俳句
                                                                                              

                                                    
2009年12月までの分は→ 俳句(自由律)NO1へ
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日記的に書いたもので、推敲が十分ではありません。お見苦しい点は、御容赦願います。
   





【近詠】(2014.12.12)

台風豪雨台風豪雨 予報には笑うしかない


雷光速射砲のごと降る 薄緑色に飛沫跳ね


時間雨量百ミリ越え ただに座しおるのみ


無音のまま雨崩れ落つ けだし白い壁なり


午前三時雷光雷雨激し 窓開けちに閉ず


消防車救急車上りゆくらし 川音騒ぐ夜半


御笠川今にも壊れんかと疑念湧き 眠らず


前線停滞し居座り 積乱雲次々に積み上げ


積乱雲の層 奥に厚く高く詰め置かるらし


想定外らし バッグビルディングなる現象


柿の実雨に落ち尽す 台風にも耐えたるが


都府楼跡に蛇を見る の主らし水を出で


藪蚊さえ寄らぬ 雨にされし原を歩ける


朝に夕に来たりて 高く低く鳴き交わす


川草川下に向かい伏し 鷺一羽水際に佇む


大仰に言わねど 昨日も今日も明日も又雨


除湿機フル回転 二度も三度も水捨つる日


出る刹那に催し始め 急ぎ戻れば上がる雨



【近詠】(2014.02.10)

無人の家雑草に埋もれ 玄関に蔓巻く

勢い伸ぶ雑草 足元探り庭に踏み入る


無人の家は無人のままに 訪うてなお


脳天縮む 出窓の角に打ちつけしより


隘路に体入れ 太き根抜きし反動なり


脳天に火花散る 頭上注意と呟きし時


帽子脱げば 血染めの髪束となり落つ


雑草魂 コンクリートを割り穿ち出ず


蜜柑金柑古枝に残れる 新芽出でをり


花愛でる間なし 春嵐の激しきままに


爆弾低気圧とう 硝子窓に雷飛沫かせ


葉桜となりゆく 見舞う人の坂上る道


花冷えに病む 入院点滴ひきもきらず


母病み窶れ眠る 一人暮らしに拘れる


兄弟の争い激し 母病み窶れいる間も


骨肉の争いとなる 何故ぞと胸に聞く


美しい夢あり 海原に虹の道出でたる


笑い興じて目覚む つと涙溢るは何ぞ


遙かの的に向かい走りたし 今にして



【近詠】(2013.09.27)

五十年を引き倒す シート巡らし始まりぬ

色即是空 五十年を葬る浮かぬ顔並びいて

家引き倒さるるとき 空斜交いに震えおり

家引き倒され 瓦礫崩れし中に男一人立つ

猛暑沸騰す 解体業務の男ら覆う何もなし

炎昼の下に男あり 裸の背中に朱の汗走る

声荒げクレーン操る男 裸の背中に龍昇る

解体の重機の唸り 今息切れんかと聞こゆ

炎暑に射られ 雑草伸ぶ能わず焼け焦がる

炎熱の警報姦し 熱帯気候に変わりたるか

三八度の中駅まで歩く 暑さは痛みと知る

熱中症か 救急車来て運び出さるる老婦人

クマ蝉の声絶えしに 熱暑いよいよ極まる

我が国一番の平均気温らし この地の今夏

真直に雨降る 経験なき降り様に心穿たる

法師蝉聞かず 台風一過秋冷えとなりたる

十度の降下となる 気候激しく震え悶える

竜巻来襲 数分の間に家も車も社も奪える

異常気象と言うなる 気性激しき気象なり


【近詠】(2013.06.16)

無人の家風通し埃を拭き祓い 七回忌法要始まりぬ

七回忌司る尼僧 出家したてというに涼やかに座す

彼岸を願い出家したり 看護の仕事が導ききたると

彼岸に生まるること専一に願うと 尼僧微笑み語る

四十八歳で出家して 孫あるが嬉しという女人なり

よく話しよく食べよく笑う 剃髪のあと青く新らし

内科医院まで歩き行く 川筋の風に向かい吹かれて

内科医院の玄関に人群れ 素心臘梅の香り濃く漂う

風邪薬しばし控えねばと 医師今日は強く言い放つ

医院出れば一陣の疾風舞い起こり 線路鳴らし走る

喉に胃に不快あり 書を風呂をやめ早めに床に入る

夢に魘されてばかりいる 明けやらぬ風邪の床にて

仕事の首尾悪しと胸掻き目覚む 定年過ぎし今朝も

寒締まりし風なき夕べ 道真直にして遙か伸びゆく

寒の夕強く締まりおれば 犬の声高く空に吠え抜く

臘梅薄闇にも香り立てり 歩き過ぎにし塀の内から

寒い息煙のように吐き 言わでものこと言い合う人

ある筈なき我が名を 図書の書架に探しいる雨の日

図書館が持つ故なき冷たさに くつろげず出できし



【近詠】(2013.04.01)

2013年の初日赤々と昇りくる 嬰児のごとくに

2012年を記憶す 系統図からヒト墜ちぬるかと

マヤ暦後 ヒトの時なしと言いきたりし人を責めず

ヒトはこの星の癌ならんかと問う 小コラムなれど

核、麻薬、コンピュータ ヒトの手にあり難止まぬ

権謀術数渦巻く世なり 未だ弥勒菩薩来臨賜わぬか

潔く返上するべし 万物の霊長の名にヒト能わねば

UFOに遭うやも知れぬ 暮れ泥みし広野を行けば

人が人を殺めるという ニュースのなき日を知らず

弾丸飛び交う最中に カメラ構え引かぬ女人ありき

自爆テロ頻発する 標的はいずこに遁走したりしか 

死ぬために生きるとう少年 凜と立ち白き歯に笑む

死ぬために生まれ来るというは安し さはさなれど

金、色、謀略、薬 人が人を売り買うという底の闇

魚たちに毒飲まし止まぬ様を 如何に述べんとする

空高く舞う鳥たちに問う 他に望みあるやなしやと

初空の都府楼跡に飛行機昇る 都人と飽かず眺める

蜜柑金柑の実古枝に残し 廃屋の庭に新芽吹きおり

ヨイトマケに見入りおりし 負える帯汚れしままに



【近詠】(2012.06.10)

棺を覆うとき その全てが見透かされる

葬式が金の話になる 浅ましいというは易し

香しいる音楽に包まれ 出棺のときとなる

儀式であるか弔いであるか 諸々が寄り合う

空き家また増える 主はるかに旅立てば

辞世の句さらりと残し 自ら会衆に告げゆく

見事な生き様かもしれぬ 市井に籠もりて

子孫らを一堂に集め 別れは一大事なり

死ぬはあの世に生まるることと 真摯に思う

六月の暑い日九十歳にして みまかりぬ



【近詠】(2012.04.22)

首痛む 脳天を出窓の角に打ち付けしより

ガツンと火花散る そこに出窓の鋭角あり

帽子脱げば 肌破れ血流れ髪の毛抜け落つ

爆弾低気圧また来たるか 春の終わりに

新緑伸びゆく 飛行機の音くぐもり昇る

雑草の逞しさよ コンクリートを穿ち出る

無人の家雑草に埋もれるか 競うがごと

競い伸びる雑草 踏み分け入る玄関口へ

蜜柑金柑古枝に残れる 新芽出でるものを

無人の家は無人のままなり 訪うまでは 



【近詠】(2012.04.08)

花愛でる間なし この春の嵐病騒走りゆく

葉桜となりゆく 見舞う人ありて坂上れば

花冷えに病みたる 入院点滴ひきもきらず

2012年来る 動乱の兆しかをちこちに

母病み窶れ眠る 一人の暮らしに戻れるか  

兄弟争うこと激し 母病み窶れいる間にも

骨肉の争いとなる 何故にこうなりゆくや

兄弟が兄弟をうつ 己の責任であるやらむ

逆恨みならぬ言い掛かり 話になどならぬ

執拗に恨み言を言う 憑きもの憑きたるか



【近詠】(2012.02.28)

スズメもツバメも訪れぬ 垂れしままの昼

二○一二 後に年なきとマヤの暦はいう

年荒び進みおり 北も南も真に位置するや

人が人を殺すとう ニュースなき日はなし

多賀城めがけ 津波いかに流れ来たりしか

土台残すのみ 人住みき空間空隙となる

かの堤防を越えしと 運転手凪の沖を指す

ひょろりと松残り 空き地茫漠と続ける

波の跡残りし家の内から 笑声聞こえ来る 

千石線地下を出でし 主婦黙然と座しいる



【近詠】(2012.01.27)

靴底から冷え上り来れる 都督府跡

冷えが耳に鼻に纏わりくる 雪舞う道

内科医院まで歩き行く 川道を吹かれ

内科医院人の気なし 寒風激しき故か

内科医院の玄関 臘梅の匂い濃く漂う

風邪薬今日は控えよと 医師に従う

医院出れば一陣の風 線路沿い走る

喉に胃に不快あり 早めに床に入る

夢に魘されてばかりいる 風邪の床

仕事の首尾悪しと目覚む 定年の今も



【近詠】(2012.01.23)

寒い息煙のように吐き もの言い合う

作家苛立ち応ゆ 問う内容も粗末にて

もらって当然と嘯き 作家最高賞受く

評なるは 何を基準に何を言うべきや

人が人を選び作品を選ぶ 何をもて

売れるから選びし そう言えば然るに

選びし評苦し 言葉ぼろぼろ零れゆく

寒締まりゆく 風なき夕べ道真直にて

寒締まりくる 犬の声甲高く空に吠え

臘梅薄闇に香る 歩き来たりし塀の内



【近詠】(2012.01.17)

くじけないでの詩 柴田トヨさんありがとう

朝はくる 柴田さんには神様が宿っている

九十歳過ぎて詩を書く 朝日が覗いて昇る

鎮魂の火が静寂に燃ゆ 魂ふるわせるごと

珍しく陽が煌めく 阪神震災十七年目の朝

阪神東日本 悲しみを越え結び合う情あり

東日本へ思いをいたす 十七年の傷を越え 

千円カットに行く 寒と寒の中日を縫い

一次合格 息子よ思い切って踏み出すことだ

ならぬはなし ここから出発するも楽し

子の母なり 小さきケーキをそっと出し

悲しいことのみにて 笑顔忘れおらぬか

母はいかばかりか 二度の骨折癒え退院す

日向は陽あり 気温久方ぶりに暖かきがよし

臘梅華やかなり あたりに香り気高く漂わせ


【近詠】(2011.12.07)

七回忌を司る尼僧 出家したてというに優しき

四十八歳で出家して 孫もつが嬉しという女人なり

彼岸に行くには資格が必須 看護師として思いきと

無人の家風を通し埃を拭き祓い 法要始まりぬ

彼岸には生まるることになると 尼僧微笑みいう

図書館が持つ文化の香に くつろげぬ我なれば

何万何十万冊に込められし知 吸い込めぬものか

ある筈のなき我が名の書棚 確かめ探し見おり

書棚に並べらるるは 如何なる要件あるものやと

我が思う如き発想にて詩を詠む 高名な詩人あり



【近詠】(2011.11.05)

現代詩フェスティバルという会場に 首竦め座りいる

大震災の惨・悲・悔が作品となり 詩の朗読に慟哭す

小学生が読む詩のうちに 東北の土の匂い目裏に迫る

浚われ千切られし命命命の主よ 何故にかくなるや

東北の訛りが延々と続く 失いし命を闇に向かい呼び

おめでとうという言葉は空し 表彰受けし人の耳に

みんな流されてしまった婆さんの言葉 温もりさえあり

長閑に雲流れていた東北の地に 覆いきたれる魔物なり

爺が婆がわらしこが 引き千切られ圧し潰されしという

放射能撒き散らし 空気も水も土もはあ地獄の沙汰よ



【近詠】(2011.08.21)

雷起こり来たりて 闇叩く雨に吼えかかる

雷の音屋根に割れ落つ 雨の勢いやまず

闇打つ雨ハタとやむ くしゃみ止まぬに

秋の虫がいずこかにいる 街灯の下歩く

秋風立ちぬ 猛暑の空いずこに行きしか

蛍光灯微かに鳴りいる 虫の声に似て

電車行き交う音聞く 鍼治療院にいる

曼珠沙華群れ立つ 古寺の参道の夕暮れ

菩提樹硬き実をつけ 古寺いま暮れゆく 

ぐちぐちと雨降る模様 盆明けというに



【近詠】(2011.08.12)

剪定済みし枝には 蝉ハタと寄らずなりぬ

三十八度を越え 路ゆらゆらと陽炎燃ゆる

息をするだに苦し 暑熱籠もれる部屋に伏す

サギ高く鳴き 川中を悠然と歩き来たりぬ

ヒグラシの鈴降る音涼し 林道暮れゆける

ヤブ蚊まだ出でず 炎暑の夕べに草毟れど

五時のチャイム鳴れど 陽は中天にあり

侘助の葉黒々として 炎熱の中蕾孕みおり

薄雲を連れこの夏 地を焼き蒸らす如し

百日紅の朱を撒く 空と海が続きいる島に



【近詠】(2011.08.01)

トネリコの枝々に クマ蝉移り来て鈴なりに鳴く

トネリコの細枝に蝉静まり 祈りの如く産卵す

濁流襲う 大震災の片付けもならぬというに

政治が金が権力が もはや人災という外術なし

政治が金が権力が 今生は仮の世とも言うに

総理の虚言が 一億の耳に喧しく響きゆくのみ

嘘で固め大嘘で固め 総理シャーシャーと曰う

総理のほくそ笑いに ファシストの影過ぎりぬ

我が我がの大合唱 政権もはや地に落ち沈みぬ

末期を呈すと予言にあり 今ただ中を行くが如し


【近詠】(2011.07.13)

筑紫野空高く 万緑の中に家並立つ

万緑の中 吸う息吐く息あらたまりゆく

歩いて来た道を見下ろす 息一つ深く吸い

施餓鬼というは 諸々の霊を供養するらん

経誦し舞う僧ら激し 霊かかりしかと

経誦し木魚打つ僧の顔首筋に 汗沸き流る

菩提樹花が実になり 人の足はたと絶ゆ

詩を評する難解な説明に たじたじとなる

枝揺れる気配あり 蛇涼しき葉下を泳ぎゆく

拙作への厳しい評 WEBにあり首肯する



【近詠】(2011.06.29)

西日高くあり 大宰府古道を風に吹かれゆく

用水路に微けき音あり 水草分け清水流るる

観世音寺戒壇院の杜 西日の中静まりおり

菩提樹花過ぎたるらし たわわに実を下げて

シャラの花ひそかに咲けり 売り家の庭に

都楼址の風 トウカエデの葉柔らかに揺らす

夜更けに地震あり 熊本なれば近し

総理まさに奢れるごと振る舞う 天下人かと

総理の目に国民も国もなし 絶対者とありや

信なき総理 その地位が空白の歴史描きおり



【近詠】(2011.06.17)

萼紫陽花の一群 オフィスの谷間に涼を呼ぶ

梅雨本番となりぬ 紫陽花しとど濡れそぼりて

菩提樹咲くを見上ぐ 訪ね来たりし二三人

カワセミと目が合いぬ 一メートルの距離にて 

帰省したれど 気まずきままに戻り来たりぬ

話は単純なり 世の中心はいずこにありやと

母老いぬ されど言い募る我が性なれば

激しく降りしぶく 草取りさえなし得ずに

連絡船の客少なし 十と数人のみなる

この海峡を渡ること 後幾度なるやらん



【近詠】(2011.06.01)

海峡に風吹く 五月の光を煌めかせ 

連絡船海峡を横断す 操舵室には女性船長

噴水に光を集め 五月の風子らに向かい吹く

レトロ館に入る 深紅の絨毯爪先で踏み

唐戸市場半ば閉店 台風過ぎし日にあれば

みすゞが芙美子が歩いた街 波光る海峡

海峡を見下ろす神社 維新の幕開けにもなり

行き交う船舶 色とりどりに海に映ゆ

海峡が太平洋にも続くか 米国船らし

ファインダーが見えぬほど 海の煌めき強し



【近詠】(2011.05.03)

黄砂激しく降る 灰色の雲棚引くごとし

黄砂の中咳く 苦い煙を吸い込みしごと

地震竜巻荒るる 世界は荒海の船に似たる

血濃ければ憎しみ深まる 小説なれどさなり

不幸というに直面す 老境にかかりてまた

ままならぬ不幸 幼きときに骨身に染みしが

人が人を憎む 間近に知るほどにかなしき

義母の息遣いを感じ 遺稿を打ち込む

活字に蘇る 義母の喜びし一日のこと

絵を描き旅を巡り 若き日のこと



【近詠】(2011.04.29)

青空を背に藤棚瑞々し 香り高く花開く

つつじ群れ咲く 新緑匂へる登山口に

新緑まぶし くぐり上れば渓流となる

全山新緑となる 鶯二三羽日がな歌いおり

亡き義母の原稿出でくる 春の日に

光のシャワーくぐり 新緑の山に入る

コンビニ弁当で 新緑のベンチにくつろぐ

韓国語飛び交う 参道をのぼりくだれる

大震災ゆえに人淋し 参道まばらなる

本殿に向かう少女 なに長く願うらん



【近詠】(2011.04.16)

草毟るとき 蝶きて羊歯の歯にとまり動かず

病める蝶か 羽根広げたまま震えおり

白草の茎柔けれど 深き根はあなどり難し

混み合う枝を刈り落としつつ 草毟る

モチの葉パラパラ落ちきて 袋一つに余る

腰伸ばし息つく 終わりなど見えはせぬ  

垣根の向こうを人行きぬ 赤き色目に残し

隣地にも老婆しゃがみおり はかゆかぬらし 

老婆に老婆がもの言う 甲高き声のみあり

袋三つとなる頃 はや夕暮れ迫りくる



【近詠】(2011.04.15)

レベル七となる 打つ手打つ手甲斐なきが如し

放射性物質汚染 魔が魔を呼び起こす連鎖

土が海が空が 魔の手に掴みとられたるか

想定外という言葉虚しく 空に流れ落つ

絶対安全と宣る 人の言葉の虚しさを知る

益するもののために隠匿する 悲しき性ぞ

レベル七の事故 世界を歴史を赤く染む

想定外では済まぬ 余震の激震なお続く

花咲けども 胸踊らぬ季節ただに移り行く

自販機論争 電力ありという傲慢さに萎ゆ



【近詠】(2011.03.31)

皆虚脱の中 原発今も放射能垂れ流しいる

禁断の扉開きしとき 核が世界を呑み始む

人が核を利用する? 悪魔に心奪われたるか

地震津波襲いきて 街を村を打ち壊しゆく

千年に一度の災いという 慰めにもならぬ

被災地の疲れ 悲しみ ことば失うのみ

支援の輪広がる まだこの国は終わらない

ボランティアのけなげさ 人の心を救う

下請けの原発作業員 極限の現場を支え持つ

被災地に仮設住宅建つ 一つの灯火かと慰む



【近詠】(2011.03.02)

サザンカ散り敷く 声なき通りに入りぬ

犬の声に弾かれる 路地曲がり入れば

インフルエンザに寝て 子の声くぐもる

強風に芯まで冷え 揺れ戻り来たれる

九度の熱が 職場の熱を思い起こすとう

母は悲し 風邪の子の元に飛びたしという

滋養剤を一便の速達で送る 子の母なり

三月に入り 木枯らし息吹き返したるか

出口は必ずあると叱咤し 日暮れおり

携帯という小器に 何を命じたりしや


【近詠】(2011.02.26)

日足伸びゆくに 南の国に大地震惨たり

この日この時に 大地震構えたりしか

自己研鑽の出立が 瓦礫に埋る予感ありや

燎原の火の如く 中東の政権倒れゆく

自由とは何 虐げらるることが世の常か  

人が人を支配する 統一という美名のもと

宗派が宗派を排す こは何故のシナリオか

愚かなる 愚かなる 似非宗教徘徊するか

宗教という術を操り 人が人を食らうか

目覚むべし 宗教と富権力は並び立たず



【近詠】(2011.02.20)

日向の温さを出て 日陰の冷えを知る二月

寒暖の差激し インフルエンザ猛威ふるう

インフルエンザ罹患 おちこちに聞く

南に噴火あり 鳥インフルエンザあり

宮崎受難続く 天孫降臨の地なるに

鳴動続くらし 灰夥しく降る村に

灰夥しく降りし村に 雨模様きざしたる

非難し来たる人 皆年老いてあり

収納ファイル求め 部屋を片付け風通す

昼の陽光温し 梅いっせいに花となる



【近詠】(2011.02.12)

雪降り積む 車輪の轍残したまま

雪の重さに ヤツデ腰から折れている

雪降り積みおり エジプトの政権倒るとう

粗食の美なるかと 歯科医歯を褒む

雪舞うなか 灯油配達車に手を挙ぐ

蝋梅の花長し この冷え続く故にか

都督府跡歩ききたる 一面の雪踏み

寒雷激し パソコン切り冊子読む

雲破裂したるか 寒雷突如真上で散る

南天の葉揺るる 風に雪に鳥の羽音に



【近詠】(2011.02.10)

あきらめるべし 選外なれば埒もなし

選外は線の外 淡々と出直すに如かず

評価定まれば しきりの問答虚しと知る

当選作を言祝げ 人が人を選ぶこと故

運も不運も評価のうち 然り然りと思う

歯科医師やさし 院内清々しい匂い満つ

歩き方と磨き方を教える 老歯科医師なり

雲垂るる中 サザンカの赤光り咲く

雲の中上り行く 飛行機の音くぐもりて

猫のそりと動き出す 無人の家訪えば



【近詠】(2011.02.02)

歯痛ジンジンきて 思い千々に乱れる  

眉間に気怠さ浮かべ 風邪の口漱ぐ

茫々と思い果てなく 独り蹲り居るのみ

南に噴火あり 鳥ウィルス未だ止まぬに

南に北に訃続けり 立春を待たず

風止みやや日温むか 立春近し

文をもちては 武器にせざりと今一度誓う 

思い溢れ止まず 丹田に力入るるも

詫びねばならぬ この吾が放埒を

詫びていかになるや と夢の問答果てず



【近詠】(2011.01.26)

雲間に空の青垣間見ゆ 冬寒の暮れ

風止み猫のそりと歩む 路地の曲がりに

雲海綿菓子のごと 眼下に湧き起こり 

修学旅行の一団の希望乗せ 東京へ

神楽坂を歩く 古きも新しきもゆかし

ほうじ茶の匂い香ばし 神楽坂に来たる

路地裏のドア開けば 洒脱の空間広がる

宰府の冷え 地の底から生まれ来る

千三百年の古都 森閑と暮れなずむ

一日パソコンに向かう ありがたきこと



【近詠】(2011.01.25)

授賞式という舞台に 我も立ちいる

広く賞をという趣旨に 慰めらるる

真中に立たねば と思うは人情なり

こうやって一歩を上るも よしと思う

挑戦という一文字のみ 心に期する

次なるステップ いかように探るか

路地から路地の神楽坂 幾度巡りしか

東京の日射し オーバーを脱がしむ

雲間から暗き博多湾見ゆ 泥の海かと思う

戻り来たれば 福岡空港の冷え厳しき



【近詠】(2011.01.21)

蝋梅一枝仄かに匂う 内科医院待合室

明日東京に発つ 荷造り幾度も点検し

旅行支度メモから 出張資料の項削る

無職と書くこと未だ慣れず 定年なれど

どろりと寒い雲に覆われ 一月過ぎゆく

トンキンキンと 金槌の音に朝始まる

雀ともの言うという鍼師 一人にあれば

早や金曜日となりぬ 薄日すら射さずして

筆はかどるやと 医師今日も聞きくる

南天の葉さわさわと泳ぐ 寒風の中



【近詠】(2011.01.20)

鍼終え背筋伸び 大根いただき戻る

鍼師の指 魔法のようにコリを流す

人間関係がストレスの元らし 鍼師言う

同人誌はマスタベーション と作家吠ゆる

同人誌的甘さの世界 と一刀両断さる

努力を誇るな 努力は最低の要件なれば

頂点を極めるべし 他に言うことなし

負けて笑いおる場合か 立て血へど吐き

やるしかない 藪も花も畑も蹴散らして

メジロきて遊べる 酷寒の切り岸に



【近詠】(2011.01.19)

メジロこぼれ来て 侘助の枝に揺るる

雲下りきたりて 豊満山三日見えざり

芥川賞決定すと 見事に一面飾る

一族皆文学者という 見事なる系譜

百姓の子の 文書くは遊び人と疎まれ

疎まれしこと 今朝も夢に出でくる

田畑荒らさず墓守れ と知らせくる

旅行読書など遊興なりと 文にあり

西に向かい歩ける 底冷えの道を直に

読みたき本ふと浮かびくる 起き抜けに


【近詠】(2011.01.14)

電線吹き曝され 川縁の道に凍てつく 

雨戸激しく鳴らし 寒風吹きすさぶ

朝刊に雪積み 濡れしを持ちきたる

虫歯痛み始める 底冷えの朝に

吹き降りのなか センター試験始まる

夜半の凍えに覚め 一日頭めぐらず

布団ごと締めくる 痛き冷気に覚む

大根の葉の一枚一枚に 霜白く降る

庭の石に 雪と霜ざらざらと積む

凛と蝋梅立つ 霜降り積む宰府の庭



【近詠】(2011.01.07)

降る雪の中から 新年が転げ出てきた

霧、雷、雪舞い 卯の年変幻の貌を見せ

素心蝋梅 素通りしてきた花であったよ

立ち止まる 雪を受け儚げに咲く蝋梅に

次々にメジロきたりて 侘助微笑む

メジロきゅんと鳴き 会釈して去る

風雪に向かい 白鷺低く歩める川原

吹雪となり 花の芽バラバラと揺るる

底冷えの道行く 人も車も白い息吐き

黄昏れて冷えくる 川底に光る物あり



【近詠】(2011.01.01)

わずかに初日さしくる 社の森に

詣でる人と 階段の途中で挨拶する

鎮守静まる 北風吹き抜ける板間

風舞い激し 森ゴウと揺れ止まず

評は評なり 生むことを可とすれば

高き山にのぼりてみたし 仰ぐ天空

足が痛し指が痛しと 母塞ぎいるとう

負けず嫌いの母 弱音を吐く初春

さありなんさありなん 骨折の後

大寒波が痛みを戻す 大腿骨骨折



【近詠】(2010.12.31)

雪舞う中 今年もあと半日となる

雪舞いの中 自転車で戻りくる

四王寺も豊満山も 雪に埋もれゆく

慚愧の思いあり 雪乱れ降る

降り積む雪 人の声遠くにあり

よい作品を書くのみと 壁にもの言う

壁の向こうに あるのかもしれない

心経を唱えること 習いになりし

神仏に祈る こと安らかなれと

時間の歩み いずこへどう進むらん



【近詠】(2010.12.29)

トラブル多き年 ぎしぎしと過ぎゆく

住まぬ家 足元から冷えのぼりくる 

無人となりし家 板底からカンと冷ゆ

わがままは吾 故郷捨てきたりて

眠られぬ夜あり 故郷のこと

疎遠に過ぎ 電話する手が躊躇う

我が短気なる性癖 直らずにあり

文芸は遊びというか さはさなれど

文芸が武器となりゆく 心を射抜くとき

文芸の徒となり五十年 なにに狂える



【近詠】(2010.12.22)

老いも若きも 職なしに沈む

職なきは 人間失格の託宣に似る

吹き抜ける風 冥界に誘うごとき音

訃が続く 盛夏過ぎゆくとともに

諍いを持ち込み来たる 葬の場に

蕭然と別るる 重き石抱え

職なきに起因し 苛立てる

四次通過したる名を 幾度も眺め入る

確実に波来たること それと覚ゆ

波一気に上れ 今がそのときなれば



【近詠】(2010.12.10)

終局に向かう気配あり 日足のぶ

誰も責めず 重きを自ら担う人

人というかく弱きもの ただ慰む  

信じるということば かく強きものなり

傷付け合う人と人との 中に立ち

困ったらいつでもどうぞ と言える人

胃カメラ画像凝視する 糜爛あり

待合所を離れ 一人廊下に佇む 

名前呼ばれ 廊下隅から検査室に入る 

検査日近づけば 病らしくなりくる



【近詠】(2010.12.05)

国分寺の甍 小春日和に煌めく

礎石を広く余し 国分寺角に建つ

四王寺の稜線 国分寺の甍を抱く

掃き清めし庭に 魂魄も憩うらん

一番星指す 母と子がいて

柔らかい指が 星空に伸びゆく

夜空高し いつか師走に入りぬ

ヒ素を食い 宇宙生命生きるらし

億という時間の旅か かの星雲まで

過ぎゆきし時間 宙の何処に住める



【近詠】(2010.11.28)

ならぬ日はならぬ ちぐはぐのまま終ゆ

なにがなしに気怠く 横たわるも憂し

職場を離れ八月 時は無為に過ぎゆくか

映画のみ観て 過ぎゆく一日

イロハ紅葉の朱 空に咲き乱る

紅葉苔に落ち 秋日暮れゆく

国境というは 何を分けるか

国境を巡る鬩ぎ合い 銃撃に及ぶ

武力を誇ること 何を守らんとする 

国境線に緊張走る 秋の深まりの中



【近詠】(2010.11.18)

冬日続く 筑紫の山々に靄下りきたり

下校時はや昏し 自転車北風に向かい下る 

紅葉散り敷く庭を掃く 古き寺人

礎石の片隅に建つ 筑紫国分寺 

落葉の国分寺を巡り 冷えわたる

宗派選ばずという納骨堂 棟を分け建つ 

狭き道広き道 八方から寺に向かう

住む人なきや 塀の内に秋草伸ぶ

この高台に住むと 手付けまでうちしか 

山茶花の蕾膨らむ 新しい町に入る 


【近詠】(2010.11.12)

久方ぶりに鍼師を訪う 足のしびれに

ゆるやかに鳶舞う かくありたしと見る

地デジテレビついたと 母喜べるらし

黄砂覆いくる 秋空曇れるごと

寄贈誌に心奪われ 夜更けるまで読む

木々の紅葉進む 庭に降り立つ

詩の佳作伝えくる ハガキにて

なかなかに賞なり難し 平穏というべき

同人誌作家という 肩書きはありしか

六十なれども心根は二十という 不思議



【近詠】(2010.11.07)

空天に駈けのぼる 十一月晴天 

都心に憩う 奇跡のような場所を得て

ブランド街の ただ中に奇跡の場所あり

台風の中 賞状をいただき戻り来る

すばらしき栄誉と思う 地味な賞なれど

メジャーな賞が メジャーな賞呼ぶ習い 

飛行機の軋み止まず 台風去れども

太宰府晴天 十一月の古道を歩く

コスモス繚乱の中を出れば 宰府近し

祖霊殿を訪ねる 社の杜の奥に



【近詠】(2010.11.01)

国境をめぐる緊迫あり 南に北に

海域に国境あり 島国にあれば

国境の海に台風攻めくる 幾度も 

大陸のデモ止まず 国境をめぐり

内閣の無為無策 権力闘争に暮るる

仕分けという権力が 理屈を強弁す

仕分けの名を借り 己を削りいる

緊迫感なき気風を醸す 現政権

台風一過ならず 冬に入りたるか

佇めば鴨泳ぎくる 外堀通り



【近詠】(2010.10.23)

無人の庭に はびこりし秋草を毟る 

伸び放題の竹の葉を ざくざくと切る

伐り倒した栗の株から 芽が競い出る

柿実らぬ秋となり 夏あまりに暑ければ 

虫に穴穿たれ 大根の葉伸びる術なし 

初冬というに 藪蚊湧き群れ飛べる

秋日中一人 外科病院の待合いに座る

帽子の下ガーゼを張り 病院を出る

無意識の動きが 思わぬ怪我を呼べり

その程度で済んだことを 感謝する



【近詠】(2010.10.14)

ノーベル賞受賞者が 世界と競う意気語る

有り余る気力あれば 世界と競うべし

ナンバーワンを目指す 意気に首肯する

並み外れた楽観主義 よき指針なり

小さくまとまらず 大きく的を射よ

ボーイズビーアンビシャス 真理なり

躍り出よ世界に 神と握手するために

神の設計図の 一端を読み解くロマン

今こそ大志を抱き 皆故郷を出でよ

今日の今の吾が 全ての時を刻む



【近詠】(2010.10.11)

大根間引きすれば バッタ襲いくる

ノーベル賞が 難問を投げる人の秋

ノーベル賞に 悲喜交々があるやもしれぬ

訃をめぐる幾多の思い 秋空のごとく

大往生というべきか いわざるべきか

めぐりゆく四季 今年も秋に逢えり

夜長に思う 激しい悲しみのあり

がばりと目覚め 夢の悲しさに息吐く

作品に甲乙 どうすればつけられる

結局迷妄の果てに 一つを選びき



【近詠】(2010.09.29)

観世音寺はいずこと 道を問わるる

白萩さわさわと揺れ 古都の道暮れゆく

降り出した雨に 曼珠沙華洗われて立つ

萩の寺を訪いし四五人 徐に傘開く

古都の草叢にすだく虫  遠く近くに誘う

満月の真下を 細い川流れくる

名月を水に映して 萩の寺眠る

満月というに 訃が重なり届く

大正昭和平成を見し眼 硬く閉ざされ

母は悲しき 死しても微笑みてあり



【近詠】(2010.09.26)

秋めいてきた朝 訃が重なり届く

真夏日二月に及べば 秋来たらぬかと思いし

大根の芽真直に伸ぶ 秋の日に

バッタの親子が 大根の葉に群れ来る

虫の声足元にありて 線路亘る

ナガサキの本 今むさぼり読む

佐賀から長崎へ入れば 今も険しき気配漂う

秋祭らし 鉦鳴らし長閑に道ゆく

どんかん祭という 鉦太鼓の音雅びに

道沿いの軒端に提灯を出し 祭の列を待つ
 


【近詠】(2010.09.22)

ナガサキがある 原爆資料館ここに

全景が真空地帯に ヒト競い空に上る

黒焦げの死体に 魂なおも留まる

一秒もいらぬ 街もヒトも気配さえ消す

宇宙資源のビッグバン この街を襲う

殺戮兵器 なお何を殺せば気が済むのか

核には核という構図 ヒト狂えるか

天を怖れぬか ヒト高き高き塔を目指す

裁きの気配見ゆ そこにもここにも

瘧のように震え 原爆資料館を出る



【近詠】(2010.09.19)

西南海に台風あり 蒸し風呂の如き夕

散歩道に出れば 足高く高く人歩く

背中に汗背負い 顎突き出し戻りくる

猫のっそりと通る 垂れ込めた空の下

絶壁を登り下りきたる 主婦の顔もち

岩場は緊張の極みらし 笑い語る人

山に来て見ゆることありと 主婦にして

編集作業進む 殊の外良好

明日は長崎に行かん 原爆資料が呼ぶ吾を

すべきこと一つだけ与えよ 吾の如きにも



【近詠】(2010.09.18)

過ちは繰り返さぬ  と碑文ただに乾きいる

これでも人間か と無言で迫りくる

背中も手の皮もぼろぼろに垂れ 立つ影あり

ぞろぞろとぞろぞろと 長崎から運ばれてきた

長崎が燃える夜 ただ静かであったという対岸

大村湾が血の色に燃えた日 忘れ得ぬと母いう 

原爆句集 三十年の埃払い読む

爆死証明の句に ただ口を噤む

思い出したくない傷に 触れられるを拒む

知られたくないと 異郷に隠れ住む



【近詠】(2010.09.08)

台風通過 びしゃりと泥濘跳ね飛ばし

炎天を遮断し 台風悠然と海上をゆく

台風ゆけば 秋蝉ほろほろと鳴き始む

締切を延ばせ と難題のみで電話切る

ルールはルール プレーはこれに拠るべし

なにがなしに悲し 暑き九月なれど

打たれ強くあらねばという 思いはあれど

深い谷底にいるやもしれぬ 鏡見る

文で攻めぬ ということ忘るべからず

チャレンジすべきこと 今年もかなわず



【近詠】(2010.09.01)

憂きこと重なり起こる 残暑厳しき中

詩文は詩文 いわずもがななり

勝手な文書く と言われてきたりし

見栄体裁のこと知らず 我が性なり

被害者が加害者になる 人の世なれば

蝉の声途絶え 炎天果てなく続く

虫の声聞かず 二百十日なれど

地デジテレビ買う 制度の変わり目に

アナログからデジタルへ 世は皆靡きゆく

デジタル溢れ 人は己の内に籠もる



【近詠】(2010.08.21)

炎熱の天地 紺一色に染まる

猛暑直下 庭木煮え滾り音上げをり

道路の熱が 身内に這いのぼりくる

歩くことままならず 平行感覚変

アスファルト道 熱足元に纏い来る

酷暑の池 鯉鰓蓋で忙しげに喘ぐ

高校球児の汗 炎熱を冷ます涼

剛球猛打 一球に賭ける熱闘魂

敗れて泣く どう繋がりゆくのか

頂点に立つ 沖縄の思い言い尽くせぬ



【近詠】(2010.08.11)

夏台風珍しいコースを 辿り来る

炎熱をしばし緩めて 台風下

台風の凪の間盗み 懸賞投函する

栗の木伐るとき 幹瘧のごと震う

幹に鋸歯当て 栗の青葉見上げる

栗のイガ落ちて嵩なす 伐採中

金銀の鯉群れ集う 台風下

新畳苔吹く 無人にあれば

伐採除草清掃 盆目前に片付きし

歎異抄読み かの十七の日に戻る



【近詠】(2010.08.06)

百歳越えしは 所在未確認の故という

我が国の暗部かもしれぬ 老人虐待

親の気儘に 子の生命風に吹かるる

子の手邪険に引く 若い母あり

若い母の我が儘という さはさなれど

無人の家の庭木 根元より伐らる

慈しみ育てきし栗木 伐倒さる 

炎天下 庭木伐られて青い香吐く

炎暑の剪定作業 遅々と進まず

作業終え風に吹かるる 南風に



【近詠】(2010.07.28)

黒く長い蛇動かず 炎暑の川原に

幼い蛇が 炎熱の道を急ぎ横切る

蝉生まれ出ずるとき 青い羽縮ませ

蝉生まる 豆柘植の葉を鷲掴みいて

無人の家 畳青い苔吹きいる

思考の体系了解す 明け方の夢なり

全て了解すれど 夢の中身は表せず

疑念沸騰する 吾一人居て

やさしい思いに慰む 吾一人なれど

なるようになればよい 一人なれば



【近詠】(2010.07.21)

炎天咆哮す 汗とどめる術なし 

万歩計怯む 炎天翳ることなければ

七千歩を刻む 体火照りのぼせいて

木陰に入れば 木陰なりの風あり

机に向かう 全身の熱感やまず

汗滲む 活字を追うのみなれど

蝉鳴かぬ間に 夏休み来たる

夏休みの子ら 一斉に公園を出発す

夏休みとなり 道路閑として伸ぶ

中元はもういらぬと 八十歳の仲人



【近詠】(2010.07.19)

梅雨明けが 炎天を連れ挨拶来たる

肌焦がされぬよう 炎天下草毟る

水の事故あちこちに聞く 炎天下

御笠川の水音 つつましい音色となり

水の濁り澄み始め 金鯉銀鯉数尾あり

余るほどの水浴び 新芽炎熱に煮ゆ

入道雲となる 空青く澄みわたり

病院への鉄板 たたら踏み見舞う

帰りたし とひたすら訴える回復棟

検査果てなく続く 苛立ち募る顔並べ



【近詠】(2010.07.15)

奈落へ落ちゆく雨 深夜音なく

抜け落ちる雨 夜の底から

また雨来る気配 一陣の風騒がせ

新芽伸び放題に打たれる 白雨来て

衛星放送受信不能 雷雲寄せ来る

ことばの不実が 票を動かす

不実に不実を重ねる ことば軽し 

雨の国政選挙 ねじれにねじれる

タコの予言に 魔球揺れ落ちる

PKという定め マジにしらける



【近詠】(2010.07.07)

職を辞し三月 現実をもろに見る

論理無用 人まざまざと暮らしている

バーゲンに人群れる 新しき風景

ためつすがめつ値を見る 主婦逞しき

日溜まりに草毟る 週日なれど

勤務の夢見ることなし 三月過ぎれば

二十五時間も二十六時間もあれかし 今

突如日射しきて 雲吹き払う

束の間の晴れやもしれず 背伸びする

窓開け放ち深呼吸する 梅雨晴れ間



【近詠】(2010.06.26)

百三歳児という翁 世界を飛び結ぶ

百歳を越え 花の人生開くという 

数々の辛苦折り畳み 翁笑い舞う

ユーモアこそが大事と 百三歳児翁

なし得ぬことなしと 児のごとき翁

棒体操 軽々と足をくぐらす百歳児翁

すっと立ち 翁向日葵のごとく笑む

折り紙に戯れる翁 児の心持ち

一口三十回噛むことが 若さの秘訣と

万雷の拍手の中 翁の笑顔童児なり

※f地三郎先生講演会(2010.6.17)より


【近詠】(2010.06.15)

古都鎌倉に 今日この刻の風涼し

鶴岡八幡仰ぐ 倒れし大銀杏の株陰に

鎌倉を歩く 空港より急き来たりて

路地奥に枝折り戸見ゆる 古都の道

北鎌倉を発てば 新緑窓に流れ去る

禅寺の山門めざす 階段剛にして直

路地をすれ違う 神楽坂マップ手に

席を待つ 路地の列の長さ乱さずに

皇居周回送終え 歓声あげ人群るる

政権揺れいる 重要警護の域示す



【近詠】(2010.06.04)

九州自然道への路標 木下闇へと誘う

筑紫連山 五重六重の襞をなし

雨あがりの連山現る 雲間から

登りくれば ゲリラ雨下りし跡新し

しんしんと尾根から冷ゆる 雨のあと

鳥鳴き犬鳴く 里山の昼

段々の田を開き 鶯心地よく聞く

音を立て暗渠流るる 田起こせば

蝮の頭潰され 車道に動きおり

モミジの青葉引き寄せ 水白し



【近詠】(2010.05.31)

一つ一つをつぶし 事案を繋げゆく

点と点とが繋がり 風景朧に見え始む

情と念を埋め この地上の風景となるか 

この一画に込められし 大長編物語 

五月ゆく 台風の如く荒れ狂いつつ

五月の日射す 新しい緑葉と薫風の中

嵐くぐりきたれども 体軽きが救いなり

すべてよき経験と思えば よけれども

揚羽蝶となり 伝え来んとしたのやも

念珠弾け散る 一切を解き放つごと



【近詠】(2010.05.28)

浅ましきことなり 相続にからむ言いがかり

好意が敵意を生み出すという 不思議あり

四十年前のうやむやが 手痛い仇となり

相続がなければ 表にならざりしことやも

四十年の住居が 価値なきものとなる

楔のごとき三角点が 非情の路標となり

三角点めぐり 三戸が悲鳴あげる

三角点めぐり 堂々巡りの二週間

被害者が加害者になること 話には聞けども

少し嬉しき便りあり 深呼吸一つする



【近詠】(2010.05.22)

境界が火種になる ヒト浅ましき

次の次元に移りゆくこと 思い至らぬか

自説を主張し 老いさらばえゆくヒト

理論ばかりで 勝敗を決するという不思議

作品の評や感想をめぐる 哀しい攻防

海にたゆたう それでよいではないか

息を吐き肩の力を抜き 作品となる

より良い作品を求める もの言わずして

ヒトいかにアル 眼耳鼻舌身意声香味触法

青葉の輝り 障子の裏側を照らす


【近詠】(2010.05.10)

東空に虹 行く手に僥倖待ちてあるか

色数えいる間に 東空の虹消えすぼむ 

草毟る 無人の家の窓々明け放し 

毟る草から 日向の匂い青く立ちのぼる 

職なき吾 日中の売店に氷食いおり

定食屋にいる 一時はとうに過ぎたれど

仕事の夢追いかけくる 今朝の起きがけに

神経よろしくなしと 隣町に降り立つ

ゴウゴウと車列流れる 歩道に男歩く

レコード聞きつつ ベストセラー書読む



【近詠】(2010.04.29)

坂道を七千歩歩く 歩数計鳴らし

一万歩は至難なり 籠もれる身には

車高速に疾駆す 歩道を揺らし

黄砂降る中 マスク人が行き交う

朝に夕に人歩く 高齢者専用歩道となり

いかにもと仕分けする ことのみ是なるか

政権揺れ躍る 基地埋立案に

政権はテレビゲームか 既成ソフトの

誰も彼も影虚ろなり 主役見えずして

二世三世が見えるもの 見えぬもの


【近詠】(2010.04.21)

書斎に住む習いとなり 新芽伸ぶ

新芽伸ぶ様 しみじみと見る

雨止まず 草ふくぶくと伸ぶ

未明に起き 朝刊受けを覗く吾となり

本の嵩ばかり増す 積みおきしのみの

もう組織には入れぬと 夢で言い募る

難題に直面する これも夢であった

さしたることなし ありがたきなり

他愛ない話に暮れる これも一日

金色の鯉あり 細き流れに



【近詠】(2010.04.08)

なんであったかと問う 口がある

ではなかったと答える 口がある

春日中挨拶すれば 口開く

人群れて口光り合う 春日中

郵便受けがコトンと鳴る 春の午後 

嬉しい知らせあり 数行なれど

草を毟る 深く深く根張りしを

春のうららの中 草毟る吾となり

根を詰めぬでもよし 職なき吾は

春の日暮れゆく 草いきれの中



【近詠】(2010.04.03)

職なき身となり 昼間の街中を歩く

昼間の通りを 初めて訪う街の景色と見る

肩に強いハリあり 風邪か年度末の疲れか

職なき身は レースの途中棄権者に似たるか

あれもこれもやりたしと 焦がれていたが

桜の下一人歩く あてどもなく

夜桜の下 着ぶくれて歩く四人五人

キンカンの実たわわに輝る 無人の庭に

草の伸びはげし 人なき庭となれば

柿の芽萌え出いる 淡々しい緑の房が



【近詠】(2010.03.22)

花の下ゆく ベビーカーに光乗せ

雨風の激しさ去り 花ほころび咲く

白いトンネルとなる 花の道々

空に花咲く 青地に白ペイント流し

歌流れくる 桜寿ぎ

行き交う人 誰も彼も花の詩人になり

カメラチカチカ光らせ 花の下くる 

川浚いし底に 鯉二三尾きたる

浚われし川に 鴨恐る恐る近付く 

木を払い草を抜き 川底年度末工事中



【近詠】(2010.03.14)

鳩たちもノスタルチックに 春の宵 

なにがなしに哀し 弥生の野山朧にて

霞深いまま暮れゆく 鳩電線にいて

桜花芽吹かせんと 薫風誘いくる

遊歩道を仰ぐ 今まさに花の芽弾けんとす 

寒暖の交代急 来たる季節と去る季節と

キンカンの実を 鳥来て突く日足伸び

横綱が引退した大相撲に 意地を見る

大関の意地 出場記録に勝利記録に湧く

大関の気迫 立会い脳震盪に圧倒する


【近詠】(2010.03.03)

巨大地震襲う 南に北に西に東に

瓦礫と化す 文明の一ページが

一瞬の悲劇 というはあまりに惨

上へ上へと手を伸ばす 命を求め

自爆テロ止まず 地震襲いしときにも

静まれ鎮まれと たれか宣らぬか

ねじれねじれて 人間転げ落ちゆく

美の祭典と惨劇が 共存している

行く末は誰も知らぬ 宇宙船地球号

あるがままにあれと 扁額にあり



【近詠】(2010.02.26)

一斉に芽吹く気配す 岸辺のあたり

家鴨も鳩も川原に憩う 水温き朝

水面光れる川べりを 風に向かいゆく

暖かい日となる 入試の初日

入試日といえば ホッカイロであった

川底に重機が入り 年度末工事開始

フィギュアの女王めぐり 固唾を呑む

美としなやかさに 軍配あがりしが

トップに立つや立たぬで 人は決まらず 

挑み続ける決意よし 心のメダルなり



【近詠】(2010.02.20)

紅梅満開 メジロ来て啄む

紅梅咲きキンカン熟れ 冬日やさし

日をゆるりと浴び 椿の蕾膨れゆく

冬好日なれど 内科医院に出でしのみ

年度末の疲れか 首筋に鈍い痛みあり

冬季五輪 矢のように礫のように走りくる

瞬時に踏切り 羽持つもののように飛ぶ

千分の一秒を競う 競技に魔物棲む

空中に舞い 氷の谷に舞い落ちる 

カーリングというは 知能競技と観る



【近詠】(2010.02.08)

立春という名のみの寒さ 電車待つ

陽光射している川面から 蒸気のぼれる 

白い小鳥きて 苔を啄む寒の朝

春一番かと思う風に 夜道に吹かれる

生暖かい風起き 夜半哮り狂える 

生温い風きたれば マフラーを解く

歯ブラシ替えてみる ゲンかつぎとも

注意日との占い とりたてて何もなし   

とりたてて何もなかりし 六十年

世界一を目指すと 若い教授のブログ読む



【近詠】(2010.02.02)

氷雨に濡れ 年金の相談に出向く

蒸れるような暖房の中 年金の話聞く

汗みずくになり出ずれば 氷雨叩きくる

方向見えぬ雨の道々 思案やまず

高架下に出る 夜道を逆に歩ききたるか

春近しと思えど 背中透きくる寒さあり

同人誌と自費出版の違い もろに見ゆる日

ねばならぬ という主張はあえてせざりしが

書を贈るというは あさましきことなるか

書を贈りしことが 不興を招きたるらし



【近詠】(2010.01.24)

一気に十度のマイナスの中 印刷所に着く 

寒気を忘れ 汗滴らせいる発送作業

詩集と句集の発送なる 四時間の作業経て

ホームページに使われ 睡眠削るほかなし

表紙一瞥しただけで 買い込む古書店にて

古書店に繁く通う 出会いの楽しさに

新書並ぶ店舗には立てず 息苦しさに

新書見れば 墓場かと思う癖抜けず

新芽膨らみおり 北風唸りゆく川べり

電車ふくらみつつ進む 小さきカーブを



【近詠】(2010.01.17)

カキーンと音が伸びゆく 冬日快晴

冬日快晴 山茶花赤く楽しげに咲く

国立博物館西日受け輝る 全館のガラス

仏教展 宗派の縁起に力込め

仏教という 根本いずこにかあるやらん

参道に餅食う パリパリの焼き加減よし

三が日過ぎれば 参道穏やかに人行き交う

連歌屋という ゆかしき地名に立ち止まる

思い切り息を吸い 思い切り大空に吐く

灯油巡回サービスに 手を挙げ合図す



【近詠】(2010.01.13)

大寒波襲来 筑紫野白世界に明けゆく

靴雪にとられ 交差点危うく踏み止まる

新雪を選り歩く 踏みしめる音よろし

傘畳み 川べりを北風に向かいゆく

雪低く舞う 地面より生まれきたるごと

川原に雪吹き寄せられる 橋の下

雪に鉄道が空港が麻痺する 南国ゆえ

高速バス走れず 欠勤の連絡鳴り続く

漁船転覆という報あれど 近づけぬという

北米に大地震の報 瓦礫の絵映す



【近詠】(2010.01.07)

寒波襲来 山も海も街も眠らせ

ふいに現れた夜空 星ギラリと光る

川沿いの道を 虎落りの音に向かいゆく

北風に向かい 般若心経唱えゆく

停電となり 校内に人一人なきごとし

雲低ければ 停電の校内闇のごとし

停電にて パソコンも電話もなき職場

風邪流行りいる 冬空停滞しあれば

猫の目と合う 胃カメラ著変なしと 

うどんの温もり 店出ればはや冷めゆく



【近詠】(2010.01.01)

冷えわたる底から 元旦生まれ来る

新春の気が 空に山に屋根に満つ

賀状受く 温もりの束の厚きなり

露地をゆく 産土神社への初詣 

午後に日射しくる 通りに安堵あり

紅白歌合戦の余韻 今も冷めやらず

無人となりし家に 六人が集う元日

いつも寄り添いきし顔 一人欠く

料理を囲む 皆一つずつ歳重ね

空の星白く凍る 元旦の夜道を戻る






索  引



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