06.13)

 
メール設定

受信が出来たと思ったら
送信が出来ない
サーバが受け付けないという
 
メールソフトを変えて
絶対うまくいったと思ったら
今度は逆だ
受信ができないのだ

何度も何度も
メールサーバの指定や
パスワードや
アカウントの表記とかいう
頭の芯まで痛くなるような
確認作業を延々とやる

パスワードが送れない
アカウントを確認せよ
ファイアウォールを確認せよ
だとかの得体の知れない
メッセージを流すばかり

つい先日までこの設定で
スイスイ使いこなしている
と思っていたのに
何のことはない
敵は次々と裏をかいて
いつかこのときの来るのを
待ち構えてたとでもいうように
高笑いを続けている




新作(2011.06.11)

 
連絡船

三月ぶりに帰省する
白とブルーに塗り分けられたフェリー
平日の客室は数えるほどで
これまで休日にしか乗らなかった
日々の賑わいが嘘みたいだ

少し波立つというアナウンスの
波はやや小皺が寄る程度で
船体はすべるように進んで行く
約一時間で半島や山陰が途絶え
しばらく海が海だけになる

人一人が暮らせるかどうかの
小さな島がちょうど旅程の
真ん中あたりで
瞬く間に島も海に没する

平たい帯のような島影が見え始める
霞の彼方に蜃気楼のように現れ
少しずつ少しずつ
山の形や半島の形を露わにし
坂道を車が上っていたりする

真正面にとらえた島影を
大きく右に流し
左へ左へと船は島の懐に回り込む

港の入り口がそれと見えるのは
入港十五分ぐらい前でしかなく
突堤をくぐり
這い松のそばをゆるゆると進み
ゆっくりとエンジンの音を
落としていく




旧作(2011.06.07)

 
一頁

兜の下で
洗われたばかりの首が
空っ風に
吹き晒される




旧作(2011.06.06)

 
抒情

吠えすぎた犬
連帯とは
紙屑
歯ぎしりの後の
バンジージャンプ




旧作(2011.06.03)

 
後姿

もうこれまでね、お世話になりました
気丈なあなたの顔が少しく引きつって見える
ありがとう、元気で
今日は霧が深いから、二人ともすぐに見失って
しまいそうね

こんなにも深い霧の中で
私は水銀灯の光をただ一人
眺めているのです
あなたの吐息のような
この小さな瞬きを
じっと見詰めているのです




旧作(2011.06.02)

 
しあわせ

しあわせよ あんまりはやくくるな
しあわせよ あわてるな
しあわせよ かたつむりにのって
あくびしながら やってこい




新作(2011.06.01)

 
緑と風

庭先の木々も高々と茂り
山の尾根にも新緑が揺れる
海からの風が強い
空高く伸びた枝や葉を
山のかたちをも伸び縮みさせるように
激しい気合で風が吹く

風がごうと鳴り
海もごうと鳴り
ごうごうと鳴り止まず
山を揉み
波を走らせ
庭先の木々を縒り上げる

五月の新緑は
いっぱいの光を照り返し
薄緑の光を空に投げ返し
海岸を走る電車の窓に張り付き
山から海へと走り抜ける




新作(2011.05.30)

 
海峡の風

手を伸ばせば届きそうなところに
大きな街がある
街と街とを海峡が区切っている
外国船が通り
漁船が旗をなびかせて通り
連絡船が街と街とを結ぶ

街と街とは五分間の距離だ
潮の流れが速いことで有名な海峡を
大きく揺れ躍りながら
連絡船が風を切って進む
操舵室では若い女性が舵を握る

対岸の船着き場では
ぐらつく足元を確かめながら
船を降りる
岸が揺れているのか
自分が揺れているのか
波がうねっているのか
酔いの中に入っていくときの
ような酩酊を瞬間感じる

岸に降り立てばいきなりレトロ街で
明治の建物の出迎えに
時のズレによるのだろう
不意の酩酊を感じる
レトロ街の真ん中に超近代ビル

海峡の風はさやさやと吹き
五月の光を運び
駅前の噴水を子供たちの群れに
やさしく吹き流している




新作(2011.05.25)

 
アセンション

次元上昇だという
売国奴、殺人鬼、盗賊、暴力常習者、
狂人、詐欺師、卑劣漢、偽善者、
権力主義者、現実主義者、
拝金主義者、逃亡者などが渦巻く
この地上において
世紀の次元上昇が起きるという

地が裂け、地がおどり、火を噴き、
海がのたくり、海が走り、
街並が倒壊し、船がビルの屋上に上り、
耕地は荒れ果て、森は焼かれ、
空が赤く染まり、オーロラが漂い、
地の芯が傾き、北が南になり、
こういう過程を経ねば
ならないという

人間の業や、裏切りや、非情さなどが
生ましめるものではなく
人間も、牛も、馬も、山も、川も、
松も、杉も、チューリップも、カンナも、
スズメも、カワセミも、河豚も、鮟鱇も、
定められたシナリオのとおりに
深甚なる配慮のもとに企てられた
この破滅、転生の路標に向かう
のだという

嘆くではない、戦くではない、
あるがままに、なるがままに、
そのときを迎えるのだという
半霊半身の体をなそうとも
生命は決して死ぬことはない
天と一体の生命は死ぬことはなく
次元上昇の旅に赴くのだという



旧作(2011.05.23)

 


窓を開けるな
窓を開けるな
夜風が覗きにくる
夜風を入れるな
夜風は冷たい
夜風を入れると
子供は風邪を引き起こす
大人は必死で窓に
鍵をかける

子供の力は思ったより
強くて
なかなか鍵がかからない

お外はびゅんびゅん風が
吹いてます
真っ暗です
犬の鳴き声も聞こえます

それでも子供は
口腔いっぱいに
不満をつめ込んで
背丈の倍もある窓に
とびついていく




旧作(2011.05.21)

 
原初

耳のない猫
黴が体を食っている

「一つと一つで三つになる」
その朝太陽は喜んで昇った

場末の若い女は
ゆでダコのような赤んぼうに
「一つと一つで三つになる」を
はじめて教えられた




新作(2011.05.20)

 
文明

五月の風を受けながら街を歩く
ショーウィンドーにはきらびやかな
物があふれ
洒落たビルが幾層にも建ち並び
行き交う人々の表情は
満ち足りている

デパートが並び
大きなホールが並び
見上げるばかりのホテルが雲間に
聳える
美術館、博物館、図書館、大学などに
文化という文化は整理され
マニュアルどおりに並べられ
整然と収められている

教会の鐘が涼やかに時を告げ
寺院の広大な境内には
花鳥風水の贅をこらした庭や山門や
掛け軸や仏の像が荘厳な
空気を醸し出す

幾千の魂が眠るとされる墓地
幾億、幾劫の命を育み
幾億、幾劫の絶えた命を包み込み
眠らせる海や空や
空気の重なり

この文明は爛熟している
この文明はもはや満ち足りている
かのようだ

核を飼い慣らし
電気も兵器も自在に膝下に置いた
電磁波壁の防御も怠りない
オゾンホールの修復も万全だ

この文明は爛熟している
この文明はもはや満ち足りている
かのようだ
高名な博士は世界に宣言した
「神もいない、死後の世界もない」
あたかもこの文明は爛熟している
かのようだ

山が哮り、海が哮り
地が鳴り、割れ、空が燃えさかり
ビルディングは敢えなく倒れ
博物館も、美術館も、図書館も
資料もろとも炎に包まれ
海の深くに沈められ
輝く星々さえうち震えながら
逃げまどう時がくる
必ずやってくる、という

しかも、それはつい一呼吸もしない
次の瞬間に
やってこないとは限らないのだ




新作(2011.05.17)

 
パソコンの反抗

なんだか動きが遅くなって
立ち上がりものろくなって
画面が心なしか赤茶けてきた

WEBページをとことん探し
一番安いパソコンを見付け
OSのダウングレードとかいう
耳慣れないことまで依託して
古いデータを残そうと
考えに考えた挙げ句
購入のボタンを押したところ
なにやらこのパソコンの
調子が戻ってきた

パソコンに意志あるもののごとく
用なしのレッテルを貼った途端
ムクムクと
本来のガッツを見せ始めたかの
ようである

このパソコンとともに
泣いて笑って苦しんできたんだから
そう簡単には
用なしになどされてたまるか
というところだろう

こっちだって好きで移り気
になったんじゃない
しょうがないから
見栄えのまるでよくない
無駄な飾りなどまるでない
次のパソコンを選んだんだ

今なんでこうスッスッと
まるで軽やかな動きを
戻してきたんだ
もう購入のボタンは
取り消せやしないんだぞ




新作(2011.05.14)

 
歩く

胸いっぱいに悲しみを抱え歩く
腹の底からの怒りを抱え歩く
蟻地獄に迷い込んだままに歩く

恋しい人のことで迷いに迷い歩く
希望をいっぱいに抱き歩く

ガラガラと崩れる思いに歩く
歩くそばから地面が逃げていく
思いに歩く

歩いてどうなるものでもない
歩いてどの路標に至るのか
わからない

歩くよりほかないから歩く
なにもわからないからただ歩く




新作(2011.05.13)

 
大嵐

砂粒を飛ばし
雨を空に向けて降らせ
春が荒れる

一日に何十回も地が震え
屋根が落ち
ガラスが破れる

二月前の大地震は震度七
津波の高さは
二十メートルとも
三十メートルともいう

人が流され
家が流され
車が流され

原発が破壊され
海が汚され
地が汚され
人も汚され

仕事が流され
心が流され

この春の荒れ具合は
いったい何だってんだい
いったい何をしたというんだい
いったい何をしろというんだい

砂粒を飛ばし
雨を空に向けて降らせ
今日も今日も
春が荒れる



新作(2011.05.11)

 
窓の外

五月の雨が降り込める
空がいかにも重たい
伸び出した新芽が項垂れ
したしたと振り込める

郵便受けに
カタログやハガキと一緒に
雨の粒が流れ込む
ハガキの宛名は膨れあがり
名前が読めない

暗い気鬱が晴れない
出口のないことばが何度も
胸の内を巡り
濡れそぼった猫が
したしたと足音をたてる

寺の鐘がぐおんと鳴り
今が夕暮れであることを
知らせているらしい
雨がしたした降るほかに
見えるのは屋根ばかり



新作(2011.05.10)

 
今日

今日という日が過ぎ
今日という日を迎え
今日という日を送る

何気ない今日という日
何のことはない今日という日

今日争いの種を播かなかったか
今日妬みの思いに震えなかったか
今日裏切りのことばにまみれなかったか
今日己を欺くことに陥らなかったか

何気ない今日という日
何のことはない今日という日 

今日という日を当然のように跨ぎ
今日という日を当然のように送る




新作(2011.05.09)

 
とんだ偉人

野口英世は偉人中の偉人だと
思っていたら
百姓の家を継ぐのが嫌で
籍を抜いたり入ったり
金を踏み倒して
女遊びをしたり
飲み倒したり
懲りずにまた
ちゃっかり金を借り倒したり

ストーカーまがいのことを
しでかしたり
結婚詐欺まがいのことを
やらかしたり
親と上手くいかないのを
当たり前のように思っていたり
姉と喧嘩したり
故郷の人々には
毛嫌いされたりで
偉人伝に載せられるには
生半可な非常識人では
お呼びがかからないようだ



新作(2011.05.08)

 
ある文芸人  

ある自称文芸人は
詩を一日に十も二十もつくります
小説は百作をもくろんでいます

詩を書くにしても
なにも手法はありません
ささっと胸に過ぎった言葉や感情を
ひょいと写し取るだけです
他人にどう見られるかとか
他人にどうアピールするかとか
なにも考えていません

この文芸人の作は
誰も褒めそやしたりしません
誰にも理解できないのかもしれません
文芸人自身
作った端から忘れているようです

小説も頭の上に降って湧いた風景を
そのまま写し取っています
気の効いた筋道を辿ったりしないから
なのかもしれませんが
小説を読んで感動したとかの
手紙などもらったことも
ないようです
読むどころか読めやしない
との苦情が多くきているようです

この文芸人はときどき
ふらりと時間旅行に出かけたり
体を抜けて気儘に彷徨ったりします

この自称文芸人は
詩を一日に十も二十もつくったり
小説は百作をもくろんでいたりしますが
どこの誰に向けて書いているのか
自分でもわかっていないようです




新作(2011.05.07)

 
見えないもの

見えないものがあるのかないのか
見えないものがないのかあるのか

そういう論だったと思う
師はないと言った
自分はあると言った
激しい口論に発展した

自分は激ミし師の元を去った

見えないものがないのかあるのか
見えないものがあるのかないのか

見えないものがあるということは
わかっている
あれは文章表現の問題をめぐって
のことだった




新作(2011.05.06)

 
新緑

菜の花の咲く田圃の畦に
ひょろりと高い柿の木があり
紅葉のような葉が芽吹いている
四囲を山に囲まれた田圃なので
柿の木も四囲の木々と同じように
歳古りてはいるが
横にはそれほど広がらず
縦にひょろひょろと伸びている

秋には小さな赤い実を
花のように付け
スズメやヒヨドリやカラスたちを
雲霞のように止まらせる
ピイピイ、カアカア、ルルル
などと細い枝に
鳴き声を寄せ
穫り入れの済んだ畦道に
甘い匂いを振りまく

あの秋の賑わいのときを
今年も迎えるため
今新芽を吹かせ
足元の菜の花の華やぎに
埋まるように
ひょろ長い枝先に
小さな小さな芽をひっそりと
四囲の山の静寂に包まれるように
いかにもおとなし気に
息を伸ばしはじめた




新作(2011.05.05)

 
赤い屋根

白い壁に赤い屋根の家が建った
大きな車が止まり
たくさんの荷物が家に運び込まれた
玄関には綺麗な鉢植えが飾られ
庭には小さな犬小屋も置かれた

二人の少女が庭を駆けた
子犬と一緒に
まだ芝が張られたばかりの庭を
土埃を舞い上がらせ駆けた

春になったばかりだった
車庫には大型の乗用車が止められ
朝にはスーツ姿の主人を
エプロンに鞄を提げた奥さんが
車が見えなくなるまで見送った

玄関には
ランドセルの少女が出て
駆け寄ってきた子犬と頬ずりし
鎖を引き千切らんばかりの子犬に
手を振って出かける

春になったばかりで
庭には草の芽がずんずん伸び出し
奥さんはたくさんの洗濯物を
両手に抱え日向に干した

少女たちが帰ってきた
子犬が千切れるように尻尾を振った
洗濯物が取り入れられた
暗くなって車が戻ってきた

赤い屋根の家は
四囲の家々の新緑の垣に映え
ずっとずっと住み慣れているみたいに
居間に灯りを灯していた




新作(2011.05.03)

 
遠心力

ねばならない、ねばならないと
言われ続けると
そしりの言葉のエネルギーは
大きすぎるから
ねばならないの反対方向に
ベクトルを向けてやることになる

引っ張ろうと考え
引っ張ろうとすればするほど
反する力つまり遠心力が発生し
反比例して強くなるから
反比例してとてつもなく強くなるから

遠心力のことをよく知る人は
黙って、ただ抱きしめてやる
それだけが、それこそが
なすべきことの全てなのだ




新作(2011.05.02)

 
始まりのとき

大地震、大津波は
まだ何も終わっちゃいない
家も、道路も、線路も
潰され、流され、ずたずたのままだ

原発に至っては
放射性物質の汚染が
止まったわけではない
放射性物質を閉じこめる
見通しが
決まったわけではない

最初のときと
何も変わっちゃいない
夥しい放射性物質を出す物質は
依然として水の上に顔を突き出して
いるというし
放射性物質を含んだ水は
海や地下に流れ込んでいるという

周囲の土地からは
作物を栽培するには危険すぎる
数値が検出され
連れ出すことも出来ない
牛や豚は
見殺しにするしかない

原発の周辺の遺体収容さえ
ままならないではないか

地元の復興気運は嬉しい
その元気が逆に私たちを励ます
一刻も早い復興が望まれる
誰もが等しく待ち望んでいる

ただ、一縷の心配がある
港をとり戻し
船をとり揃えたとて
魚が売れるだろうか
籾を播き
塩田の塩を上手い具合に
抜いたとて
米は実るだろうか
よしんば実ったとして
米が売れるだろうか

原発の周辺の遺体収容さえ
ままならない状態のまま

あたりの空気を吸い
あたりの雨に濡れ
育つ子供たちや
米や、野菜や、魚や、
精魂込めて作られる精密部品たちは
はたして息を通わせることが
できるのだろうか

これらが杞憂であってほしい
こんな憂鬱な思いを
どうか一気に
五月の空に吹き飛ばしてほしい




新作(2011.04.30)

 
ロマン

かつてこの地に広大な
宮殿があった
かつてこの地の後背に
難攻不落の
城があった

かつてこの地に強大な
権力があった
かつてこの地の上に
さらさらと美しい
風が流れていた

かつてこの地に
おおいなる学びの館が
あった
かつてこの地の一日は
決して滅びることなどない
と信じられていた




新作(2011.04.29)

 
楽観主義

今日がやってきた
今日が過ぎていく
それが嬉しい
それだけで嬉しい

眉を顰ませ
口を尖らせ
目を逆さにし
頭でっかく
権謀術数に長けている
より

ほんの一回
空を見上げて
笑うだけでいい
ほんの一回
うんと空気を
吸い込んでみる
だけでいい

なんの計算もなく
壁に向かって
笑いかける
だけでいい

地が揺れるかも
しれない
天に
激しい雲が流れる
かもしれない

それはそれ
相手の目を見詰め
微笑み返す
だけでいい




新作(2011.04.28)

 
勇気

前に進みましょう
立ち止まって
進まぬより
思い切って歩いて
みましょう

進まねばわかりません
今を惜しむだけでは
明日はきません

一歩を踏み出すことです
まだ見ぬ風景に出会うのは
一歩進んでみるからです

前に進みましょう
思い切って
大きく手を振って




 
善意

売名行為だと言われようと
一椀の食べ物を与えることは
大きなことです

わざとらしいと言われようと
弱り果てている人を
見捨てておかぬことは
よいことです

スタンドプレーだと言われようと
動けぬ人に慰めを言う人は
輝きです

役目だろうと言われようと
困っている人のために
寝ずの番をしている人は
明るい灯です




新作(2011.04.27)

 
合格点

ねばならない、ねばならない
ねばならないと耳元で囁かれ続けると
気弱な者はきっと
反対の方に飛ばされてしまう

まして幼い頃
ねばならない、ねばならない
ねばならないと耳元で囁かれ続ける
ことほど
心を打ち砕く鞭になりかねない

世間がどう思うかとか
世間がどう笑うかとかの
問題の問題たる所以がわからない
子供には
耳元で囁かれ続けることに
心が折れ、萎縮してしまう

人間、そんなに足かせを引いて
歩き回るようにはなっていない筈だ
自分で自分のことが出来
他に危害を与えないことでさえあれば
一応の合格点を与えてやるべきだ

世間がどう思おうが
世間がどう笑おうが
自分の内にあるメモリを数センチ
下げてみれば
見えてくるものがあるかもしれない
なにも変わっちゃいないと
気付くことがあるかもしれない




 
こだわり

こだわらねばならないこと
自分の心を折れさせないこと

他へのいわれのない
中傷をせぬこと

人のことをとやかく言うほど
自分はなにも知らないということに
気付くことが先のようだ




新作(2011.04.25)

 
論破

徹底的に論破するという
そんなとき
ふと悲しみに満たされるのは
なぜだろう
言い負かし
完膚ないまでに
言い勝ったとき
ゆえ知れない悲しみに包まれる

勝ったときというのは
勝たないときより
増上慢の方に踏み出した
気持の震幅が
恐らく振り切れてしまうから
なのかもしれない

気持の震幅が大きくなれば
上にものぼるが
下へも一気に下る

徹底的に論破するという
土台そんなことが
あり得るのだろうか
何を根拠にねじ伏せることなど
できるのだろう

一本の道が
どこまで行っても一本の道で
あり得るのならば
そういうこともあり得る
のかもしれないが




新作(2011.04.23)

 
春の憂鬱

水の音が高くなり
桜の花びらが水の面に舞い落ち
くるくると水が舞い
花びらがせせらぎのように流れる

小さな木橋を渡れば
くるくるくるくると水が舞い
木々を透き落ちてくる光が
実に白い花びらを沈ませ
妙なるせせらぎとなり

憂いに歪んだ顔を写し
憂いに沈んだ水音を奏で
溜息のような花びらを沈め
ゆらゆらと瀬音をたてるばかり




 
マヤ暦

マヤ暦が終わるとき
人の世が終わるのだという

人が尊大になり過ぎたのでも
傲慢になり過ぎたのでも
ないのかもしれない

そう移り変わらねば
地球の進化プログラムが
次のステップへ移れないの
かもしれない

人は
地球生命の中の
ほんの一つの種に
過ぎないのであるから




新作(2011.04.22)

 
都府楼

都府楼跡の水辺に桜が並ぶ
都督府に立ち、西の方面を眺めると
白い霞がかかったようだ
都府楼跡は礎石を残すのみであるから
低い草原のかなたに
綿雲が浮いているように見える

木立の下を時折車が過ぎる
桜は車の動きをゆるゆると流し
いつの間にか霞の中に車を誘ってしまう
チリ紙交換の車の音も
知らぬ間に霞の中だ

礎石の間を年配の夫婦が歩く
ジョギングの青年も歩幅が小さくなる
鈴をつけた犬が歩く
鶯の声が微かに流れる

都府楼の地は
目覚めが遅いようだ
のんびりと桜を眺めわたし
ゆっくりと土筆を伸ばし
太陽が中天から移りかけた頃
カエデの若葉を震わせ
千四百年の眠りからようよう覚めたのか
そろりと春の気に足を踏み出す




新作(2011.04.21)

 
柿の新芽

柿の新芽は淡々として遠慮深い
庭にぬっと伸び出た枝からも
他を睥睨するようなそぶりは見られない

田圃の畦に立つ柿も
ひっそり閑としている
里を離れた山あいのひょろ長い田圃
すっかり苔まで吹いて
ふてぶてしい幹をくねらせているのに
小さな赤子のような葉を
もじもじと覗かせている

切り岸に立つ柿も眠りから覚めた
金色の実をたわわにつけ
鳥たちの恰好の餌場であった日から
五月が過ぎた
ほのかな黄緑色の蕾を割り
ぷっくりとした芽に川風を受け
今年も小鳥たちを呼び寄せる準備に
余念がないようだ




 
春の風

裾を巻き上げるような
喉を詰まらせたような音をたて
春の風が吹く

新芽をハタハタ靡かせ
花を、枝を、幹を
泳がせ、揺さぶり
木々の頭をエッサエッサと揺する

少女たちの声が巻き起こる
髪があおられ
スカートが足に巻き付く
肌に打ち付ける砂利が礫のようだ

猫が毛を逆立て
欠伸をしながら身震いをする
山も雲を吹き千切り
飛行機雲を空に放り投げている



新作(2011.04.16)

 
地震

マグニチュード九という巨大地震が
東北地方を襲った
震度七というとてつもない揺れは
家を壊し、ビルを壊し、道路を壊し、
線路を壊し、山肌を削り、人を呑んだ
 
巨大地震に怯んだところに
十五メートルも、二十メートルもの
狂った津波が追いかけてきた
船を陸に運び上げ、桟橋を易々と越え
魚市場を、加工工場を、郵便局を
半壊した建物を、地震には耐え得たビルを
逃げまどう車を、避難指示のスピーカーを
子供の群れを、寝たきりの病人を
結婚間近の乙女を、背中に負ぶさった人を
田を、畑を、ビニールハウスを
猛烈な勢いで呑み込んだ

原子力発電所にも激しく襲いかかり
絶対安全の砦だと標榜していた
建屋を浚い、機器を押し流し
電源を引き千切った

残されたのは
瓦礫の山のほかには何もない
かつて、街だったに違いない跡
家が、車が、船がガラクタのように運ばれ
完膚ないまで、無造作に打ち捨てられた

動けない老人も、働き盛りの男や女も
妊婦も、学生も、消防職員も、
町の相談役も、観光客も、外国の人も
情け容赦なく
津波の気の向くままに呑み潰された

すんでのところで命を拾った人々は
避難所に押し込まれ
身を切る寒さと、理不尽なまでの絶望に
体を寄せ合って耐え
止むことのない余震に心を刻まれた

絶対安全を標榜してきた原子力発電所は
水素爆発を繰り返し
建屋は飛び、炎や煙を立ち上らせ
炉心が溶融したものか
夥しい放射線を撒き散らす
悪魔の住処となり果てた

地震や津波に想定外はつきものだ
燃えたぎるマグマの上のなんとも薄い
マントルの上に住んでいるという
危うさを先ず考えねばならない筈であるのに
人智による絶対安全宣言など
果たしてあり得るのか

できることなら、あの瞬間の直前に
時間を巻き戻してしまいたい
夫や、妻や、幼子や、父や母たちを
しっかりと取り戻したい
もう一度この手に抱き留め
ひしとその感触を肌に感じたいのだ



新作(2011.04.15)

 
長男だから

五歳頃から十九歳で
家を出るまで
跡継ぎのことを
毎晩のように強いられた

長男を学校に出すと
もう戻ってこない
街を見せると
もう戻ってこない

長男に学問など必要ない
長男に夢を見る資格はない
長男は家のための道具だ
長男が跡を継がないと
麻のように乱れる

どれだけの
誰のための家なのだか
知らないが
長男が跡を継がないと
笑われものになる
継ぐ者のいない家は
なんて可愛そうなんだろ

草は生え放題
跡を見る者もいない
そんな世間に恥ずかしいこと
どうしてできる?

長男は家のための道具だ
余計なことを学ぶ
なんてもってのほかだ

なんといおうと長男だから
どんなことがあっても
長男だから
なにも選択の余地はない
長男なのだから

激しいマインドコントロール
のことばが
今でも耳に痛く残る
虚弱であろうと
無能だといおうと
訳がわからないといおうと
よってたかって
長男だから!
長男だから!

とうの昔に決別した
その台詞が
まだあたりを
亡霊のようにうろうろ彷徨い
隙あらば
攻め込んでこようと
もくろんでいる




旧作(2011.03.31)

 
無明

生キタイ
石ニカジリツイテモデモ生キタイ
死ヌコトハ
宇宙ノ藻屑ト消エサルコトダ
後ニモ先ニモ永遠ニ
俺トイウモノガ無クナクナッテシマウノダ

肉体ハ消エテモ
魂魄ハ残ルト誰カガ言ッタ
波ノヨウナ
光ノヨウナ蠢クモノトナッテ
花ノ咲イテイル
水ノ流レテイル岸辺ヲ
フワフワ漂ウノダトイウ

シカシ
魂魄ガ死ナヌトハ誰モイワナイ
デアルノニ
俺ガ幼イトキ
突然俺ノ前カラ宇宙が消エタ
赤々ト輝イテイタ星ガ太陽ガ
イキナリ消エテシマッタ
風ガ消エタ
光ガ消エタ
万有引力ガ消エタ
広大無辺ダトイウ宇宙ガ
アッケラカント消エタ

生モ苦シイ
老モ苦シイ
病モ苦シイトヒトハイウ
シカラバ死ハドウダ

生キタイ
破レ果テテデモ
這イツクバッテデモ
生キテイタイト思ウコトハ
妄執デシカナイノカ

砂ガコボレル
両手ノ指ノ間カラ
砂ガザラザラトコボレル
生キタイ
生キテイタイトイウ
思イガ必死ニナレバ
必死ニナルホド
ザラザラト砂ガコボレイク



旧作(2011.03.02)

 
街角

いつも街角であなたを待っている
ふいにあなたが現れてきそうな
いつの間にか
あなたが決まって佇んでいそうな
そんな気がする

風の匂いに似たあなたの姿が
みずすましのように
佇んでいそうなそんな気がする

ことばはいらない
ことばなんていらない

すぐそこに
すぐ目の前に
茜色のあなたがはらはらと
よく透き通る声で
佇んでいそうなそんな気がする

ことばはいらない
ことばなんていらない



旧作(2011.02.26)

 
センチメンタル

新しい命の始まりのような
胸のうずき
北風の中を転がっていく
さいころの目
国道十号線
雨の行橋

流れていく髪の匂い

ちぐはぐのブルース
匂いのような
胸の隆起

ああ
水溜まりの中の青空に
僕は
今日も自画像を描こう




旧作(2011.02.20)

 
ノクターン

あなたは眠っている
青い屋根の上には
一匹のこおろぎが
午前三時のセレナーデ
ピンと羽根広げ
小さな組曲
トロイメライ
ゆらりゆらゆら
月のうた

ああ完全な寝息のあなた
一度でもまぶたの中で
微笑んでおくれ
小さな指揮者の足音が
次第次第に遠ざかる
夜の秘かなノクターン
次第次第に消えていく



近作(2011.02.12)

 
古都の雪

雪の夕べはなかなか訪れない
雪の白さがまぶしいからだ
サザンカやロウバイの花の上にも
誇らしげに積み
開きかけた水仙の蕾にもの言う
今年も元気そうだねーと

雪の夕べは静かだ
通りを歩く音もなく
車が一台のろのろと過ぎて行った
いつも屯している鳩や雀も
もう宿に帰ったのだろうか
そういえば愛嬌もののメジロも
一度も出勤してこないなんて

雪の夕べはまだ暮れない
山を隠し空を隠し
闇まで隠してしまったのかしら
コーンと鳴ったのは
お寺の鐘の音かな
それとも狐クンの出番かな
暮れ残った夕べには
狸くんだって顔を出しそうだ
ときにはのんびりしたらいいよーと



近作(2011.02.10)

 
マグマ

地球は水の星といわれるけれど
どっこい燃えさかる炎の上で何も知らず
ごうごうとじわじわと
焼かれ焙られているようなものではないか

われわれはマグマの上に浮かんでいる
どういう焼け加減になれば
打ち上げ花火がどのあたりで炸裂するのか
それなりの法則があり
予兆があったりするのだろうが
足元が四六時中どろどろの火で舐められ
隙あらば穿たれようとしているなどと
国会中継の長談義に飽きもせず
デモの鎮圧に余念がないなどの有様で
まるで呑気呑平ではないか

まして飛び石のようにこぼたれた島の
分捕り合戦にやっきになっているなど
今の今足元を焼かれ焙られているというのに
全くの呑気呑平ではないか

杞憂を促すつもりは毛頭ないが
われわれはマグマの上に浮かんでおり
どのような機嫌をそこねたときに
打ち上げ花火がどう炸裂するのかぐらいは
火山灰に埋もれようとしている今の場面を直視し
教えてもらった方がよいのではないか




近作(2011.01.26)

 
曇天

ぶ厚く重苦しい雲が垂れ込めてから
ゆうに一月を超えた
たまに冗談みたいに空の青さを
チラリと見せることはあるが
ほんとうにチラリとだ
十二月半ばから始まって
もう一月の末になる
気でも狂ったのかいと
すぐそこにまで下りてきているやつに
声をかけても
お前さんの出る幕じゃない
引っ込んでろ
と取り付く島もない有様で
余計に北からの風に息を吹きかけ
雪をザブザブ降らせたりする
ここは南国の九州なんだぜ
当方の問いかけなんぞにまともに
応えるという気などサラサラないらしく
今朝もタラリとしたかったるいやつが
すっかり根付いてしまったかのように
すまし顔で垂れこめている



 近作(2011.01.25)

 
雲海

飛びたった羽田の上空は真青の快晴
ところが冬型の気圧配置の張り出しで
すぐにぶ厚い雲を突き抜ける
機体の下には雲の絨毯とでもいおうか
ふかふか雲の海が
見渡す限りにたゆたっている
綿菓子のような雲
兎が幾万匹も集まったかのような雲
太陽の光をいっぱいに受け
白く青く銀色に輝く雲
雲の海は光の世界
雲の海は白銀の世界
雲の海は綿菓子の世界
雲の海は流氷の世界
雲の海はうたた寝の世界

降下体勢に入った機影を
チラリと灰色に映したかと思うと
雲の海にズブズブ潜り込んで行く機体
噴煙の中を潜って行くようで
不安に向かって躍り込んで行くようで
なにも見えない
なにも聞こえない

どろりとした冬の海が
島を二つ三つ抱え込んでいる
まるで泥水の世界だ
機体は泥水の世界に向かわねばならない
主翼の端に煙のような雲がかかる
この雲を抜けると
寒風吹きすさぶという海沿いの街に
下りて行くのだ
それは耳鳴りのような不安に向かって
急ぎ舞い落ちて行く小鳥のようだ




【近作】(2011.01.20)

 
同人誌

同人誌は通過点であり
頂点を極めた者たちが憩う終着点である
同人誌的甘さと言うものはあろう
ぬるま湯のようなかったるさもあろう
マスタベーションと言われてもよかろう
同人誌は同人誌でも
傷を舐め慰め合うための同人誌と
関ヶ原に、真珠湾に斬り込もうとする
同人誌がある

若くてもよい
老いぼれであってもよい
命は同等、平等だ
中身が平等だなどと言っているのではない
頂点に上ろうとする者も
頂点を見てきた者も
座る場所は畳半畳、その形において平等だ
甘く見てもらっては困る
頂点に上ろうとする者と
頂点を見てきた者とが
中身において同等である訳がない
何度も言う
同人誌は通過点であり
頂点を極めた者たちが憩う終着点である




【近作】(2011.01.19)

 


今朝方の夢といったらどうだ
自分の今日に至るまでの
驕慢さの故を丁寧に解説してくれるのだ

全て五、六、七歳の頃のことだ
クラスで一番最初に書道の級がついたのを
女教師がみんなの前で誇らしげに
紹介してくれた
自分は一人だけひいきされているみたいで
ついた級というのも八級かなにかの
初等級であるという恥じらいもあり
女教師の紹介の間
ひどく不愉快な気分になり
そんなものいらん、と言った

走るのは苦手なくせ
力では誰にも負けなかった
しかし、入学時の健診で
心臓に雑音があり要注意とのことで
体育の時間は見学と決まってしまった
朝会のときのラジオ体操でさえ免除になり
一人ポツンと体操の輪の中で
立ち尽くしていた
なんでなんだ、見せ物じゃないんだ
自分は周りに聞こえる声で
体操の間中呟くのだった

勉強はせんで出来るのが当たり前だ
祖母の強い教えだった
祖母は質素倹約で負けず嫌いで
子供にも孫にも
そう教えるのを怠らなかった
田植えも一番、稲刈りも一番
家の手伝いも一番
学校の成績も一番ぞというのだった
自分はしぶしぶと祖母の教えを守った

褒められたことがない
失敗すれば、容赦なく叱られた
漫画も、新聞も、ラジオもなかった
正月もクリスマスも誕生日もなかった
質素倹約で、全てが一番でなければならない
学校帰りに遊ぶことも許されなかった
遠足での弁当もなかった
まして、菓子も果物もなかった

夢の中で、これらがごった煮のように
ぐるぐる回り
がんじがらめの渦に巻き取られていた
しかし、これらは自分のもって生まれた
ねじけた虚栄心の強い性格が
全てを演出していたのかもしれない

祭りの雑踏の中で
出店の飴玉に見とれているうち
両親とはぐれてしまった
泣きべそをかきながら大慌てで母を捜した
数メートル先にやっと母とおぼしき背中を
見つけたとき
もう半分泣き出しながら
大急ぎで母の手に飛び込んだ

夢では、殆ど声を絞らんばかりに
うなされていたのだったが‥‥
飛びついた手の主がゆっくりと
自分の顔を覗き込んできた
顔には目鼻がないのだった
いや、あたりで一度も見かけたことのない
狐のような人だった



【近作】(2011.01.14)

 
ゴッホ展
  
「ひまわり」の奔放さ
「灰色のフェルト帽の自画像」の激しさ
炎の画家といわれるゴッホの絵は
荒々しい気性の天才が
自由に書き殴ったものだと
うかつにも思っていた

ゴッホは三十近くになって
一人で絵を始め
ミレーなど大家の絵を
何枚も何枚も模写し
「掘る人」や
「種まく人」や
「刈る人」などという
同じ題名の素描を
これでもかこれでもかと
一心に描き続けている

バースペクティブ・フレームという
定規のような道具を用い
フレームから覗いたものと同じ対象物を
一点をもゆるがせにせず
忠実に写し取り
キャンバスに模写している

ゴッホの絵は
実に正確で繊細な技術と理論に
裏打ちされており
哀れなほどにおどおどしており
どこに未来の炎の画家の芽生えが
あるのだろうかと
悲しくなるほどに小心だ

くだんの「自画像」にしろ
最後の時を過ごした「療養院の庭」にしろ
一点一点が悲しいほどに
明るい色と暗い色を交互に
貼り合わせたように
正確に精緻に描かれている

誠実で誠実過ぎるくせに
ナイーブでナイーブ過ぎるくせに
ゴッホの紡ぎ出す一点一点は
何故にかほとばし出るような
明るさを伴って
何故にかほとばしり出るような
悲しい激しさを伴って
不思議な光の火矢となり
百二十年のはるかな時空を超え
今やさしく輝いている




【旧作】(2011.01.07)

 
街角で

いつも街角で
ぼくはふっと立ちどまる
ふいにあなたがあらわれてきそうな
いつの間にかあなたが
すぐ近くにひそんでいそうな
そんな気がする
みどり色のかたちをした
あなたの顔がほんのすぐそばで
にっこり微笑みかけていそうな
そんな気がする

みずすましのように愛くるしい
風の匂いのようにあたらしい
そんなあなたの姿が
コンチワと呼びかけそうな
とてもそうみたいな
気がしてならない

でもことばはいらない
ことばはさまざまのあやまちをする
ただあなたが
すぐほんの近くで
きっとひそんでいてくれそうな
そんなみどり色の空気の中で
ふっと立ちどまってくれるだけで
ぼくはいい




【旧作】(2011.01.01)

 
幸福

みじめであることが
こよなく嬉しい
苦しみ嘆きもだえ涙を流し
凡人であることを知り
努力せねばならぬことを知り
全てが与えられた
ものであることを知り
自分が自分を
はっきり突き放して見るとき
これでよいのだと
ありがたいことだと
はっきり
強く心に感じることが
こよなく嬉しい




【近作】(2010.12.31)

 
凍る

空に星が凍る
オリオンが野営のテントを広げる
シリウスが氷塊のように滴る
アルデバランが襟元を掻き合わせる
アンドロメダが嚔を連発する

古都の礎石に雪が降り積む
葉を篩い落とした枝に雪が撓む
メジロが椿の枝を行来する
カラスが田圃の氷を執拗に突き破る
音をたて風が原っぱを吹き抜ける
ヒューヒューと大地が顫える

痛んだ心を容赦なく打擲する
お前が悪いお前のせいだ
敵は相手だと公言してはばからない
信じ込んだら毫も揺るがない
屋根から雪がドカンドカンと落ちる
氷柱が真っ直ぐにドンと落ちる

白鷺が雪に埋もれた川に立つ
首を竦めた鴨の群れが川面に蹲る
柳のような魚たちが群れる
白鷺がピチピチ跳ねる魚を銜える
鴨がやおら魚の群れを追いかけ始める

桜の蕾がかじかんでいる
梅の蕾がふくふくと盛り上がってきた
サザンカは花びらを飛ばされる
路地に落ち葉が舞い上がる
息を継ぎ継ぎ北風が家並みを縫い走る
足早に雲が飛びゆく
ごうと鳴るのは吹雪か電線か
稲光とともに雷が炸裂する




【旧作】(2010.12.29)

 


こわれてしまった

だが
みたみたみたみたみた
みたみたみたみた
女の
だ液だけ
だまりこくって
やってきた
踊るのは
ジャニス

見た
のは俺ではないな
俺である筈ないよな
何が重たいの
カーテンを閉めておしまい
見た
のはあなたではないわ

死んだ…のか…
有刺鉄線の向こうで
鳴るのは鎮魂歌では
ない
もうすぐプラモデルは
できあがるのだ

緑色のハンカチーフの中で
ただしわがれ声で歌っていた



【旧作】(2010.12.22)

 
ある終局

やっぱり死んでしまいました
あいつの言ってたことは
本当だったのです
仕事が苦しいから
体がきついから
お金がないから
なんてのじゃないんです
あいつのは
なんで死んだのかわかりません
だけど
冗談半分では
なかったことは確かです
顔が真っ青でした
震えてました
もっとも
端から眼と背中が
ふざけていましたが
次から次に女の尻を追いかけて
いくため
どう歩いていくのかなど
考えもしなかったの
でしょう




【近作】(2010.12.10)

 
人類史

若いだの、老いぼれただの
エリートだの、落ちこぼれだの
揶揄したり、頓挫したり
有頂天になったり、泣きわめいたり
人間内のことばかりを問題にするが
地球上には何千万という生命が住む
それらの了解も得ず
勝手に万物の霊長を名乗る始末で
たかだか、三百万年前に登場した人類が
摩天楼を作り、黄金にまみれ
へたをすると
黄金の奪い合いの最中に
地球の幕引きをすらやりかねない

砲弾を雨のように降らせ
毒ガスをばら撒き
原子をいじくりまわしてこしらえた
核という爆弾を溜め込んで威嚇する
新参者の、人間という小賢しいものたちが
回り続けようとする時計の針を
いきなり引き千切ったり
自分たちの時間を消し去ったり
するぐらいの小賢しさを
とうに手に入れている




【近作】(2010.12.05)

 
時間

六十年という時間を過ごしてきた
六十年という時間は長いのか
六十年という時間は長くはないのか
時間が流れるということはなんなのか
ただ、今という瞬間が流れていっただけだろう
と言えば言えないことはないが
時間が流れるということの意味について
考えても何一つ合点がいかない
流れて、いったいどこへ行ったのだろうと
頭をひねってもとまどうばかりだ

幼い頃の六十年と言えば
ましてや六十歳と言えば
いっぱしの仙人にも似た風貌で
いっぱしの含蓄ある思慮を得て
ことばの端々にも仙人が溢れ出るのかと
信じていたのだった

六十年という時間を過ごしてきたのに
六十年が鞄の何杯に収まるものか
六十年が何センチメートルに当たるのか
何一つわかりゃしない
あまつさえ、六十年も六十億年も一緒だ
などという悪態をつく有様で
どうせ、過ぎ去った芥に過ぎない
と頓馬なことを言い出す始末だ



【近作】(2010.11.28)

 
地質年代

地球が誕生して四十五億年
生命が誕生して三十五億年
人類が誕生して数十万年
前カンブリア時代、古生代、
中生代、新生代と続く地質年代
四十五億年が長いのか長くないのか
三十五億年が長いのか長くないのか
数十万年が長いのか長くないのか
前カンブリア時代とはどんな時代か
古生代とはどんな時代か
中生代とはどんな時代か
新生代とはどんな時代か

地質年代のそれぞれに
科学のメスが入れられてはいるが
菌のような藻のようなものが生まれ
植物が生まれ酸素が生まれ
オゾン層が生まれ
岸辺に植物が這い上がり
動物が植物を追いかけ
それらが地球上で繁茂し
というあたりが約五億年前から
三億年前のことだという
かの獰猛で巨大な恐竜のはしりのものが
現れたのがおよそ三億年前といい
大地を我がもの顔にのし歩いた挙句
絶滅したのが
六千五百万年前だという

恐竜に虐げられていた哺乳類が
ようやく頭をもたげ始めたのも
六千五百万年前あたりであるらしい
以降に続くのが
暁新世、始新世、漸新世、中新世、鮮新世、
洪積世、沖積世という時代だという
人類が現れたのは恐らく沖積世の
最後の最後であろうから
紀元前五千年に文明誕生という太字の字句が
どうにも霞んで見えてしまう

固有の領土だ、排他的経済水域だ
だのというのが昨今の大問題であり
銃弾が縦横に飛び交う次第だ
哺乳類の中の、ホモサピエンスの、民族の
主義、メンツ、利権、利害などが
なんでも最大の問題らしい
そいつをどう考えたらいいのか
どう折り合いをつければいいのか
人類一万年目の昨日、今日の進路を
どう定めめぐらせればいいのだろう

地質年代によれば
大陸は一つに固まっていたこともあり
引き裂かれたり、隆起したり、沈んだり
北極と南極が逆転したり
陸が増えたり、海が増えたり
海の塩辛ささえ変わってきたという
しかも、これまで時代が過ぎゆくたびに
生命は、少なくとも数十度の絶滅を
あっさり経験してきた筈だという




【近作】(2010.11.18)

 
魂魄

私は魂であった
魂のようなものであった

雨が降り続いていた
雨は嵐のように降っていた

蛇を怖れている
蛇の縺れ合っている姿が怖い

それでも蛇を見たかった
とぐろを巻き
威嚇してくる蛇の
あの脂ぎるほどにぬめった
肌を感じたかった

夜明け前であった
雨は吹雪のように
空に向けて降っていた

確かなものなどない
確かなものなどないのだ
と宙に留まった私の魂は
そう叫ぶ声を聞いていた

狂おしいほどに
のたくり蠢く蛇の様を
眼下に見ながら

生まれたままの姿で
ああ、男と女があられもなく
縺れ合いまさぐり合っている
のだと知っていた

夜明け前であった
雨は吹雪のように
空に向けて雪崩れていた

確かなものなどない
確かなものなどないのだ

と宙に留まった私の魂は
いま放出された精液に射抜かれ
しとど濡れていた




【近作】(2010.11.12)

 
栗の木を伐る

栗の木を伐った
新しい葉が空の隙間を埋め、重なり合い
青いイガが百個余りも芽吹いていた

野趣に富んだ風情を好む母が
四十五年前の新築記念に
幼い苗を庭の片隅に植えたのだった

特別な世話など何一つしないのに
庭を覆うような見事な樹形となり
ずんぐり太った大粒の実は甘く柔らかかった

秋にはピッカピッカに光る実を
近所に配り歩くのが母の習いになった
五粒ずつだったのが、二十粒ずつになった
来年も必ず待っててね
車椅子を押す私も一緒に微笑んだものだ

母は縁側に出て
スケッチブック一杯に栗の木を描いた
後背の山より栗の木は大きく
イガは太陽ほどもあった
満州時代の作も加え、個展を開くのだという
自分の名前もよく思い出せないのに
栗の木を描くときは、渾身の玉の汗を流した

それは、五年前のことだ
主を失った栗の木は変わらずに葉を茂らせ
もっこりと美しい金色の実をつけた

いま位牌を本山に預け、仏壇の性根抜きをした
宅地は願い叶わず、更地にせねばならなくなった
庭を覆う栗の木の根元に鋸の歯を当てたとき
まだ青いイガが、突然ぼとぼと落ちてきた
空がじぐざぐに揺れ、冷たい汗が飛び散った




【旧作】(2010.11.07)

 
城跡

海からやってきた白装束の女官達
血に染めた草叢は今蘇り
葛の根元に蟋蟀は蘇り
うたは瑞々しい憂いに満ち
陣所に近く光は清冽に流れ
公達が手になる笛の音は
遠い潮騒とひとつに結び
薄紅の頬の影さえ
玻璃の行方を知っている

芦辺の風は甘い匂いに満ち
葛の根元に蟋蟀は蘇り
陣所に近く光は清冽に流れ




【旧作】(2010.11.01)

 
気配

真空の中で鳴る
救急車やパトカーの
サイレンの音

向こうのビルでは
黒い電灯の影が
あちこちドアを
叩いたり

足を踏み鳴らし
騒いだりする
気配があるのだが
耳にまで届くのは
波長の長い
間の抜けた
目覚まし時計の
鳴る音だけだ

いまさら
三割引きの切符を
買ったって
電柱よりずっと高い
幾本もの煙突をこしらえて
みたって
はじまらないのだ

ほんのいま
はくちょう座星雲は
寸秒違わぬタイミングで
破砕開始のスイッチを
押し込んだと
いうではないか




【旧作】(2010.10.23)

 
あなたに

あなたは眠っている
青い屋根の上には
一匹のこおろぎが
午前二時のセレナーデ

ピンと羽広げ
小さな組曲トロイメライ
ギターをかかえ月のうた
ああ完全な寝息のあなた
一度だけでも
瞼の中で微笑んでおくれ

小さな指揮者の足音が
次第次第に遠ざかる
午前二時限りのノクターン
次第次第に消えていく




【近作】(2010.10.14)

 
作品

これはいい
これは古今の名作だ
などとは俺には言えないし
第一わからない

現実をよく写している
内面からの声によく答えている
老いの様はかくあるのだろう
新しい感覚であり新鮮だ

などということがよく言われる
ますます俺にはわからない

五十歩百歩
という感覚でしか捉えられない

まだ、売れるか売れないか
の方がわかりやすい

芸術であるか、そうでないか
の方がまだわかりやすい

色即是空
空即是色

深海には名も知らない
奇妙奇天烈な生き物が
棲んでいるかもしれない

目の前の
ありきたりの空間が
色とりどりの波動乱れる
花畑であるのかも知れない

顕微鏡の奥に
微細なものたちが
エネルギーを溜め込んで
新たなビッグバンを起こす
手筈を整えているのやも
しれない

望遠鏡の後ろ側に
幾重にも重なりあう
果てしない宇宙が存在する
可能性だって
あるのかもしれないのだから
   



【近作】(2010.10.11)

 


道端に止めた自転車に
蛇がするするとよじのぼり
籠の中のバッグに潜り込んで
しまった

蛇は
自転車を止めた途端に
道に覆い被さった楠の枝から
すっすっと地面に降り
真直ぐに自転車に向かって
這いのぼった

その全てのことを
ぼくは空から俯瞰するように
見ていた

蛇が
楠の下に自転車が止まるのを
待ち焦がれていたかのように
間髪をいれない
それは流れるように線を描いた
動きだった

ぼくはバッグから双眼鏡を
取り出し
天に向かって
そう、まさに楠の枝に向かって
焦点を合わせたのだ

焦点を合わせたのと
蛇が枝から動きを始めたのは
どちらが先だったか

双眼鏡に映る
蛇の目は意外におちゃめで
舌をちろちろ振り回し
ぼくに向かって
甘え寄るようだった

双眼鏡いっぱいに
蛇の肌のぬめりが広がったとき
蛇は方向を転じ
巧みに上昇運動に転じていた

籠の紙バッグに小さく
丸まった蛇は
そこを住処に決め込んだとでも
いうふうに

バッタがキシキシ音を
たてて飛び交っても
秋風が楠の葉を
大きくサワサワ揺らしても
バッグはカタリとも
鳴らなかった




【近作】(2010.09.29)

 
八月・人間

紺碧の空から
一個の弾が落ちてきた
それは着地寸前で炸裂し
鋭い閃光を発し
巨大なきのこ雲を立ちのぼらせ
天と地の間を覆った

地上では
いのちが、いのちの繋がりが
学校や山や川や橋や街そのものが
神隠しにでも会ったように
一瞬にして消え失せてしまい
消え残ったものたちも
紅蓮の炎に包まれてしまった

血も肉も肌も
目も鼻も耳も手も足も
意志も脳髄も腸も
男も女も
牛も馬も蛙も犬も
影さえも止めずに消され

あるいは、焼け跡に
骨を剥き出し、肌を垂れ
目も鼻も耳も手も足もかなわぬ
奇天烈な姿のものとなり
水を求め
ただ水を求め
声にならぬ声を振り絞り
亡者のようにふらふらと彷徨い
やがて力尽き
再び灼熱の野に
倒れ伏した

歴史は炎上し
時間空間は激しく瘧え
おぞましい哮りが
奥底から獣のような声をあげた

あまつさえ
きのこ雲から降り落ちる
タールのような雨に打たれ
どう拭い去っても消しようのない
αやβの種子を
DNAの配列の中に
容赦なく叩き込み
地中深くに
魂の奥深くに
まるで悪魔の礎石のように
穿ち込んでしまった

戦を終わらせるため
などという理屈のもとに
もっともらしい論陣を張り
守ろうとしたものは
はたして、義であり得るのか
このことをもって
いったい
晴天白日のものとなり得るのか

あの八月に
人間というものが
いったい
なにを、どう裁いたというのか




【近作】(2010.09.26)

 
領土

この土地は地域は
俺のものだ
いや俺たちのものだ
と激しく主張する

もともと天から預かった土地が
誰のものだはないだろうが
そうはいかないのが
現実だ

土地のために
地域のために
夥しい血が流されてきた
これが人間の歴史
これが国家の歴史
これが領地や領有権を
めぐる歴史

もちろん
魚だって鳥だって
猛獣だって
己の勢力範囲には
敵を寄せ付けないのだが
決まったことには
あっさり従うのが
自然の流儀だ

ところが人間の方は
どこまでも欲が深いから
話し合いなどでは
一向に方が付かず
結局血が流れる

血で血を洗うことになる
いや血を流すより先に
相手を消し去るという
戦略まで考え出してしまった

もともと天から預かった
土地をめぐって
理屈を投げ付け合い
強欲と利権の走狗となり
憤怒の形相を
剥き出しにして止まない

万物の霊長などと
自らを呼びはじめて久しいが
このバベルの塔の先端を
いったいどこまで
積み上げ伸ばせば
気が済むというのか

もうまもなく
約定の時が近付きつつある

その幾多のシグナルが
人間という種のものには
なにも見えないのだろうか
なにも聞こえないのだろうか



【近作】(2010.09.22)

 
ナガサキ今

六十五年前の夏
この地の上空で
二発目の火球が炸裂した

その瞬間に
ヒトは溶け
ヒトは焼け焦げ
ヒトは異形のものとなった

放射能という
全てを焼き尽くし
全てを突き抜け
全てを狂わせてしまう
宇宙の資源の内に潜んでいた
異端児が

子供の上に
母の上に
少女たちの上に
老人たちの上に
若い兵隊たちの上に
情容赦なくのしかかり
紅蓮の熱線を浴びせた

イヌやネコやウマや
学校や工場や鉄塔や
石組や塑像や瓦や線路や
そんな形あるものを
破壊し尽くす
ばかりではなく
心の芯までを引き裂き
阿鼻叫喚の真空地帯に
変えてしまった

六十五年を経て今
ナガサキの坂道には
マップを片手に
アベックや
修学旅行生や
外人たちが
上ったり下ったり
笑い合ったりする

しかし
宇宙の資源の内に潜んでいた
異端児が
そう簡単に遁走したとは
とても思えない

天を指さし
左手を水平に広げ
平和を祈念する像が立ち
溢れるように噴水が上がる
街の片隅に

もしかしてまだ
かの異端児がひっそりと
潜り込んでいないとは
限らない




【旧作】(2010.09.19)

 
吊革

満員電車の中で
それまで黙っていた
吊革が
ぐっと握りしめたものは
俺の手だ
いや俺の手じゃない
いやいや
俺の手に違いない
去年の九月から
ふらりとどこかへ
遊びに行ってしまって
指名手配中だった
俺の手だ
そうでなければ
こんなに
もつれ合うような
痛みを
感じることはない
みろ
これが俺の手だ
俺の指と爪だ
俺の手が
やっぱり
俺に返ってきたのだ
みろ
真白な吊革を
音の出るほど
ひきちぎれるほど
力いっぱい
握り返してやれるのだ



【旧作】(2010.09.18)

 
砂漠の風景

私にとって
生命とは何なのか
生命が生まれ
生命が枯れるとは何なのか
ああ今日も
私の遠くの砂漠の中で
飢餓が始まる
誰一人入り込む余地のない
砂漠の中で
今日は最後の水が
涸れてしまうかもしれない

神とは
人を殺すためにある
と私は断定する
闇を駆け回り
ガラスや機械や
鼻をつく液体の中で
あらゆる拒絶反応と
闘いながら
私は注がれる
すべての愛情を拒絶した

すべての裏切り者は私だ
ということばが
脳波となってやってきても
私のくちびるは
決してそれを言わないだろう
森の形
アパートの屋根
暖炉の傍
すべて
樹木も空さえも
風化してしまったのに




【旧作】(2010.09.08)

 
ひとつの終局

寝しなに飲む
コップ一杯の
ウィスキーの中から
電話のベルが
じゃらんじゃらん
鳴っている

この空白の
液体の重さは
何の逆さまの
現象か

俺は緑色の
サインペン欲しさに
フランネルコートや
リュックの底から
貯金箱まで
ひっくりかえした

はたして
心の中に
獣性がひそめば
それでいいことか

けれども
女の方程式は
x+y=α
の中で常に
y=β
が成立するのだ

ああ今も
天井のない
密室の中で
よだれのように
伸びた
電話のベルが
じゃらんじゃらん
じゃらんじゃらん
鳴っている



【旧作】(2010.09.01)

 
こけし

このビルの中で
昨夜殺人があったのだ
ほら、刑事や警察の者や
鑑識人たちが
被害者の手足を
バラバラにして調べている

指から爪から
バラバラにして
ピンセットでつまみ出している

すっぽりと抜けてしまった
女の頭はどこへ行ったのか

血の一滴もこぼれていない
殺人現場は
カラカラにひからびている



【旧作】(2010.08.21)

 
だんす・ほおる

男たちはみな
手にピストルをもっている
情欲のかぎりをそそりたてる
盲目のどらまあのソロ

完全な素裸の女たち
濡れきった乳房の動き
精液のしたたり落ちる恥毛に
狂ったように顔をこするつけ
くちびるをこすりつけ

踊る踊る男たち
踊る踊る女たち

女たちの
そのよく開いた股間から
四次元へ向けて
男たちは
手に手にピストルを構え
真白い弾丸を撃ち込んだ

クライマックス
ドラマチックス

きれいにけずりとられた
女の耳や眼や
膝やくるぶしは
ころころころころ
床のうえをころがるばかりで
青い血潮や
緑色ののどぼとけは
いっこうに姿を現さない

驚いたことに
そののどぼとけや
青く吹きだした血潮は
ばん・あれんたいのように
煤けた天井にはりついて
べたべたと
あいすくりいむを舐めている

ナパーム弾まがいの
マーク爆弾まがいの
マシンガンもどきの叩き売り

盲目のどらまあの
みあげた商魂

クライマックス
ドラマチックス

男たちはピストルを
構えなおし
マシンガンもどきを
ガチャガチャ鳴らし
札束をばら播きながら
女の恥毛の後を追う

しかし女ののどぼとけや
青い血潮は
もうすでに四次元へ向かって
逃走した

いまにやりとほくそ笑むのは
膝下の金庫に
はんぱではない札束を放り込んだ
盲目のどらまあの
だらだら伸びたおなにい



【旧作】(2010.08.11)

 
おたまじゃくし

だだっぴろい電車どおりや
でぱあとの中や
すうぱあまあけっとの中にでも
おたまじゃくしがうようよしている
めくれあがった目玉の中に
こんぴゅうたあをいっぱいつめこんで
ひょろ長いつま先まで
ぱんたろんをすっかり着こなした
おたまじゃくし
がんま線のようなものを口から
はあはあ出しながら
うねうねと長い行列を作り
いっしょうけんめいに宝くじの
ばんごうをけしごむで直している

ゆらゆらうごめくだけのその内蔵は
すでに発酵して
あるこおるのようにすきとっている
ぞうりむしがせまいたらいの中で
とらんぺっとを力いっぱい吹きならすと
ずいぶんすてきな音楽なので
おたまじゃくしの鼓膜は
ひどく苦々しい思いをしながら
つるつるにすべり落ちてしまう

やがてさなだむしが政治家でしか
ないようなぴかぴかの
せどりっくで現れると
おたまじゃくしたちはやはり
ぴかぴかのげえむをしなければ
ならないのでみんな
こんぴゅうたあを買い込んで
同じようにきらきらのげえむをする

ああ今は
とのさまがえるになりそこねた
おたまじゃくしたちよ
めくれあがった目玉の中に
こんぴゅうたあをいっぱいつめこんで
だだっぴろい電車どおりや
でぱあとの中や
すうぱあまあけっとの中で
きらきらきらきら
ただきらきらきらきらうごめいている



【旧作】(2010.08.06)

 
焼却炉

昼間やらかした罪の中から
俺はたえず空間に逃げ込もうとする
無間の立体構造のその中に
息をひそめて落下するのだ
餓死寸前の俺の罪業はただ
ものを食わないというだけではない
俺の耳たぶから採り出した血の色が
三角形の鋭角なのだ

すでに葬列は行く手を遮った
俺の骨を拾わなければならない
それにしてもいったい
俺の顔はどこへ行ったのだ
激しい嘔吐物がどろどろと
くちびるから流れ続け
声帯のない俺の喉元には明らかに
正常な笑みが浮かんでいるというのに

八月の太陽は高くて近い
焼けただれた海
赤いパラソル
得体の知れない呼吸困難
夥しい光
乾いたヤツデの葉
土埃
蝉の抜け殻―
それらは俺が小さい頃
すでに死臭の中へ歩いて行った

麻酔の切れた鋭い痛みの中で
俺はあんぐりと口を開け
昨夜の死を知った
洗われる肛門
鮮やかな直腸
伸びすぎた陰毛
いまはこの
俺のために尿瓶を取りに行った
看護婦を無造作に犯すだけだ

孤独に生きることを知ってから
俺の睡眠はいつも醒めている
二日酔いの朝のような
虚しい奇妙な醒め方である
ひとりの殺人者のように
ゆえ知れない全身痙攣の中で
枕にしていたものは実は
俺の運命論者だった

きしり迫る廊下の足音
白い手袋
女の素股
六月の影絵
ため込んだ死者の臭い
俺は気も狂わんばかりだ
なにもかも捨ててしまった筈の
俺の手に残ったものは
何もかも知っている俺の手だ
ああまったくの完全犯罪!!

庭で煙が上がっている
今日は快晴だから
煙はまっすぐに伸びている
中でじゅぶじゅぶと焼け焦げているのは
ほかならぬこの俺ではないか
肉の中から真っ白い脂が吹き出して
それがまた
俺のからだを上手に焦がしていく
あまりの息苦しさに俺は
あの重い鉄の扉を力いっぱい叩くのだが
俺の力はがらんどうに抜けて
ただ上へ上へと濛々と上っていく
しかし俺は
魂魄となり果ててさえ
骨を拾わなければならない
俺の骨を拾わなければならない



【旧作】(2010.07.28)

 
あいもかわらず

蒼い顔してさ
ねえ どこいくの
夜の張り込みは
非番ですぜ
自由自在な空想は
今月は赤字だから
ポケットに手突っ込んで
ほら 並木通りを
しゃらしゃらと

いつも飯は
外で食っています

センペル・エアデム
センペル・エアデム
山の写真を
軽四輪にまで
満載しているので
登山路には
バーが開店しました
バー”リベルテ”の
薄汚いことといったら!
ハイボールを注文したのに
出てきたのはなんと
スリッパ色の紙芝居
禿げあがった次郎長親分
の無二の親友は
無銭飲食の鼠小僧

センペル・エアデム
センペル・エアデム
らりるれろ
らりるれろ
おたんちんの
さしすせそ
ひょっひょっひょっひょっ
ぱかぱかぱん
たかたかたんたん
たかたかたん
テント懸けの小屋で
象と少女の
サーカスが始まる
ひょっひょっひょっひょっ
たかたかたん
団長の鞭には
鋲が入っているぜ!
と定年過ぎの
公務員が叫ぶ

センペル・エアデム
センペル・エアデム
白い月
空には病める哲学者
犬どもが
獲物を捜してござる
あそこにひっかっているのは
アルキメデスのしゃれこうべ
しかもその血は
滴り落ちる時計だよ



【旧作】(2010.07.21)

 
博物館

眠っているうちに
雨になったりする
眠っているあいだは
時計の針が
どこを
どう回ったかしらない

だから
眠っているうちに
ふり出した雨は
三年前のものとも
三年先のものとも
判然としない

濡れとおってやってきた
今朝の新聞は
蒙古来たる!
であったり
木星の輪消える!
であったりする

外はいつのまにか
雪にかわっていたりする
三年前の雪か
三年先の雪であるのか

やたら黴くさい
線香花火のような雪は
間断なく
今もふりやまない



【旧作】(2010.07.19)

 
しあわせ

しあわせよ あんまりはやくくるな
しあわせよ あわてるな
しあわせよ かたつむりにのって
あくびしながら やってこい



 
落下

暮れなずんだ空から
においのような雨が落ちてきた

水溜まりに捨てられたナイフ

息絶えた蛙の腸には
青い精液がへばりついていた




【旧作】(2010.07.15)

 


たくましい腕を空が
かすめとってしまったので
なにもかも
かたつむりになる



 
ある野心

わたしの手の部品をはずす
わたしの足の部品をはずす
わたしの首の部品をはずす
わたしの頭の部品をはずす
わたしの腹の部品をはずす
それらはひとりでに
わたしに近い牛になる




【旧作】(2010.07.07)

   無音

特急列車が街を縦横に走る
そいつは地下や高架を
いつの間にかはいずり出して
心臓病患者の多い
ビルの屋上にまでよじ上ってくる
まるで音もなく
あの枕木をガタピシ踏んづけて通る
威圧感などそれこそないのだが
軽くてかるすぎて
千枚通しのように
窓のガラスを簡単に
突き抜けてしまうので
ひとびとはそいつを拒む
理由もないままに
みどり色に膨らんだ心臓を
ふぐりのようにぶら下げたまま
切り分けてやったりする
あるいは
鼠色の万年筆や
茜色のボールペンを取り出し
停止信号のない
俯瞰図を描いたりしてしまう



【旧作】(2010.06.26)

 
めまい

わたしは
あおざめたとおい
宇宙を知っている
わたしは
めくるめくようにしらしらした
星たちのゆらめきを
知っている

あおざめたとおい
宇宙は実は
わたしたちの内にあり
いとも簡単に
手の届くところにあるのだ
ということを
知っている

実は
星たちのゆらめきは
わたしたちの胸の内や
わたしたちの三半規管の奥や
わたしたちの目の玉の上に
シャボン玉のように浮いている
ということを
知っている




【近作】(2010.06.15)

 
竹と風

竹の道を行く
青い節が気持よさそうに伸び
青い枝が涼しそうに触れ合い
青い葉が奔放に翻る

竹の道を青い風が吹く
ゴウゴウと節が揺れ
サワサワと枝が鳴り
シャラシャラと葉が踊る

青い風は
竹の道から生まれる
真っ白だった風も
鼠色だった風も
竹の道に吹き入ると
途端に青い色に染まっていく

青い風は
空の高みへと舞い上がったり
沢の水音に沈み込んだり
竹群の中に木霊のように
住み続けたりする

竹の道を行くと
シャンと背筋が伸びる
足先から頭のてっぺんを抜け
何かがスッと伸び上がる

竹の道に青い風が吹くと
目が醒めるような思いで
はるかな遠くのものに触れた
ような気がしたり
すっかり忘れていた
大切な問答を思い出したりする




【旧作】(2010.06.04)

 
逆児

私はあなたのもとを去らねばならない
そのことであなたが
どのような辛酸を嘗めたか
どのような暗い想いに沈んだことか

やっぱり私は紫色の逆児だった
口いっぱいのミルクを受けながら
私はあなたの横顔を盗み見ようとした
あげくの果てには
口のものを半分ほど吐き出したりした

私が産道をくだっていく度に
あなたの母体は死に瀕していたのに
虚弱な夜泣き声をあなたは
便壺に捨てたりはしなかった

あなたの舌は荒れていた
歯茎からは薄い血がにじみ出していた
だのにやっぱり私は紫色の逆児だった
猫のように痩せこけた髪の毛だった



【旧作】(2010.05.31)

 
夏は

あなたの指が水を掬う
あなたの指が清冽な
流れに染まる

あなたの指が水色の
小石を拾おうとして
あなたの指がやわらかい
草の根にゆれる

あなたの指は弥勒様のように
首をかしげ
あなたの指は覚えたての
呪文を唱えてみる

あなたの指はせわしげに
動くことをせず
あなたの指はやさしい
もの想いに佇む



 


舞い上がった飛行機が
空を食べてしまったので
空はあっけらかんとしています

街の店では
洗面器の大安売があったので
みんな薄の穂を
くわえて歩いています

いましがたまで
汽車の窓から見えていた風景は
みどり色にふくれあがった
まんじゅしゃげの心臓です

海辺では
母が病気で
青い息を吐いているので
ズックがひとり
夕日をみがいています




【旧作】(2010.05.28)

 


男は蚯蚓を掘っていた
麦藁帽子の下には
脂だらけの顔があって
汗と一緒に
泥が流れ落ちていた

子供の熱は四十度を越え
二週間を過ぎた

男は毎日無理矢理拝み倒し
村の医者を連れてきた
医者はヤケクソのように
何十本もの注射針を刺した

子供の熱は四十度を越え
吐く息が荒く熱く
だんだん間遠になった

蚯蚓を飲ませたらええ
明け方のまどろみに
かすかにか細い
ことばがひょいと降ってきた

枇杷の実が熟れていた
川の真ん中を
くちのうがゆうゆうと
横切っていった

男は一心に蚯蚓を掘っていた
男の目には
枇杷の実の金色も
くちのうのふてぶてしさも
映っていなかった



【旧作】(2010.05.22)

 
朝刊

ラッシュアワーの電車が止まると
駅の改札口に向けて殺到したのは
今朝の朝刊たちだった

それらのどれもが
人類滅亡迫る!!
という危機的なスクープを
得意満面に一面トップに
掲げていた

改札口では
駅員たちが何のためらいもなく
アトムやドラえもんたちの手から
切符を受け取った



 
揚羽蝶

わたしは病んでいた
ゆえ知れない脊椎の痛みに
心臓は激しくあえいでいた
わたしの眠りは
苦しい息遣いの中で
ふいに目覚めた
ほっかりと浅い
奇妙な目覚めであった

まるで
果てのない荒野に
むやみに
雪が降っている
ようであった

眼を開いてみると
漆黒の揚羽が
雪のいたる所に
点々と
果てもなく点々と
舞い降りたらしく

ビロードの布切れのように
千切れた
夥しい花を咲かせていた




【近作】(2010.05.10)

 


ゆったりたゆたう
なんでも飲み込み
悠然と流れゆく

時化ようと
油を流し込もうと
バンバン
爆弾を打ち込もうと
知らぬ顔だ

ここまでが自領域だ
ここからは他領域だ
などとかんかんがくがく
言い争ってみても
ザーと包み込み
ゴーと押し流し
まことに無造作に
まことに大様だ

しかし実は怖い
いったん
引きずり込まれでも
しようものなら
小理屈など喚いても
なんの
役にもたたない

正当であるとか
正当でないとか
妥当であるとか
妥当でないとか

理屈などいらない
小理屈など
屁理屈など
幾億幾兆となく沈めたまま
ただ
滔々と流れゆくのみだ

すべてのすべての
命の芽や
恨めし気な
眼窩のものたちを
底にうち沈め
胎内に眠らせ
全くなにごともなげに
ほら
寄せては返すばかりだ



【近作】(2010.04.29)

 
掃除

考えに行き詰まり
仕事に生き詰まり
神経を宥めることに
行き詰まったりしたときは

ネクタイを外し
ボタンを外し
時計を外し
テレビを消し
パソコンなど放ったらかし

水をジャージャー流し
腕をまくり
雑巾バケツに手を入れ
頭のネジを
理屈のネジを
まず緩めてみることだ

棚の品物を見上げ
さも大切そうに出張っている
ファイルなどを
隅に追いやり
埃にまみれた
桟などを
丁寧に拭いてやる

自分の心を洗おうなどという
たいそうなことでなくていい
リズムを取り戻そうなどという
たいそうなことでなくていい

ただ目の前の
いつも当たり前のように
出張っているやつの
向きをひょいと
ずらしてみるのだ

水をジャージャー流し
腕をまくり上げ
雑巾バケツをまぜかえし
頭のネジを
顔のネジを
ちょっとだけ緩め
大あくびをしてみることだ

水の跳ねに濡れ
水の跳ねを跳ね返し
このヤローなどと
怒鳴りながら
大笑いをしてみるのもいい




【近作】(2010.04.21)

 
アルキスト

煙る雨の中傘をさし
玄関を出る

ジャージに運動靴という恰好の
新米のアルキスト

歩数計を腰に颯爽ととは
お世辞にもいえない
ヒョコタンヒョコタンとした
歩きで

かなり年期の入った
あたりのアルキストたちを横目に
眺めながら
五千歩は歩く

先日は少々欲を出し
二倍の一万歩を達成した
一時間と四十分だ

一時間四十分も歩き続けたのは
十九歳か二十歳の頃
三郡縦走とやらを面白半分に
年に十回もやったとき
以来のことかもしれない

もっとも
酔いどれて
篠栗から福岡まで歩いたのは
二十歳も半ばのことであるが
それは酔いの座興の
戯れでしかない

目的をもって
ひたすら歩くなどというのは
四十年ぶりのことだ

歩くために歩くこと
これが職を辞した自分に
課された仕事のようなものだ

運動という運動を
したことがない身に
ジャージに運動靴という恰好は
まるで様にならないのだが

四時や五時の時間帯に
あたりのアルキストたちに習い
手ぶらで歩いているということが
どうにも妙に落ち着かない



【近作】(2010.04.08)

 
栗のいが

栗のいがを見つけた
春の草むらの中に

茶褐色のハリネズミが
草むらに潜んでいたのかと
驚いて後ずさった

草の中途で
クルリと動いたもので
小動物かと勘違いしたのだ

茶褐色の栗のいがは
おそらく枯れ葉の下にでも
埋もれていたのだろう

それが、草がフッフッと
背伸びして
宙にまで伸び上がった
ものだから

一緒にフッフッと
宙にのぼってきたのだ

いがの中からは
ひしゃげた実が顔を出し
クルリと動いた拍子に

日射しのまぶしさの中
くしゃみをひとつ
クシャンとした




【近作】(2010.04.03)

 
ビルの風

ビルの谷間の風は冷たい
モニュメントの上には
桜の枝が被さり
びっしり花びらをつけている

花びらに吹き付ける風は
ヒューヒューと音をたてて
吹き抜けていくけれど
七分咲きの桜は
ほとんど花びらを散らさない

新入社員たちが歩み入り
黒塗りの車が地下に潜っていく

ガラスには雲を映し
エレベーターが降りてくる

風は屋上の赤い社旗を揺らし
垂らし広告を揺らし
谷間を滑空したり
ジグザグに走り抜けたり
とにかくじっとしていない




【近作】(2010.03.22)

 
春と海

磯部に寄せる波の音が
眠気を催させる
波の音は
きっと生まれる以前に
聞いた
なつかしい混沌とした
あのリズムの
ままなのだろう

いつかの時に
なにかの石だったか
なにかの高い雲だったか
そんな
なにかのαだったとき
いつもいつも聞いていた
あのリズム

磯部に寄せる波の匂い
新しくて
途方もなく古くて
なにがなしにゆかしい
ほとんど
胸が詰まってしまうほどに
切ない
いつもいつも聞いていた
あのリズムの
ままなのだろう

いつかの遠い時に
なにかの涙だったか
なにかの高い雲だったか
そんな
なにかのβだったとき
いつもいつも聞いていた
あのリズム

遙かな眠りのときと
幾百千ものγのとき
いつもいつも聞いていた
あのリズムに
誘われていってしまう
春の海の
とろけるような
波の音




【近作】(2010.03.14)

 
春の海

眠っていたことがある
寄せる波の音
返す波の音に
身を委ねているうちに

遙かな思いに泣いたことがある
寄せる波の音
返す波の音に
身を委ねているうちに




【近作】(2010.03.10)

 
自由無碍

宙空間を自在に飛んでいた
ような記憶がある
時間の隔たりも
こちらから向こうへの
距離感もなく
自由自在に飛んでいた

夢であるのか
現実のことであるのか

どう考えても現実のことと
しか思えない
つい昨日のことのような
いや明後日あたりのことの
ような

昨日と明後日が
どちらが先で
どちらが後のことかも
こんがらがってしまうのだが

どこにでも行け
どこからでも現れることが
できたのだった

飛んでいるときは
飛んでいることが当たり前で
あったから

今、飛行機などという
不自由きわまりない
奇天烈な檻に閉じこめられ
しかも
切符とやらを買って
乗り込まねばならないとは

もはや文明も落ちたものだ
と嘆息して
我に返ったものだ

我に返る間際のことで
もう一つ
会いたい人や
会いたいことや
会いたい自分に

思ったときにはもう会っていた
不満をたらたら言っている
今の自分にも
宙の彼方の星雲に
くるまっていたときの自分にも

フィヨルドに生えた
一面の苔の下に棲んでいたときの
自分にも
いつもよく会っていた



【近作】(2010.03.03)

 
地震

マグニチュード七とか九とかの
この頃強烈な地震が絶えない
海の底や地の底にあって
日頃の鬱憤がたまったのだろうか

たまには
小さな寝返りでもしなければ
体がなまってしまうのだろうか

南の端からの呼びかけで
西からも東からも北からも
長い眠りから覚め
おっとり刀で
駆け付けようというのだろうか

なにせ火の玉の上に
住んでいるのだから
海の底で錆び付いたように
眠っていた岩だって
地の底でガッシリ組み合った
岩だって

お尻に火が点いて飛び上がったり
いきなり足元を掬われたり
するのかもしれない

マグニチュード七とか九とかの
数値を聞くだけで
盤石な住処に暮らしていると
信じ思い込んでいるわれわれは

恐ろしさに泣き叫び
激しく天を呪い地を呪い
阿鼻叫喚の地獄絵にはまる
ことだけは
もう間違いないことで

もうひたすら天に手を伸ばし
鯉のように鰓蓋をこじ開け
懸命にただばくばくと
空気を奪い吸おうとするだけだ



【近作】(2010.02.26)

 
言わざる

見ざる、言わざる、聞かざる
とはよく言ったもので
特に、言わざるというのは
金言の類だ

ことばを巧みに操り
恋も、出世も、商談も
果たすのが習いであるが

言えばあたりの空気を乱し
神経まで刺してしまうような
輩がいる

というのはほかならぬ
自分もその一味で
たわいのないことを言った
つもりが
相手の肝を握りつぶすような
ことになってしまうらしい

普段ものなど言わぬ奴が
言わぬくせに
言えぬくせに

ズドンと腹にめり込む
ようなことを言うなどとは
無礼千万
お門違いもはなはだしい

などとなるからややこしい
冗談のつもりが冗談ではない
となると悲惨だ

言わざるを決め込む
言わざるのポーズをとる

言わざるをいいことに
四方から八方から
礫のように言葉が飛んでくる

言葉がチクチクと
ぶんぶんと飛び交う

言わざるのポーズの主は
聞いても見えず
見えても聞こえない
石ころになる高等な術を
よくよく
心得おく必要がある




【近作】(2010.02.20)

 
あめんぼう

なさねばならないことが重なると
あせってしまい
一つに嘴を入れ
違うやつにも嘴を入れ

何もかもに嘴を入れ
前後見境なくスタートするのは
いいとして

一週間が経っても
何一つ片付いていないことに
はたと気付く

どれもこれも期日が切迫して
いるから
あめんぼうのようにくるくる回り
気持だけは激しく急くのだが
よけいに混乱してしまう

一つ一つということを知っている
一つを片付け
次にまた一つという具合だ

わかっているけれど
期日は待ってくれない
あめんぼうの仲間を呼んで
くるくるくるくる
くるくるくるくる回る

二週間が経っても
何一つ片付いていないことに
気付き凍り付く

今更一つ一つもないだろう
悲痛な叫び声をあげ
もう一匹のあめんぼうまで呼び寄せ
くるくるくるくる
くるくるくるくる回っている




【近作】(2010.02.08)

 


突然春の陽気になった
すさまじい風を連れて

首筋を背中を凍らせる風ではないが
何の機嫌を損なっているのか
足元を掬いあげ
ガラガラとトタンを打ち叩き
通りを目いっぱいに走り抜ける

昨日まで凍えてはいたが
透き通った陽の光に貫かれ
レディのように澄んでいた川面が
キッと眉を顰めている

電車はようよう線路にしがみつき
よたよたと鉄橋を渡る

肌を打つ温かさは
目の前にほらほらと鈴を振りかざして
いるつもりかもしれないが

躁と鬱をいっぺんに溜め込んだ
みたいな風は
元気いっぱいで
元気がりんりん漲り過ぎ
もう、台風なみの唸り声をあげ

春を待ちこがれている梅や桜の
枝枝をバラバラに揺らし
根元からへし折り
気合いを入れ走りまわる



【近作】(2010.02.02)

 
大根に寄す

庭の片隅に大根を撒いた
肥料も与えぬというのに
青い葉を繁らせ
地面から大きな顔を突き出し
六十センチほどの見事な
根に育った
味噌汁の実はじつに柔らかく
とろけるようで
喜んであちらこちらに
配って歩いたものだ

三年もすると一気に地力が落ち
肥料を鋤き込んでみたが
三十センチにも満たない
とろけるような味は健在で
あったが

やはり肥料が足りぬとみて
ふと思い付き生ゴミを地に埋めた
どんどん埋めた
てきめんに撒いた種が
発芽しなくなった
土が焼けだしたのだった

万を侍して十年
今年の発芽は百パーセントとも
いうべく順調で
根を食い荒らすバッタとの
闘いにも勝ち
三十年前のような
ふくふくした青い葉を
秋風にわさわさ揺らしていた

最後の追肥のつもりで
少量の化成肥料を
ぱらぱらと放った
小雨の朝だった

豊かに繁った葉の群れに
吸い込まれた肥料の粒が
ホースの水にも落ちなかった

生ゴミのときのことが
かすかに頭を過ぎった

根の成長はストップした
多分勇躍伸び上がろうと
腰を浮かしかけたところに
熱湯を撒いたような
仕打ちだったのかもしれない

もののついでに大根をつくるとか
見栄で大根を作るなど
もってのほかだと
ぼんくらで阿呆な男に
身を挺して示してくれたのだろうか

もう愛想が尽きたと
今度こそ
三行半を下したのだろうか




【近作】(2010.01.24)

 
子犬

甘ったれのマンタという子犬
懐にくるむように育てた
飼い主の元から離され
もらわれてきた

もらわれてきたのは
泥棒に入られたばかりの
若いサラリーマンの家

吹きさらしのベランダに
初めてクサリで繋がれ
夜を迎えた

マンタは悲しい鳴き声を
間なしにあげ
丸くなって震えている

カーテンの内から
サラリーマンと妻と
小学生の男の子と
三歳の男の子が
何度もカーテンを透かし
ベランダを見やる

もう十時過ぎだよ
いつまでも鳴き止まないな
キュンキュン鳴いてるよ
腹減ったのかな

淋しいんでしょうねえ
可愛がられ過ぎて育ったんだよ
寒そうだよね

牛乳にもご飯にも殆ど見向きも
しない
こんな夜更けにいつまでも
鳴き止まないと
近所が困ってしまう
迷惑だろうな

マンタは拗ねた目を
小学生の男の子と
三歳の男の子の方に向け
キュンキュンと訴える

困ったねえ
可愛そうだよねえ
でも近所にねえ

十時半になると
サラリーマンはラップの芯を
手にベランダに出ると
芯でマンタの頭を小突く
仕草をした

マンタは驚いたように
鳴き止み
とっさに小屋の屋根に
跳び乗った
そして悲しげに
サラリーマンを見上げる

これでいいのかなと
小学生の男の子と
三歳の男の子
かんべんだよなと
サラリーマンと妻

マンタは体中を
ブルブル震わせながら
ラップの芯を見やっている

鳴くことも忘れて




【近作】(2010.01.17)

 
快晴 

冬まっただ中の青空
雲の一点もない
この冬は北風強く、雪が舞い
曇天続きだったから
まばゆいばかりの青い空

こんなにも空が高く
こんなにも澄み切って
こんなにも山影が鮮やかで
こんなにも空気が美味しい

学校のチャイムが
コロコロと響き
子供達のはしゃぎ声が
甲高く聞こえる

ゆっくりと鳥が舞い
飛行機雲がすうっと
伸び上がる

山茶花の花弁がキラキラと
散り敷き
モミジやカキやクリの
落ち葉に
ほっこりと日の光が
潜り込んでいる

こんなにも空が高く
こんなにも澄み渡って
学校のチャイムが
カラカラと響き
子供達のはしゃぎ声が
甲高く聞こえる



【近作】(2010.01.13)

 


空を縦横無尽に雪が舞う
台風のような北風にのって

北風とはいえ
西から吹き込んだり
東に回り込んだり
地面を掬い上げるようだったり
頭上から威圧してくるようだったり
風の向きはコマネズミのように
変わる

雪はジグザグの道筋をつくり
空を流れたり
雪と雪がぶつかったり
ひょいひょいと交わしたり
右に走ったり
左に流れたり
旋回して戻ってきたり
勝手気ままに舞い躍る

今朝の雪は頬を激しく打つけれど
北風は激しく向かってくるけれど
そんなに痛くもないし
寒くもないのはなんだろう

空を縦横無尽に雪が舞う
台風のような北風にのって

それは雪が明るい光を
纏っているからだろうか
空を縦横無尽に舞うとき
折りからの
一筋の光とともに
まるで
喜びに乱舞しているかのようだ

黄色いランドセルの上に
雪がキラキラと高く渦巻き
大きな歓声をあげているのは
おそらく
子供たちだけではないだろう



【近作】(2010.01.07)

 
停電

新年の仕事が
始まったと思ったら
停電だ
この寒波の中
ストーブはつかないし
パソコンが動かないから
仕事にならない

曇り空は
いっそう垂れ込めてくるし
弱い光が
窓際にさえ届かない

最先端の科学技術立国
世界との競争などと
威勢の良いことばを
日々口にしているけれど
電気が止まっただけで
ビルの生活は壊滅状態だ

時間、空間を勝手気ままに
切り取って
摩天楼をこしらえた筈の
最先端の生活が
研究が
真っ逆さまに逆流してしまう

停電が
もし悪意に満ちたもので
あったとしたら
もう三日目には
ビルの十階や二十階から
人間がどんどん降って
くるやもしれない

十日目には
線路に人が溢れ
信号の消えた国道には
クラッシュの
山ができ
空腹に眼を血走らせた輩が
ウィンドウのいたるところを
叩き破っているかもしれない

一日だけの
定期点検のための停電
だとわかっていてさえ
気持がこう冷えてくるのは
なぜだろう



【近作】(2010.01.01)

 
ブランコ

新しい日の光を浴び
ブランコが人待ち顔に
微笑んでいる

青いブランコに
ズックを履いた男の子
が乗った

白いブランコに
リボンをつけた女の子が
乗った

青いブランコと
白いブランコは
透き通った日の光のなかを
キラリ
キラリとくぐり

交互に
空に向かい
山に向かい

高く高く
強く強く

口笛を吹くように
気持のよい風の音を
いっぱいにふくらませ

空へ空へ
山へ山へと
のぼっていった
ずんずんのぼっていった



索 引


ブランコ

停電



快晴

子犬

大根に寄す



あめんぼう

言わざる

地震

自由無碍

春の海

春と海

ビルの風

栗のいが

アルキスト

掃除



揚羽蝶

朝刊






夏は


逆子

竹と風

めまい

無音

ある野心



落下

しあわせ


博物館

あいもかわらず

焼却炉

おたまじゃくし

だんす・ほおる

こけし

ひとつの終局

砂漠の風景

吊革

ナガサキ今

領土

八月・人間



作品

あなたに

気配

城跡

栗の木を伐る

魂魄

地質年代

時間

人類史

ある終局



凍る

幸福

街角で

ゴッホ展



同人誌

雲海

曇天

マグマ

古都の雪

ノクターン

センチメンタル

街角

無明

長男だから

地震

春の風

柿の新芽

都府楼

マヤ暦

春の憂鬱

論破

こだわり

合格点

善意

勇気

楽観主義

ロマン

始まりのとき

遠心力

赤い屋根

新緑

見えないもの

ある文芸人

とんだ偉人

今日

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緑と風

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カワセミ

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