俳句


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日記的に書いたもので、推敲が十分ではありません。お見苦しい点は、御容赦願います。



【近詠】(2009.12.31)

雪舞い風騒ぎ 大晦日暮れゆく

侘助の白 ゴウと鳴る風に吹かれいる

空暗きから雪舞う 大晦日の屋根屋根に

葉蘭揺れ止まず 雪を葉に凍らせ

雲速く流るる 年越しに急かれ

大掃除終え 新聞隅々にまで目を通す

呼吸通わせ 全身を弛ませる

車出入り激し 年の暮れの買い物なれば

こうやって年を見送る あたふたと

一年が過ぎゆく なにはともあれ



【近詠】(2009.12.30)

注連飾りつけ 台からすとんと降りくる

台降りるとき やさしい風吹ききたる

拭き清めれば 築三十年も新しき

静けさを得て はるかなる思いに耽る

習わぬ経読む その意味深きにたじろぐ

驚きなり 空という宇宙観深し

傍らにあれど 読むことなかりし経本

空き家となりし実家にも 餅飾りす

新しき ドラマの構想など思いいる

社会と繋がることに意を用いた 一年



【近詠】(2009.12.29)

大掃除する 窓開け放ち冬日入れ

年末の大掃除 三十年来の手順あり

窓拭きはたき しかと今年の垢落とす

雑巾汚るる 今年が在りし証なり

在職時には 大晦日恒例であった大掃除

拭きながら 今年は多難であったと思う

多難の中から 多く得たるを謝す

郵便受け 良き便り来たれと拭き上ぐる

門灯磨けば 白き明かりが倍となる

表札外し 表を裏を幾度もすすぎ拭く



【近詠】(2009.12.24)

冬至過ぎ 一センチほど日脚伸ぶ

冷えきたる 夜の定まる二時三時

朝の気配なし 四時のトイレより戻る

長き夜を眠り足りずに 枕抱く

クリスマス イブの街には踏み入れず

サンタクロース来ず 今年も凡に過ぐ

加護あればこそ 衣に食に住に悩むなし

凡に過ぐことが幸いなると さはされど

文芸の徒は ときに天の邪鬼になり騒ぐ

芥川賞直木賞 あるところにはあるらしき



【近詠】(2009.12.23)

賀状投函する 一年の務めの半ば終え

一年の長さを実感する 年であった

生み出すもの失うもの 相半ばなり

冬日射しくる 薄い日なれども

日本海気候福岡 曇天荒天常なれば

小京都太宰府 明け方の寒冴えわたる

広告ゆえの賑わい 衣料店に熱気あり

デフレとはいえど 安さはありがたきなり

百円の寿司みな 鮮度高く味よし

老夫婦肩寄せ 百円寿司に憩う


【近詠】(2009.12.17)

大腿骨骨折 芯に響く痛さだという

面会に笑顔少なしと 妹知らせくる

風鳴り始む 寒波山間から寄せきたる

マスク離さず 保温には効果あり

突風に霧 めまぐるしく天気変動する

遅れてきた電車 霧の中から現る

マイク放送喧し ダイヤ混乱中

詩集に句集 原稿一山をなす

一字のために行きつ戻りつ 句集校正

仕事ラッシュなり 二億円の詰めなれば



【近詠】(2009.12.12)


手術終了 顔の色艶も良好にて

待合室で 笑い声などあげたれど

全ての手は尽くし 後は当人の運のみと

外科病棟の空気 明るきがよし

見舞う客も 笑みつつ話す外科病棟

看護師らも 緩やかな島ことばにて

トイレも部屋も新し 島の病院なれど

病院全体を 島の鷹揚さが包む

最終の船に間に合う 手術を見舞い

父祖の地に癒さるる ことを願いつ



【近詠】(2009.12.6)

玄界灘荒るれば 魔界の扉口開く

荒るる灘 虎落りの息を吐きやまず

波飛沫が空から被さりくる 中進み

春一番来たるごと荒れ 冬の灘

強風の吹きさらす海 魚飛ばず

次々と次々と 波湧き起こり

憂い声なれど母 細かに説明す

転倒して一時間 親子通りかかりしと

芯まで冷え 救急車に乗りし

高熱が去れば 手術となるらし

骨折の足 ベッドに結わえ付けられ

足の隙間寒しと 声わずかに震え



【近詠】(2009.12.3)

不快募る仕事ならば キリをつけねばと思う

岩のような重しが いつも頭上にある

耐えられぬでもなし と思い巡らし

仕事であればこそ 完璧に果たしたし

甘えならぬかと 内なる声もあり

責任の所在なし これが苦の種となる

なるがままになる と鷹揚に構えるべし

白き鷺と灰色の鷺 離れて見合う

初秋の川面 鴨王国の如く集う

青空に青葉散る 柿の葉に似たれど



【近詠】(2009.12.1)

干し柿吊してあり 入院中と聞きし軒に

離れ犬円描き走る 鈴リンリン鳴らし

川面が鏡のように凪いでいて 霧浅く

微熱を押し エクセル計算する一日

実に細かい作業が 時間勤務に与えられ

今日の仕事は覚悟すべし 電車に浅く掛ける

実に思い足を引き 駅にまで来たるが

鴨の泳ぎ流れるごと涼し 十二月なれど

紅葉日に日に朱を増す 朝の出がけに

今日の一日に感謝 同じ道を戻り来る 



【近詠】(2009.11.30)

蟋蟀飛んだ 石畳からキチキチキチと

虫競い鳴く 都府楼跡歩けば

虫の声止み 猫のそりと現る

まん丸の月 雲の間に逃げ込む

少し晴れてきた気分に 足早まる 

ヒコバエ伸び出す 実らぬと知れるや

今日出すつもりだった辞表 懐にあり

辞表もなにも 目の回る一日であった

詩句集の打ち合わせ終え 芯引き締まる

受け身のみの気分が いずこかへ飛ぶ


【近詠】(2009.11.29)

風邪這いのぼりきて 背中にとまっている

鬱いだままの一日 世を儚むまで

昨日までのことが 嘘かと思える

曇天の下 悲しいことのみ思い出す

ひとり涙流れくる 知らぬ間に

戒壇院の庭 池に紅葉の朱を映す

紅葉晴れやかに装える 山里に

風に紅葉揺れ 里日の光に満つ

全山紅葉の道 嵯峨野人群れゆく

京都の朱の道 人人人に覆われぬ


【近詠】(2009.11.26)

今朝方の夢 煤のような雲が胸を覆う

胸を圧す雲の重さ 重力極まれるほど

煤雲が足元から這いのぼりくる 夢の中

母倒る との報あり勤務中に

転倒らしという報続き 胸撫で下ろす 

今朝の夢は暗示かもしれぬと 息を吐く

何気ない仕草が 己を晒しいる

何気ない言葉により 己を計られる

短い詩書いてみる 戯れに

ある阿呆ある阿呆と呟き 己を観る



【近詠】(2009.11.19)

霙吹き降る脇道を抜け 傘ぱさぱさ打つ

ズボンも靴も濡れ 冷たさを職場に運ぶ

窓にザラザラと打ちかかる雨 霙かとも

霧晴れゆくらし 川の欄干現れくる

痩せた水量の川 鴨群れなしている

仕事行き詰まりあり 上司にすがる

京都雨となるらし 寺送りの日は

妙心寺に憩いたしと 叔母の遺言なれば

家絶える最後の勤め 全て果たし逝く

呼ばれたしと願いきたりしが 叶うのか


【近詠】(2009.11.14)

山頂に霧かかりいて 雷走る

雨風荒るる 季節確実に寒に向かいいる

濡れそぼり靴を脱ぐとき 家の温み覚ゆ

一枚一枚と黄葉落ち 空が広がる

寒風に身を縮めいる 山紅葉花

日が射してきた 露溜めたままの垣根に

よく伸びた大根葉に 最後の追肥する

槇や柿の根元にも 労いの肥料撒く

雲動き始め 家々の屋根に光り射す

寧日文書く 猫一匹庭にいて



【近詠】(2009.11.7)

二十五度の気温戻る 紅葉照れ笑う

落ち葉掃く 額に汗光らせ

隣家の引っ越し 十一月吉日に

引っ越しの部屋に カーテン残され

秋日明るく 内科待合い室に射す

川清掃する人 スタッフという腕章付け

ポリ容器ビニール 川原に積まれ

ホームページ転送ならず 深夜作業す

単純な変更を パソコン忽せにせず

一向に動かぬ画面を 一日見やる



【近詠】(2009.11.1)

音なく雨降り 十一月来たる

急激に気温下がり 紅葉色なす

生真面目な電器士に 家全般相談す

解体か空き家維持か 悩み深まる

三十数年の居 もて余す羽目に

広く小高い住居が 不自由を産む 

狭い平屋をと 勧められしかど

地を上げし住居 段差が障壁になる

気まずく別れきし職場 明日は月曜

なるようになる 誰も先見えぬゆえ



【近詠】(2009.10.31)

四十九日の法要 七人のみで行う

家絶ゆるという 節目になれり

曲折あれど 一つ一つが晴れゆく

見事な生き様であったと 今に思う

家のため人のために 八十年があり

人のためにのみ生き 静かに去りぬ

人柄を偲び座果てぬ 七人なれど

読経の間 蝋燭ものいいたげに揺るる

自ら喧伝せざり人 できぬことなり

人柄のままを 写真が刻みいる



【近詠】(2009.10.30)

ドラフト開始 札持つ手高く上がる

相手の胸の内読み合い 指名する

破顔一笑 意中の球団へ

複雑な表情で 会見に臨む

選ばれるという仕組み 功罪半ば

選ばれざり 無言の顔がもの言う

この一割も名をなさぬ という世界

大根葉伸ぶ 根株は見えねど

今回の誌 評の中身の渋きこと

発表することに意義あり されど

南京櫨の朱 くぐり教室に急ぐ

秋日風なく 南京櫨の朱定まる

刈田となり 猫のっそりといる

風なきに 柿葉つるりと落つ

はらりと散る 気配に振り返る

柿の葉 柿色というより赤強し

機がのぼりゆく 月を指し

犬駆け抜けし 露地に雨降る

生涯現役にてと 同人誌にうたい

発表の場として 同人誌を継ぐ


【近詠】(2009.10.28)

鷺己が姿に見入る 浅瀬にて

飛び立ちて鷺鋭く鳴く 猫のごと

奇抜は御法度 人の背丈に並ぶべし

仕事すればするほど 疎まるるあり

笑って話すも 妬みの種になるらし

書くことから始めねば 芸ならず

一日の終わりに 十句詠むべし

よくも悪くも 詠むことから始む

日々の呟きが 万巻をなすという

胸にふと浮かぶを 腕にまかせる



【近詠】(2009.10.27)

マスクの顔々 街中俯いて歩く

マスクの奥の表情見えず ただ静まる

新型インフル 電車をバスを襲う

学級閉鎖続けば いつ学校開くらん

咳すれば いっせいに目が光りくる

子を看護するという 母の眉険し

若き母なれど 眉根に疲れ濃く

一夜の雨に 木犀金の粉ふるい

浅瀬に一羽の小鳥いて 秋冷ゆる

リメイクの家あり 線路沿いにて



【近詠】(2009.10.26)

金木犀甘く匂いくる 露地に入れば

寄れど匂わず 金木犀ふくよかに立つ

古刹の塀から流れくる 金木犀満開

東へ東へと台風向かう 異変なるや

九州本土上陸なし 今年の台風は何

プリンタ新し 試し刷りの色爽かに

フィギュアスケート 女王悩める

ジャンプに怯える 十九歳の横顔

スピードスケート 新星生まると

月高く 南天にオリオンのぼる


【近詠】(2009.10.24)

産地直送回転寿司 新規オープン

秋日中 新店舗光りつつ現わる

祝開店のドア 花に溢れて

百円均一 鰤も鯛も鮪も鯖も

抹茶に汁物 人気の品あり

無人の家となり 日々窓開け放つ

位牌と骨箱の間の 灯りは消さず

本山送りへの間あり 無人の家となる

心は既に空にあり と思えれど

猫大人しく座す 無人の玄関に



【近詠】(2009.10.19)

疲れの後に風邪くる とはいえど

起き抜けの辛さに 何度も首振る

シャツに袖通し 秋日の中歩けども

ふっとめり込みそうな気配に 佇む

変哲もない用務に 気持動かず

印刷の途中で プリンタ文字吐かず

五六年なるか 余所見には新しきが

印刷の途中で 電機屋に走る

プリンタ新し 掠れる字などなし

スキャナ 新鮮な色合いに華やぐ



【近詠】(2009.10.14)

紅葉狩り計画す 久方ぶりのこと

京都の紅葉 十年見ぬままに

晴天続く 秋の気にふっと息吐く

秋日和 乙女らの唇光り合う

オオルリというか 川縁に歌うは

青が光るという オオルリを探しいる

三光鳥という名の 神の使いなるか

時間勤務終え 戸外明るきが嬉し

六十の手習い 会計事務一年となり

数字の列にとまどい 一年過ぐ



【近詠】(2009.10.12)

行方不明の眼鏡 草群に落ちてあり

空気清澄の朝 母の納骨す

骨箱に 父母が並びいて鐘一つ

七十年八十年を 箱一つに入れ

世話好きの父母 戒壇院に祀らる

訪い絶えぬ戒壇院に 父母住まう

誌の発行待つ 一時の晴れ間なるや

いのちを唱う 制服生徒ら清々し

微笑み唱う 男子と女子が順を追い

大根葉伸ぶ バッタの親子肩に乗せ



【近詠】(2009.10.11)

草毟る 無人となりし家の庭

跡途絶え 法要に寄る顔皆淋し

法要の読経 ときどきに細くなり

和尚を交え 蟠りやや溶けゆく

良いように進展す 秋日嬉しき

窓を開け襖を開き 風を日を入れ

過ぎし日の かの嬌声いずこに

三人四人と見送りし 座敷静まる

四十年という時 軒端に通いしか

振り返れば 時のいたずらに短し



【近詠】(2009.10.10)

柿の葉の照り 秋空に花咲くごと 

柿葉朱のまま 短日暮れゆく

釣瓶落としの車窓 稲田揺れゆく

朝夕の冷え 風邪抜ける気配なし

地震が風が 洋上を席巻する

貧しい村が 浚われゆくのか

実績なき大統領 平和賞は誉れなるか

終末の夢 幾たびも見し吾

夜更けに覚め 悲しい思いに沈む

蚊の音が 前を後ろを曲芸飛行



【近詠】(2009.10.3)

風邪しつこく沈みいて 雨あがる

雨あがり 深呼吸する槇の緑にて

窓開け放ち風通しいる 仏の間

光射す座敷に話す 仏間なれば

名月の疾駆す うろこ雲を分け

名月あらわるるとき 新しき

漆黒の雲を抜け 月生まれ出ず

名月あらわれ また沈みゆく雲に

祖母に麺送りし 到着の便りあり

秋日さやかに ほっかりと気分良し



【近詠】(2009.10.1)

去来する思いあり 眠られず

些細なこと些細なことと 繰り返す

うち沈んでいたときの 情けなきこと

情けないほど塞ぐ 季節ではあれど

光のシャワー浴び 心晴るるか

塞がりしとき 樹間を無心に歩く

高き木に吸い取られゆく 憂き気分

構内往来する 若き彼らとどう違う

強きの気が湧き出ず 土壇場には

ヤクザより強かなるは ヤクザなるか

身を切らせて骨を切ってきた 我が身

侮辱には抹殺で返してきた 吾しが

空も気も高揚する 十月となりし

鬱陶しき問答 よせよせ十月に

鯉泳ぎ家鴨啄む 川面清々し 



【近詠】(2009.9.22)

秋月に名前を刻み 逝きし人

秋月院という 音の悲しさのみ残し

秋風の中 億土とやらに旅立ちぬ

逝きし人の 話尽きなく夜更くる 

居間に目覚まし鳴る 主の遺志のまま

気配ありしか 風も流れぬに炎揺れ  

いざさらばと 思い切るごと呟きぬ

今という時を限りに みまかりぬ

今という時に新たに 生まるという

美しき世界に行きし とは聞けど



【近詠】(2009.9.12)

風邪か疲れか 神経剥き出しとなる

眠れぬ夜 怯えるものなしと思えど

看病の妻たち 交互に枕辺に寄り添う

四晩も五晩も寄り添う 妻逞しき

干潮の時を過ぎ 枕辺を離るるという

強がりをいいし吾 役立たずあり

風邪を引き込み 点滴にすがる

怖れることなきに 体が反応する

いつか来たれる時 思うはそのこと

冷たい雨となる 残暑の谷間に

頂に雲溜まりいる 九月の朝

携帯いつ鳴らんかと 思いは晴れず



【近詠】(2009.9.6)


このようにして 皆逝きしかと

八十歳も二十歳も一期 今朝の露

呼吸音のみなれど 部屋中に気配あり

頬に打ち傷あり 瘡蓋となる

行く先を急ぐか 急変すという

医師の説明に ただ頷くのみ

秋の日高く 病室明るく輝らす

よく頑張ったねと 皆がねぎらう

微かに喉元が足が 礼をいう

ありがとうと 喉元が足がふるえ

爪桜色にして 肌柔く白く透く

足指の細く長きが 少女のよう


【近詠】(2009.9.1)

笑うあり 天なるか地なるか

揺るるあり 天なるか地なるか

沈むあり 天なるか地なるか

泣かぬため 泣くという法もあり

政権交代 派手に票出る

官僚を崩すという 一手は二手は

若き代議士 古きは屑というか

マスコミ走る 自作自演かとも

かの劇場を讃えしは 誰ぞかし

カメラ向けるは タレントなるか



【近詠】(2009.8.30)

大根撒く 白く乾ける土に

朱の大根の種 指先からこぼす

土に落ちた種 朱の色を競い合う

畝々に種あり 朱の列となり

種蒔くとき 猫もっそりよぎりゆく

暑気に当たるか 胸おどるという

安静にとのみ 往診の医師

八十路を越え 衰えなどなきに 

選挙となる 政権揺らぐか

栄枯盛衰を 一票が演出するか



【近詠】(2009.8.26)

秋の空となる 飛行機雲下り

歩み出で 秋の気に抱かれる

鯉浅瀬に三尾 秋空の下

雲なき朝の空 赤い機のぼりゆく

まがわずに季節来たる それは秋

雨風地震のみ 夏去りゆく

新しきホームページ ひ弱きままに

神経休まらず 仕事閑散たれど

伐採の庭 明けるを待たず見渡す

広い空間となる 剪定の跡



【近詠】(2009.8.22)

トラブル二つ 鏡に映る顔ゆがむ

上手くいき過ぎるとき 足元を見よと

怒りいしこと その奥は何ぞ

怒気あれば 空気直ぐに流れず

年甲斐もない とも思えぬ危うさ

怒らずと 思い定めしはいつぞ

思わぬように走る 人の証なるか

何を守り何に生きる 今日もまた

ホームページ宙に浮く さなれど

パソコンに遊ばれ 更けゆく夜



【近詠】(2009.8.16)

土に出で土に戻る 老農カラリと笑う

土を嗅ぐという 老婆揺らぎゆく

墓洗う老婆の腰 低きまま

母老いし 八十の坂ゆらりのぼりゆく

住居跡 夏草被う藪の中

住居跡とりつく島なし 草の丈

住み食い育ちし跡 草の底にあり

掘り上げし墓跡 木下闇に沈む

故郷という 草の彼方に捨てしもの 

戻せぬか 若き父母若き友に会いたし



【近詠】(2009.8.12)

震度六襲いくる 列島割れぬかと

プレートの気紛れの上に 生老病死 

地震台風大雨 次に何くればすむ

炎昼の日はなし 二千九年夏

盂蘭盆会 雨降り蒸され始まりぬ

香焚き鉦打ち 生前の名を呼べる

生前と今を分かつは いかなるや

父母の写真 何を思いて微笑める

提灯の光舞う 異空間に誘うごと

線香の煙ゆるりゆるり 部屋に満つ



【近詠】(2009.8.7)

盆近し 雨雨雨に降り降らる

梅雨明け三日 はや立秋となる

猛暑湿風舞えど 立秋という

湿風の中 降り来る機影水脈を引き

木酢を撒く 黴食う部屋の隅々に

部屋湿り 黴の食う音鳴り止まず

夏蝉 ひっそりと椎の洞に埋まる

淀みに金鯉浮く 腹を見せ

鴨水面をつと走る 足藻掻き

止まらぬ汗のまま 電車来る



【近詠】(2009.8.6)

オープンキャンパス だらりと暑い中

建物の角々 制服に囲まれ

熱風吹く オープンキャンパスの昼

古いキャンパスに 少女ら溢れ

原爆の日に誓いしこと 実践すべし

人と生まれ 人を殺す条理がありや

人を殺す条理ありという 何ゆえに

殺戮の歴史なり 人の世に住むは

定年というは 悲しき差別の入口か

五時には退室す 時間勤務にあれば



【近詠】(2009.7.31)

快復近しと 誌が取り持つ知らせなり

書評あれば 拾い読む吾になり

書評全てに 背を向けていた三十年

書き進む一字一行が かく難しきとは

この心意気で書きたし 初心に戻り

書くことの意を 新たに見付けたり

人間として書くべし 人間にあれば

喜び泣き歌う 人が人である所以

空疎な理屈 並べ奢りいし吾は

泣く人のために泣く 人である故



【近詠】(2009.7.26)

豪雨の大軍 至近距離から攻め来る

唸り上げ雨落つ 冷たき雨が

真直ぐに落ち 白く壁なす雨となり

音のない空 雨雲により落城す 

糸の如き雨 瞬く間に錐と化す

天神の道路 水湧けどその逃げ場なし

蝉鳴かず 冷たい雨に濡れている

鳴かぬまま 蝉落ち水に曳かれゆく

ヘリ低く飛ぶ 山崩れ跡巡れるか

救急車走り さらに激しい降りになる



【近詠】(2009.7.25)

豪雨となり 街全体が点滅する

三歩行けば 背中も足も濡れそぼる

道路冠水 地下に水躍り込む

瞬く間に膝頭までの水 湧ききたる

電車乗り場に 不安気な人人人

電車立ち往生する 橋の上

遮断機上がらず 怒声を雨の音が消す

駅間近にして 電車運行見合わせ

濁流走る 狂おしい音けたて

テロップ 禍々しい色で流れる



【近詠】(2009.7.20)

四囲に塞がる 湿度という重きもの

降り込められて一月 呼吸困難に喘ぐ

黴這い尽くす恐れに 昼寝覚め

しとしと降り続けば 息苦しさただ募る

除湿器という 働き者に委ねるのみ

蝉の声止み 雨しとどに降りしぶく

雨止めば 蝉の合唱遠山に始まる

蝉と雨棲み分けているらし 梅雨の日を

竜巻家々を破壊す 一夜の間に

夏山に死す 雨風に巻かれ凍てしという



【近詠】(2009.7.17)

不快指数極まる 纏わり湿る暑さゆえ

にわかにざわめく気配 雨来たる

一陣のスコール止めど 熱冷めず

蝉の声このごろ聞かず 雨きざす

街を濡らし線路を濡らし 雨止まず 

雨の中鴨の群れ滑空す 橋の下

地下鉄に籠もるけだるさ もの言わず

どんたく、山笠 雨呼ばぬはなしという

いつの間に 稲田広がる高架沿い

紫の朝顔涼し 廃屋の庭



【近詠】(2009.7.16)

汗乾かぬまま 窓辺の席に日射し受く

吹き降りとなり 信号一つ変わる間に

激しく降る 蒸し風呂のごとき部屋包み

雨叩きつけをれば 駅舎の庇に人群るる

束となり雨落つ 道路冠水池と化す

吹き降りの間も 駅の清掃続くらし

空梅雨と思い込みしは 故なきこと 

さるすべり空掴まんと 雨に伸ぶ

三十八度に迫ると 群馬館林の熱波

熱中症百人越えし 蝉時雨 



【近詠】(2009.7.13)

糸とんぼいて にわかに炎熱の兆しあり

糸とんぼ コンクリートの壁に羽を止め

躑躅の植え込みに眠れるか 糸とんぼ

クマ蝉遠くに鳴く つかの間の日射しきて

蒸し暑さ極まり 汗みずくの中目醒む

川面を蛇がゆく ぬらぬらと波に乗り

山笠飾り また見上げては汗を拭き

選挙曲がり角に来たる 風逆巻いて

人の世の習いか 出自と金と地位に従く

勝つも負けるも 悪代官の面相なれば



【近詠】(2009.7.10)

炎熱の瘴気を 客持ち来たる

蒸し風呂の湿り 通勤電車に籠もる

クーラー効かぬ   と走り込みし客

触れ合う背中を 汗まとわり濡らす

汗伝う腕や肘 やり場なきまま立つ

朝陽射す窓辺 皆の背中に湯気をたて

クーラーの冷え ふいに強まる

戸外の炎熱 クーラーに籠もる

曇りのち晴れ まだ蝉の声聞かず

山笠仰ぐ 粘り着く汗忘れ



【近詠】(2009.7.7)

南風強く 構内に砂塵舞い走る

若葉茂る構内 昼休み群れをなす

木造建物変わらず 百周年近しと

赤い屋根葺き替えたるか 二三か所

夏期休暇近し 交わす目と目が笑う

留学生屯す 七夕飾りに

夏日の芝生で 歌う組あり

ことば途切れる 旅客機降りゆく間

腹の接ぎ目見せ 旅客機降りゆく

三分毎に同じ姿形で 旅客機降りゆく



【近詠】(2009.7.6)

宗教にしかず と合評会荒るる

見ゆるものの他になしと 師言い募る 

見ゆるもの触るるもののみと さなれど

筋の通らぬ省略なりと 師を怒らしむ 

虚空にものあり 上にも下にも斜めにも

虚空にものいう 虚空に光りあれば

魂魄を見ざれば 見ゆるものなし

全てを委ねて眠る 十年になりしか

いつも守り賜うという 父祖の霊

師の亡骸に見えしとき 赤きもの走る



【近詠】(2009.7.3)

憂えても甲斐なきこと 憂えるは如何

己が胸に聞けば おおかたはわかること

他を責める前に 己が道を改むべし

いたずらに己を責む さらに悔い深まる

全ては真なり 良きこともさあらずことも

すべき時になす 基本中の基本

他と引き比べ 嘆くは愚の極みなり

全てを委ね 導きのままに流れよ

己が己に口出す 愚かを重ぬ

己を許せ他も許せ 導きなれば



【近詠】(2009.7.1)

篠つく雨直に降る 軒端動けず

傘広げ歩めば 芯まで濡れとおる

叩き付ける雨に 川轟き流れ 

川音に競うごと 水勢い流る

大揺れに揺れ 川広がり走る

川中の木々強かに立つ 柳なり

電車動けず キャンパス休講となる

電車もバスも人も 及び腰で進む

紫陽花清し 白雨したたかに受け

若葉茂れる中 はらりと黄葉散る



【近詠】(2009.6.30)

雨叩き付ける音激し 夜明け前

記録的雨量という トップニュースに

傘も靴も役立たず ただ歩くのみ

小降りとなるを待ち 出でしが

鴨走る 嵩増えし川に三四羽

鷺舞い飛べる 濁流となりし水の上

風雨強し 蓬髪乱し走り込む

扇風機回せる事務所 黴臭う

皆無口になり 窓打つ雨を見る

地震小刻みに発生す 雨を連れ



【近詠】(2009.6.26)

冊子礼状届く おや意外な指摘あり

書店の棚に並ぶ もはや届かぬ域に

巣立つ子を思うに似る 冊子棚にあり

どう広がりゆくか 流れに委ねるのみ

次号への思い馳す 書棚の前にて

夕刻から前線停滞すという 六月末

夜半の地震に驚く 震度三なれど

出会った家が 著名建築士の作という

子の声トーン上がる 住居は大事

激しく落ちしが いかに這い上がるか



【近詠】(2009.6.23)

鷺一羽しとどに濡れ 走る水辺に立つ

ペッドボトルが空き缶が 濁流に乗り

草水流に靡き わらわらと音をたて

土色の水躍り来 鉄砲水というべし  

風雨激し 道に動けぬ二、三人

天のバケツをぶちまけたるか 悪戯に

つかの間の静 異動間近に

新たなプロジェクトなるらし 整備急

貧富の差激し 研究室も

聖域なき改変 時のうねりか


【近詠】(2009.6.22)

本降りとなり 駅を出でしか 

傘を突き抜け 雨粒頬を濡らす

風雨激し 背中まで濡れそぼり

土砂降りとなる 川沿いの道

雨強ければ 川にわかに騒ぎたつ

寸刻の間に 道を濁流が呑む

パソコンの不具合に 終日付き合う

職場のパソコン 勝手が違うゆえ

昨日閉じた画面が 今朝は開かぬ

初期化すべきか このパソコンは



【近詠】(2009.6.21)

久しぶりの雨 傘濡らすほど

グッズを濡らさぬよう 発送準備へ

刷り上がった誌 透明のブルー清々し

明るいブルー地に 題字の赤鮮烈

真剣な眼差しで 表紙を開く

文字を追う 緊張のひととき

発送準備終え 印刷所を軽やかに出る

東京も雨らし 子の転居なるに

目白から神楽坂へ 転機期し

なにやら良きことあるやも 弾む声



【近詠】(2009.6.20)

子の転居決まり 雨あがるという

雨あがれば 気も晴れよかし

街に住む なれば芯から強くあれ

よい経験をした と思う己であれ

明日は良いことがある 祖母の口癖

強く思えばこそ 山も動くという 

若芽の桜並木を 人歌いゆく

しどけなく流れ広がる 飛行機雲

健康診断 講堂にいくつもの関作り

趣旨はいかにでも 健康診断問答あり



【近詠】(2009.6.14)

十七歳とあり 我が精神年齢は

運勢占いを見る 座興なれども

進歩なしとあり 一人首肯する 

梅雨入り宣言 難題を抱えし日に

蒸し暑さが纏わりつく 西日激し

おおいなる神出で 全てを導きたまえ

子の職続かず 厳しい背景あれど

企業という世界に いかに船出すべしか

人が人を厳しく裁く さはさりながら

報連相 組織に生きる秘訣にあれば
 


【近詠】(2009.6.8)

歳重ねるは 童に近付く証なり

老いを嘆くべからず 出口間近なり

人間というは 人である間のこと

人として その出会いの確率やいかに

奇跡かと思う 人に生まれしこと

怒れる我の哀しさ 大空を見上ぐ

空深く澄み やがて抱かれゆく

深呼吸し 胸の蟠りを吐き出す

大空に委ね 我はなきものになる

天上天中天下 光渦巻き走る


【近詠】(2009.6.6)

ブーゲンビリア 構内に熱く群生す

誌の稿持ち込む トラブルあれど

自作のみに拘るは 編集子に能わず

ボランティアなれというも 聞かれず

その賢しらの精神に 誰が打たれるや

離職というは 解雇ということらし

この寒き空に 職解かれ投げ出さる

今嘆くならば なぜ日々辛抱できぬ

人のせいにあらず 汝が蒔きしこと

これをチャンスと 思い得ぬのか



【近詠】(2009.6.4)

駅に向かい 萼紫陽花に迎えらる

急ぐ目に 萼紫陽花の静よろし

萼紫陽花 一群の青となり涼し

今朝もマスクの子に会う 踏切で

遮断機下ろし 停車止む気配なし

電車雨の鉄橋を渡る 音もなく 

昼顔線路沿いに咲く 藍紫に

シンビジウムの赤 梅雨の華かと

冤罪ということ DNAが明かす

十七年という 時をどう裁けるか



【近詠】(2009.6.3)

紫陽花清し 雲低けれど

紫陽花群れ立つ 家々の庭に

葉の潔さを思う 紫陽花見れば

思い出深き 紫陽花の候となり

紫陽花の葉 雨色に染まず

雨粒を溜め 虹の色新たなり

虹かかる 豊後高田あたりにて

窓打つ雨 電車郊外をゆく

滝水激し 雨あがれども

神域より出し水 澄みて流る



【近詠】(2009.6.2)

なにかが過ぎる気配す 六月今は

夜半になり 雨蛙激しく鳴き交わす

蛙の声止み クリーン車来たる 

今日怒ることなし 努めてみれば

定期買う 時間勤務あればこそ

責任軽き職なれど あなどりがたし

山笠始まるという 男衆には

祭りは神事かと 今知りしこと

インフルエンザのこと聞かず 報道いずこへ

大型倒産あり 世の陰りの中



【近詠】(2009.6.1)

神域に立ち ネガの如くに見透かされ

光のシャワー浴びたし 社殿にて

光浴び 真白くなりたし内も外も

真夏かと思う 光激しく照り返し

旅客機消息絶つと 臨時ニュースが

髭を剃る 起きがけの不機嫌癒えぬまま

肌弛みいる 鏡に六十の顔ありしが

十七の心に いざ戻ってはみたれども

木の花白し 雀来て啄む

古い靴捨てる 穴空きをれば


【近詠】(2009.5.30)

売場にマスクなし 皆頷き去る

マスク手洗いうがい 励行せよと

空気汚れたるか 人群れ合えば 

除菌といえる 強ければ人も棲めず

気持ち荒む朝 世界のニュースに

核実験ミサイル発射 世の陰り見ゆ

我が儘の論理通し 他の痛み知らず

人類冬に入る 国益のみ主張する世情

愛他精神 どこに消えしか   

愛他精神などと 一笑に付す論調あり



【近詠】(2009.5.29)

スタンドの旗 強風に巻かれ落つ

トタン剥ぎ 風なお怒り止まず

風に向かい 川べりを斜めにゆく

電車這い来たる 強風の中

携帯耳元で鳴る 満員電車

風雨激し 季節一気に戻る

求人率最低と トップニュースに

雇用なしという 世界のいずこも

高層ビルの間を 空風吹きゆく

新入社員 この鞭にいかに耐えいる



【近詠】(2009.5.24)

突如雨降りくる 日射しいて

濡れ通るほどに濡れ 玄関に走り入る

からりと雨あがり 新芽まぶしき

新芽さらさらと舞う 霧雨の中

なにやら涼し 五月の日の出前

訪なう者なし 風抜ける道

人を詰れば 同じ思いで詰られる

文芸の徒は 火の道をゆくか

明暗を分けし 我がストーリー中なれど

人物勝手に動く 魂あるがごとくに



【近詠】(2009.5.23)

パソコン設定す 五月の光受け

新しきパソコン 軽やかに息吹きあげ

静かに降る 五月の雨も乙にして

子らの声なし インフルエンザ拡大へ

異国の大統領自死 金が何を招くか

雑巾掛けする 五月の風の中

椿の新芽 濡れ縁の下から伸び出で

猫の声聞かず 一月になる

鼬かと 庭過ぎりしは

疾駆するものの影 目の内にあり



【近詠】(2009.5.16)

五月の雨霧のごと舞う 風の中

傘さし自転車こぐ 風を受け

木の花たわわに咲く 庁舎の庭に  

稜線低くおぼろに 五月萌ゆ

原稿の版組む 深夜となる

原稿督促す 吾編集子なれば

版組のこと考えている 夢にまで

感染者増えゆく インフルエンザ

停留という隔離す ウィルスなれば

新型インフルエンザ 世界震わす



【近詠】(2009.5.9)

おどろなり 新型インフルエンザ感染 

有るものは消えゆく といいしが

花咲き新芽伸ぶ 五月の風に

五月の風さやかに 芝そよぐ

昇る日射す フラッシュのごとく

夜明け前に起き 昇る日を待つ

日の出の勢い を身に付けるなく

ただに黙す 日の出前

遮光カーテンに 日の束燃ゆる

めぐり来る季節 正確なるに謝す


【近詠】(2009.5.5)

天気晴朗 編集作業トラブルあれど

今のこの時に謝す 誌の編集開始

新たなる展開に 打ち込めるは良し

疲れなし 原稿ただに読むには

誌を作る喜びに 知らず弾みて

原稿進めば ふつふつ気滾りくる 

窓開け放てば 新緑匂う書斎なり

もみじ葉裏より見上げ 書斎に憩う

はらはらともみじ葉翻る 書斎清し

原稿の奥の 見ぬ景色にひたる



【近詠】(2009.5.2)


新芽伸ぶ音 昼の里山 

赤いビロードのごと 新芽立ちいる

新芽の重なり 薫風を呼び合い 

新芽伸ぶ気配す 日の出前にも

新芽伸ぶ きらめく光の滴落つ

制服のぼりゆく 新芽の坂

女学生群れいる 楠の芽の下

女学生の笑顔弾ける 芝新し

予鈴鳴り 芝の構内森閑となる

押忍と押忍が交叉する 葉桜の道


【近詠】(2009.4.25)

時間勤務者となり 川べりをゆく

七羽の鴨 今朝も群れいる

安穏と立ち 通勤電車待つ

鈍行を待つ 書を読むため

日高く 川底を透き

影法師 一足毎に先にあり

十五の春に戻り 一度泣いてみたし 

占えば 十七歳のまま進化なしと

はるかな思いきざし 目を閉ず

平穏に謝す と鍼師がいう


【近詠】(2009.4.15)

子の転職なる ビルの三十数階に

音楽と美術のビル フロア心地よし

ビルの中庭 モニュメントに風

ビルの中庭に 心地よい風抜ける 

坂の店に憩う ドラマの舞台という

辻を入れば住宅街 出れば中華街

地下鉄の調べよし 議事堂を過ぐ

春霞の皇居 堀に菜の花涼し

内堀通り ジョギングの列切れず

堀の水眠る 半蔵門に立つ


【近詠】(2009.4.4)

夜来の雨 一重二重と花散らし

花散り敷く道 雨蕭然と穿ちゆく

就職進学 落花急きゆく春の朝

職なき春 花人知れず散りゆくのみ

雑草の如くあれ 職なき子らよ

コンクリートの隙間に 草の太き芽あり 

草の息吹熱く 地の内に燃ゆ

何かに急かされ 電車に乗りしが

やじろべえ 痛く傾いておらぬか

うねり高き春の海 導け広く遠く 



【近詠】(2009.3.29)

花満開の下 皆足早に行く寒さ

花愛でるには寒し マフラーの群

花満開の下 犬猫もそぞろ歩みいる

満開の花 突如風なく空に散る 

桜前線というべき 霞たなびく様は

職内定との報あり この土壇場に

職内定の報受け 腑抜けの如く立つ

大不況のなか 職得るという奇跡

四月一日付けという 急展開

今しばし待て というは欲なるか


【近詠】(2009.3.20)

木の芽赤く 風に吹かれいる

スンスンと 芽吹く気配す山の午後

里に犬鳴く 春山にいる

光る水流れくる 神域から

神域の水 音なく流れ谷に入る

風に吹かれ 山から一人下りくる

里庭に雪柳乱れ 降るごとく

茶店に憩う 山の気に胸満たし

茶に映る 緑葉の熱く甘きこと

山も里も暮れゆく 今の今 



【近詠】(2009.3.15)


昇る月を しげしげと見上げる

学校の屋上に月昇る 誰も見ず

ふいと浮かんだ月に 手を伸ばす

風船のように揺れ 月昇りゆく

満月を背負い 交差点歩みくる

誌の構成員 尋ねくるは何

声顰めるか 文芸誌ごときに

何に迷える 文芸誌ごときに

己が胸に問うべし 文芸誌のことなど

党利党略あらず 新しき誌は


【近詠】(2009.3.7)

関門次々あれど越えゆく ありがたきこと

子の転居あり 就活の厳しさの中

都心から郊外へ 心癒すにはよきこと

不況という声 ブラック企業産まぬか

無気力無秩序な世 いかに生きよという

良きも悪しきも マスコミ垂れ流しゆく

マスコミ いつから世の王になりしか

浮薄なマスコミ 底浅き川瀬に似る

マスコミ ブレーキ利かぬ車に似る

マスコミに使い捨てられるか 今日の王


【近詠】(2009.2.28)

新しい誌現実となるか 薄日射し

たかが文芸誌のこと それだけのこと

騙し騙されるもよし 誌あればこそ

文学論せず 現場作業に当たるのみ

現場作業こそが 創作の素なり

理屈もヘチマもなし 創出あるのみ

創出の術あれば 吾に与えたまえ 

引き返す術なし 火の道に入れば

一日ゆく 光駈ける速さにて

黄昏れて雨戸引く音 冬日過ぎゆく


【近詠】(2009.2.21)

酩酊という城に籠もりし 我が春は

酩酊の城に逃げ入る 蒼き我が影 

孤立無援を気取り 一人呑む居酒屋の隅

力のまま驀進するという 夢もありしか

酔うのみの 春いたずらに急ぎしは何

酔いの底にいるとき 痛いまでの雨

酔うて紛らせる何もなし 激しい自己嫌悪 

自己嫌悪抱き 下呂を吐くまで呑み

目覚めの空しさよ ただ宙を掻き

大言壮語 その馬鹿さ加減に酔う


【近詠】(2009.2.14)

吹かれいる子ら 春爛漫の顔をもち

吹く風の 強きがゆえに花白し

子を持つは 二重三重に思い馳す

乾いた咳 母には肺炎かと映る

長電話の果て 塞がる思いなお止まず

船を浮かべ島を浮かべて 海揺蕩う

水平線 三筋四筋の水脈を引き 

川温み 歌いて過ぎる土手の影

オーバーを脱がせ 二月の日高く輝る

南風の中 自転車疾駆すベル鳴らし


【近詠】(2009.2.11)

誌の発起書を出す がらんどうになり

発表の場所 それのみ守るという一所

レベル高き低き 判定不可なれば

レベル高き低きこと 己が胸に問うべし

勢い立つ意見 冷素麺に似る

独裁無用 それは政界のこと

熱くも冷たくもなし 我行くは

発表の場あれば ゆらゆらと流る

頑迷なれば 文書かぬが大事

生涯現役というは 文書くべし 


【近詠】(2009.2.7)

繋がりというテーマで 教授最終講義

物から宇宙空間まで どう繋がりゆくか

期を同じに 繋がりという趣旨の誌を発起す

繋がりて果てなし 我が宇宙観なれど

時間という繋がり これを往来できぬか

誌の発起書出し終えた途端 風邪襲いくる

眠られぬ床で 螺旋階段を上下する

始めもなく終わりもない時空 我はいずこに

上れども空果てず下れども地なし 夢の中

人が人を評価する 功罪半ばあり

血液型九星 なにをつなごうとするのか

DNAという仕組み 何処から来たるや

今この時に出会う いかなる確率のもとに

ほどよく生きほどよく死ぬ 常識なれど

国を賭け神を賭けて争う 大義というは


【近詠】(2009.2.1)

梅花ほころぶ 日溜まりの中

ふかふか蕾萌え 梅が枝餅匂う

インフルエンザ流行 両隣にマスクあり 

風邪の子眠れる 熱去りゆく気配に 

新しき誌の構想 荒々しく尋ねくる

振り出しに戻り よろよろと歩むべし

これからは真剣ぞ と己に斬り込む

ライフワークと定め 文の鬼と化す

この冬寒し 鳥来て枝に吹かるる

メジロ瞬時に去り 音なくまた来たる 


【近詠】(2009.1.25)

筑紫野の雪に 一条の光射す 

筑紫野に雪積む 真昼深々と

生垣曲がれるままに 雪降り積む

侘助の花弁 ひとひらほどのの雪抱き

車の轍跡 次々と雪が消しゆく

新たなる誌の構想 雪が呼び込み

雪の暮れ 荒城の月流れくる

蕭条というべき 川原に舞う雪は 

辻々に子らの声湧く 雪の朝

雪の朝 カメラとともに移動する

雪の深さを 電話で問いきたる

低く暗い空から 千の粉降る

枝々に雪載せ 槙木勢い立つ 

ドンと屋根震わせ 雪絶え間なく降る

雪の輝き 蛍火舞うに似る

蛍火舞う 新興住宅の屋並みに

カラリと門開け 雪の深さを見る

雪よ雪よ と言いつつ一日終ゆ


【近詠】(2009.1.16)

オカリナの音色 ふと耳の奥で鳴り

知らずメロディとなる 川の瀬音も

音符読む 六十の手習いなれど 

障子張り 部屋の空気を一新す

気持ちを込め 書いた文糊付ける

パソコンで書くこと 知らず習いとなり  

鳥七、八羽 晴天の空に舞い踊る

一月晴天 一ミリずつ暮れ落ちる

二十年に亘る誌 あっけない終刊

終刊となる 皆無言で去りゆくのみ


【近詠】(2009.1.8)

サラサラ水音して 川澄みとおる

水音の中 鷺一羽首傾け立つ

川辺を歩き電車待ち 一日始まる

規則正しい一日 ありがたきなり

歩みつつ祈る 風に日に

普通で十分 普通なるは奇跡かとも

ふと駅のメロディに 気を奪われている

リズムよく歩く 大切なこと

新しい誌の名を探す 一日終わる

現在の誌の名 改めて気に留む


【近詠】(2009.1.1)

新春来たる 梵鐘の余韻の中 

雪直ぐに降る 風も音もなき元旦 

泥濘をゆく 産土神社の鳥居下

産土神社に 鎮もる鋭気凛と立つ

柏手打ち 老農ら皆頭垂れ

野に条射す きよらの矢となりて

機影きらめきのぼる 新春の空

菊の香新し 新春の軒端下

オカリナ吹く 幾山河の歌

高く低く青く白く巡る 山河あり

鐘の音さらさら流れ 元旦暮るる

【近詠】(2008.12.21)

クリスマス発表会 カルチャアの華

オカリナ吹く 一人一人の音あり

花 写真 音楽 教室に緊張あり

緊張の極みに 花が華になる

よい年をの挨拶 真に響く歳となり

雨になる 自転車全力で漕ぐ

前屈みに餌を狙うか 鷺川面に立ち

北風の中 鴨群れ首すくめいる

寒空を雨がよぎる 今年は変

変の年極まり 右往左往している


【近詠】(2008.12.5)

紅葉震い落とし 雨斜交いに降る

川ゴウゴウと鳴り 雨移りゆく

天怒れるか 驟雨ただに降る

悲しい噂あり 氷雨となりゆく

笛を吹く 心ここにあらぬまま

乱れるは 吾故か邪気がなせるか

神域の写真 ネガの如く揺れ

神域の水清し 湧水掬えば 

全てを預かってもらい 神域を出る

橋を渡り 娑婆に戻り来る


【近詠】(2008.11.28)

東空の虹 僥倖を呼ぶという

特急の窓に虹見る 中津のあたり

双葉山の生誕地とあり 虹かかる

紅葉もろ手上げ 待ちいる

紅葉の八幡大社 光の粒舞う

紅葉散る 頭に肩に背に足に

社殿の朱 秋空の大海に浮かぶ

苔幾重にも積む 祓所とあり

だんご汁定食 同じ店を訪う

鴨足をかき みるみる川のぼる


【近詠】(2008.11.23)

柿葉ハラリ落ちくる 草毟る手に

藪蚊いずこに 小春日草毟る

南天の芽出ている 朽葉の下

庭手入れする 晴れて気分よし  

黄信号 運転士背筋立て待つ

ワイパー激しくまわし 嵐をよぎる

黄葉舞うキャンパス 人影なし

風激し 掲示板笛吹いている

風雪雨舞い 冬将軍到来

懐手する 北病棟への廊下


【近詠】(2008.11.19)

布団を貫く 底冷えとなる

川べりの北風 肌に針刺すごとし

北風激し 鴨首すくめ動かず

雪降りくる気配 足早に橋を渡る 

キャンパス 北風と落葉競い舞う

向かい風が吹き晒す 耳や鼻を

風邪の震えが 身内にきざす

日暮れが早い 冬そこまで来たる

ストーブ出し 灯油の高さを思う

オリオン高く しんしんと冷ゆ 


【近詠】(2008.11.14)

川面陽光に透き 鴨二つ三つ

秋の川浅く 朝日薄紅に浮かべ

足音軽く川べりをいく ランドセル

一点の櫨の朱 切岸に咲く 

熟柿となり 空青きまま

軒に柿吊し 耕耘機憩える   

大根葉茂る 秋日を囲い

鐘の音煙る里 熟柿枝垂れて

古刹への砂利道 鐘一つ鳴る 

一週間の勤務 されど勤務 


【近詠】(2008.11.12)

最終稿終え ズシリと重い荷下ろす

金色の朝日浴び 久しぶりに出勤す

11月の風 ハタハタと光を揺らし

南京ハゼの朱 構内を直ぐに繋ぐ

満天の星 オリオンここにあり

アンドロメダ座星雲指し 仰ぐ天頂

満月高く 空冷え冷えと澄む

月青く輝る 空高く澄めば

月明かりの中 影二つゆるゆるとゆく

母経過よろし 話声軽く

川面横切り 鴨低く飛ぶ


【近詠】(2008.11.7)

石蕗の花輝る 曇天なれど 

雲垂れし中 石蕗の花高く咲く

けだるい朝となる 夢に追われ

出勤の日近し 定期入れ探す

人間ドッグという 悪気に巻かれ

悪気の館出る 呼吸やや戻る  

検査疲れの中 冴えて眠れず

笛を吹きたし ドドソソララシ

腹式呼吸 忘れてしばし

明日は歩こう 希望をもとう


【近詠】(2008.11.3)

雲一つない秋空 透けゆく果て

山が透けて見える 秋空を掲げ

柿の葉陽を照り返し 稲刈る人 

水面に光るもの 秋の色なり

水の流れ ビロードの如やさし

水音なし 口笛ふと低く吹く

口笛は嬉し 水ただに流る

低いメロディが追う 水の流れを   

水音高くなる 岩めぐるとき

昨日が今日へ 石蕗に陽注ぐ


【近詠】(2008.10.31)

虚ろに翳りおもむろに照る秋日 ただ移りゆく

鐘の音さらさら流れ 夕日落ちゆく

決意するほかない ブランコぐっと突き出る

くるりと背中見せ 柳の下で分かれる 

男の一念 毫も振り返らず

駅の階段のぼり降りしのみ 男一人

果てしない不安 足裏に踏みしめ 

月を見ている 灯がひとつ消えゆく

鈍色の空 鳥列をなし渡りゆく

飛行機の音くぐもり 空寒い色に縮む


【近詠】(2008.10.29)

デモの列来る 秋風吹きさらす通りを

スローガン激しく唱え 街しばし足止め

警察官並び立つ 盾秋日に光る

主義主張あり 人荒々しく叫ぶ

病院への近道たどる 洗濯物下げ

身内の人来たれば と医師構えていたり

二人の若い医師 懸命に数値を示し説明する

廊下を風吹き抜けゆく そんな内容に息止む

患者母 変わらず笑みを湛えおり

あるがままにと 互いの目を見る


【近詠】(2008.10.27)

急に秋めく 玄界灘からの風 旗を巻き上げ

海風吹きさらす通り抜け 病棟に入る

八度の熱続くと 母笑い言う

傷口痛みあり 左肩につい視線ゆく

ペースぺーカー定着のため 左腕固定し動かず

弁には異常なしと 女医丁寧に説明す

待合い室 もの憂気な視線渦を巻く

誰も彼も無口で 幾度も足組み替える

電車コスモス畑を過ぐ 振り返り見る

病室の窓から コスモスの群生見ゆ


【近詠】(2008.10.24)

ペースメーカー手術完了と 若き女医

手術を終えし女医の長い指 手袋を脱ぐ

女医颯爽と説明を終え 風の如く去る

二時間の長さ極まるとき 手術終了となる

女医も看護師も一つの呼吸で 心地よく動く

親切、礼儀、協力という 病人のための病院

心通う医療という 理念に裏打ちされ

患者母見舞い人に気遣う 経過よしと

術後の問いに 母明るく応え

今日があるがままにあり 感謝のみ


【近詠】(2008.10.23)

元寇の島 蟹悲し気に潮吐く

海うねるごと 火矢攻め来たるかと

松籟聞けば 遠くに思い馳す癖となり

元軍の攻め来たるを 語りし教師

全島民二度全滅 と言い教師目を閉ず

抱擁の場ともなり 古戦場跡ゆえ

古戦場を秋日射し 男女動かず     

明日は手術 母カーテンのうちに目を閉じ

経過順調なれど 母微熱に目潤む

微熱の母に 姑息なもの言いをしたるか


【近詠】(2008.10.22)

空に高く 己を擲つ

叩かれた釘曲がり 空を笑うか

蟻が空を担ぎ 出てきた出てきた

鷺鋭く鳴き 空駈けのぼりゆく

空曇り 鳩いっせいに低くとぶ

秋雨の町 日暮れのごと音なし

入院に慣れし母 そつなきはよしか 

ペースメーカー入れるべしと 女医強く勧め

秋日ほかほか射しくる部屋で 母頷く 

カテーテル検査異常なし 一安堵する


【近詠】(2008.10.18)

秋日輝り 露地に棟打つ音

赤子抱き 三DKの施主晴れやかに立つ

秋空に棟上がりゆく 乳飲み子と見る

日溜まりの坪庭 木賊水に立つ 

坪庭の水音 鍼師の呼吸微かに通い

鍼 寸鉄のごと疼点を打つ

初老の鍼師の指 マジックかと思う

大根の葉の茂り 大空を束ね

猫があくびしている 日溜まりよろし

この一瞬刻みたし 息止めシャッター押す


【近詠】(2008.10.16)

女流作家の作秀逸と思う 秋の夜

控えめで奥深き人かと 一作が醸す

平明なことばが 諄々と説く

飾りも気負いもないことば 胸に迫る

日々の風景の中 深い淵ありという

何気ないことばを用い 書き出しは

一つ一つを重ね 山並みをなす

山並みの向こうに 豊穣の平原透く

平原の風 光孕みすべりゆく

それでよいのだと 頷き書を閉ず


【近詠】(2008.10.15)

ペースメーカー入れねばと 母の声弱し

大動脈弁閉鎖不全症 今も母の内にあり

気丈な母 ふと窓の外見る虚ろに

十五夜の月 卵のように生まれ出で

月出ずるとき 橋の欄干に人並ぶ

炯々と 十五夜天澄み渡る

山影の緑見ゆ 月鮮やかに舞えば

月のぼり 川辺の虫のシンフォニー

道一本明々と伸ぶ 月下なり

輝る月の下 疲れを背負い帰る男一人


【近詠】(2008.10.14)

秋日ゆるりと溜め コーヒータイム

柿の葉の煌めき 秋日透く

秋日優し オカリナ涼やかに招き

蟷螂とまがう ラカン槇の脇芽出で

蟋蟀跳ねてきた 机の下から棚の隅

おもむろに鳴き出した蟋蟀 部屋の中

白い影絵となり 秋の虫従いてくる

秋の虫高く低く歌う 暮れ残る原に

母の心臓の検査 著変なしという 

よい日であった 落日に禿頭垂れ


【近詠】(2008.10. 9)

松籟微かに 島の秋暮れゆく

松低く 入江淵のごとく蒼し

砂にのめり込む 砂の形象

断崖の石に咲いた 赤い花

暁方の石に満ちくる 潮の香強し

暁の潮 激しい意志を持つごとく

時空を今 さらさら星流れゆく

星流れゆき 島眠りに沈む

三十億光年という 一瞬あり

埋められぬ余白のような 秋の夜 


【近詠】(2008.10. 4)

遠い鳴りあり 地震来たるかと 

ズンと響く 震度一のテロップ流れ

東に昇り西に沈む 陽は今日も健康

蛇の抜け殻 今年初めての挨拶か

彼岸花群れ 姿なき虫キチキチと鳴く

白い花 彼岸花のうちに二三本     

マーケット開店 彼方から車列並び来る 

呼び込みの声よし 汗西日に光る

大根十円 声高に積み上げられ

主婦の強さよ 両手一杯に大根下げ


【近詠】(2008.10. 3)

コスモス揺れている 大空の真下

天上天下 コスモスの歌

空が口笛鳴らし コスモスの歌うたい

コスモスとcosmosの カオスの歌を

エンジェルがいて コスモス赤

振り返れば コスモスとエンジェルと

cosmosとコスモス 秋風を呼び

コスモス畑を舞い 風澄む空 

そよ風色に コスモス空にそよげば

コスモスの揺れ 恥じらう人のごと

秋風に 一輪のコスモスを流す

くるくる回り コスモス落ちゆく先

自転車が切る秋風 コスモスに吹かれ 


【近詠】(2008.9.30)

九月ゆく しののめに雨音走らせ

好きなオカリナ申し込む 朝に

コンドルのうた 秋空に高く鳴る

長い手紙書く 会わぬ人に

猫合図して通る 窓の下

コリがほぐれてきたと ふと思う

姿勢を正し トルストイなど読む

昼間のこの 宝石のような間よ

これからの作 ピチピチと跳ねだす

雨音 心地よく聞くはなぜ


【近詠】(2008.9.29)

雲逆巻き流る 台風来たるか

蜘蛛の糸 雨粒絡め撓むほど

蜘蛛の糸 はたはたはたと音をたて

蜂の群れ湧きたつごとくに 電線鳴る

古今の著読みたし 今切実に

読むことを 怠たりしままの五十年

覇気のない吾 今朝もあり

切り替えるという 今日こそは

父の墓に参る 性悪の吾なれど 

南無阿弥陀仏 すべてここにあるかと 


【近詠】(2008.9.27)

浪人す と覚悟を決め受診する

採血針 秋朝の刻研ぎ澄ます

血液踊り出る じっと見詰める

採血長し ふと目眩きざす

作品という怪物 己を襲う

作品の誇張を謝る 初めてのこと

重いこだわりを フェリーの揺れに委ね

行くほかはない道 青ざめつつ行く

励まされて帰る 考えざりしこと

検査終え 交差点に走り入る

夕焼け ほのかに赤く島影を照らし


【近詠】(2008.9.23)

大根間引きす 健康な根を引き剥がし

柿青いまま落つ 今朝の雨に 

出会いというは ミラクルかとも

猫も競うか 恋の行方を

自費出版 方々に思惑投げしのみ

自費出版 贈る勝手という罪あり

三夜眠れず 神経いたずらに張り詰め

雨蕭条と降る 吾が胸のうちに

書くという悲しい性 雨止まず

出口見えぬ塀のうちに 迷い込んだか


【近詠】(2008.9.20)

青空のもと 氷河際限なく解けゆくらし

天地荒れ 自爆テロ止むことなし

強きもの勝つは 人の世の常か

人が人を笑う あざとい理屈並べ 

乾坤一擲 肩に力入れ文書きしことあり

夜半に浮かぶこと およそ悲しき

釘を打ち線をめぐらし PC繋ぐ

玄関に線をめぐらし また家人の不興買う

阿呆と検索 阿呆は吾のことゆえ

二冊目の自費出版 徒労かとも


【近詠】(2008.9.18)

秋の蝶 はすかいに飛ぶ垣の上

裾に雲を這わせ 山頂鮮やかに立つ

川の面に散る雨 サギ静かに佇む

サギ鳴いて高く飛ぶことあり 夕暮れ

錦鯉憩うか 大夏草茂る川面に

ふと思いつき自転車に乗る 行先告げず

吉方位の日時に水汲み柏手を打つ

大学ランキングあるのか 先の読めぬ今も

南海を台風行くらし 電線笛のごと鳴る


【近詠】(2008.9.15)

かんからこんかんからこんと秋の虫すだく

虫の音高く 秋の川豊かに流れる

草を抜き枝を切る 彼岸前の家

大汗になる 草黒々と丈高く茂り

栗のいが 針となり草叢に潜む

落ち葉の下 栗金色に輝く

黒雲低く走り 台風西海上にあり

赤茶けた雲の色 台風来たるか

台風近し 猫露地に忍び入る 

事故の現場検証 黄昏の雨の中


【近詠】(2008.9.10)

神経を使うこと激し 同人誌の編集

電子情報の危うさ これがベストか

万年筆で書ける身でいたい と夢にみる

電話でも手紙でもない メールという危うさ 

いつも経費節約という題目が頭上にあり

油断のならぬ世になる 機器に囲まれ

断固PCは使わぬと 吾も主張してきた

PCを用うべしと 吾がいわねばならぬとは

一人で使う分には快適 電子情報

拡張性が危うし 電子情報の果て見えぬ


【近詠】(2008.9.9)

早朝人影少なし 胃カメラに行く

秋の気締まり 川べりを無言で歩く 

赤い機のぼりゆく 青一色の空に

のぼり詰めても機 青に染まらず

良い運勢だと 新聞には出ていた

改札口 ラッキーナンバーを選ぶ

名前が呼ばれ 次は吾かと

なんとか解放さる 自動ドアの音よろし  

トネリコの緑軽く 秋日に跳ねる

食欲なし あてなく地下街を歩く


【近詠】(2008.9.8)

天女が舞い降りるかもしれない好天

朱の屋根が朱に輝っている秋日和

ラカン槇の芽がやさしい日向にある

コンドルの歌 空涼やかに流れ

大根の双葉 犬の耳に似る

秋風 木々の葉に煌めき流れ

木々の葉明るく 入居者を迎え

ワープロがパソコンに 流転激し

パソコンに体よく使われ日終わる

背中のコリを揉みほぐして寝る


【近詠】(2008.9.7)

べたりとした雲 峰のあたりに湧く

何百首も書いた筈の ノートがない

啄木と万智に明け暮れた 歌だった

ノートなければ 作ればいいと慰む

淡い空のもと 法師蝉歌い始める

歌うことが 今生の証なのかもしれない

陽水の心もよう 手紙書きたし吾に

和正の歌 高い高い空駈けりゆく

ハーモニカ習いたしと 切に思う日

音符など知らず 口笛自由に吹きしか


【近詠】(2008.9.6)

机拭き椅子を整え 自由来たれる

出版の表紙を 明るい色調に変える

渓流を日が透いている 苔蒼きほど

青味泥の茂みに 若い鮒群れている

月を研ぎ澄まし 遠ざかりゆく雲

秋の月が渡り行く 薄雲の島

りんりんと漲る力も 流れる汗も

畑掘り種蒔く 猫がいて

猫ともの言う 白い帽子のままで 


【近詠】(2008.9.5)

秋風の涼しさに 口笛となり

葉蘭さらさら翻る 緑の風に 

心地よいメロディ 曲の名知らず  

大根芽吹く 朝露を分け

体の冷え心の冷えが 万病の元と

足湯二十分 サウナのごとく

ヨガという 忘れかけた呼吸を探す

職なき身の軽さを 深々と吸う

三校を終え 出版のこと定まる

窓開け 秋風と戯れる朝


【近詠】(2008.9.4)

漏斗雲というらし 竜巻の子は

長雨続く と予言者のごとくいい

豪雨が流す 家も思い出も

庭の隅に大根蒔く 雨の中

大根の畝叩き付け 慈雨となる

足の裏もみほぐす 肩の重さに

草叢からも床下からも 虫の声

ふと大合唱になっている 虫の声

大銀河流れ 虫鳴いている山の里

銀河まで届けよと 虫競い鳴く 


【近詠】(2008.9.2)

膝抱え眠っていた 幼子のように

目覚め また枕に沈む職なき我

嬉しい思い出探す 夏の終わりに

木々の芽涼し 驟雨のあと

自転車買い 戻ってきた風の中

万華鏡 散る花片と咲く花片と一閃

蟋蟀飛んだ 草叢の残像

星が瞬く 魂持つもののごとくに

カシオペア座 に戻りたしとなぜか思う

双眼鏡 アンドロメダ座星雲そこに


【近詠】(2008.9.1)

表札に蝉がとまっている 夕暮

むきになっていい募る 秋風の中

百科事典を繰る白い指 図書の午後

世紀を越え 歩いてきた友よ 友よ

井戸の底に 秋風棲むという古老

去りゆく夏 飛行雲しどけなく流れ

パンパンと手を打ち 夜店たけなわに

花火始まるらし 屋根の向こうに

空に躍り 大輪の花咲き流れ

空に残り カラリと消えていく涼し

よい陽が射してきた 蒼い空から

秋の蝶 フタフタ泳ぐ雨の中

総理辞任 やはり狐狸が棲むのか

狐狸たちいい募る 国民のためにと

逼塞感という病が 蔓延する

 
【近詠】(2008.8.31)

通り抜けた たちまち風となり

朝顔高く低く咲いている 廃坑の町

月を焼く炎が青い

指の間の石に指紋を探す

無人の駅に コンドルの歌流れている

あとずさりして歩いてみる 雨の中

狂女尿する 秋空に放歌する

荷物を捨てに来た筈の海峡

若い人達が遊びにゆく島になったか

生まれ出る子と死ぬ母が交差する朝

コスモス揺れている 大空の真下

カラコロと 秋が坂道歩いてきた

息をすれば落ちてしまう 切岸に立つ

山を下りてくる 山を背負って

柿の葉落ちた 空がストンと明るくなった

箸でつまんだ火を 闇に移す

東京 いつも見えない風が吹いている

谷に吸われる雨 音がない

クルリと背中を見せ 電車が閉まった

むかし論破した ことばが淋しい


【近詠】(2008.8.30)

してもらいたいよう他にしなさい 扁額をみる

ライフワークと定め キリシタン伝読む

停電復旧する 宙に火花散らし

頑張れよと 真剣な目が微笑む

負けん気強いという 悲しい性がいまも

きりがないことをぼやいている だけの酔い

全身にコリあり 鍼師つぶやくようにいう

弾けないギター 五十年捨てず


【近詠】(2008.8.28)

東雲の雷 音なく山肌に降る

飛行機 音だけとなり靄の中のぼりゆく

ゲリラ雨というらし 排水溝轟き流れ

時雨の中 街がだらだらと歩く

四十二歳の訃 秋蝉鳴きやまず

裸電球切れたトイレ闇に沈む

退職の日 ふと大切なこと蘇る

マウスをはこび 四十年の幕をひき下ろす

頭を垂れる ただ世話になったばかりと

門口で待つ猫に手を振る 野良なれど


【近詠】(2008.8.21)

火の音が わが身を吹きさらす

南無阿弥陀仏 一足ごとに 赤とんぼ連れ

ただの石になりきって 座禅している 

レイテ戦伝える 勝者も敗者もなし 哀し

ただに苦い思いを 指の間からこぼす

草を払い 石室 炎天に開かる

砂吹き寄せる風 切り裂く音となり

赤とんぼと目が合う 朝の出がけに

なんとなく嬉しい思いで 川べりを歩く

猫しのび寄る気配に 昼寝から目覚める


【近詠】(2008.8.15)

九十八歳の一期 十五歳の一期 炎天影なし

死に急ぐ若者あり 蝉時雨やまず

渡り終えた橋が 揺れやまない

炎昼の国道 猫ひたひたと渡る

空の極みに 機影マジックのように消える

海深く沈んでいた という夢であったか

深呼吸 してみることを忘れていた

びしびしと雷光穿つ 飛沫あげ

カーペンターズ 夏風邪の枕辺に寄り添う

再起動というしくみ 本物かもしれない

雌蝉がひしと抱えている洞 空は見えるか


【近詠】(2008.7.21)

西海の落日 緋の絶唱

糸を紡ぐミイラ ガラスの中に秋の風吹く

石を投げる手が投げられる

線路続いている果ての 炎ゆる

粘土を貼り付けたような島に生まれて 日暮るる

雑踏しんと静まりかえる朝を 歩いている

せかされるので 眠ったふりしている

ほろほろと 豆蒔くもよし

虹をわたろか 赤とんぼ 

腕時計を買い 時を預かっている

障子の穴から 日本海が覗いた


【海】掲載(2003年10月号)

顔がない 割れた鏡のうちにもそとにも

石畳 踏めばかんかんと死者の手が伸びてくる

鳩の目に 血の風光らせ 爆心地嘘のない広さもつ

鳩 赤い胸のうちをぶら下げたまま時間の真円を歩く

踏切の向こうに 冬の花火がカラリと上がった

ハンカチ 落ちている夜の線路をまたぐ

孤絶の月をかかげ 蒼い島である

俺にもくれた広告を 黙って捨てる

光 光に向かって 戻ればよい

その向こう にあるかもしれない


【層雲】掲載(1981年9月号から1982年7月号まで)

宇宙始まるときのふうせんを 誰が吹いたか

風を葉に春翻る 城

海暮るる 死者の齢石に刻まれ

ダリアのような月をぶら下げて 町が夕餉時

ビルをシルエットに 陽がぼよよよと沈む

電気つけっぱなしの ひげのまばらな口である

地球儀カラカラまわして 真白い秋になっている

礎石冷たく 城はるかに滅ぶ

何という顔だ 地球が消える

山を人を焼きつくしたあとの 鐘が鳴る

まっすぐに歩いてきた筈の 砂丘

雪降る海峡に 朝鮮放送が刻を告げている

空に 十一月の鳥がこぼれている

冬の月を 背中に凍らせる

秋天の どこかに翳が生まれつつある

化野を風が下りてくる 道のうねりに沿うて

化野暮れて 間断なく落ちてくる雪

雨のなか あてもないひざががくがく酔うている

今日が明日に マグマふつふつたぎる腹見せず

椅子乱立する部屋に 時のない夜がはじまる

十字架を連ね海の下 街が影絵になる

貧しい腕からも ひとり分の血をさしあげる

採られたばかりの血潮 朝の日にインクのように透ける

大動脈弁閉鎖不全症 魚のような青い息吐く

直立二足歩行霊長類「ヒト」 進化図にあとがない

どこまでも真っ青の空 ヒロシマ真下に 今もある

破れた月が ビルのどの窓にも貼られている

まぶたのうらにも光が見える 春になっている

春朝 いきなり水路工事のクレーンの喧噪で始まる

素通りしようとした とある町にうどんすすっている

なんのことはない 春逝くペースで雲が焚かれる

春逝く 鐘の音ひとつ手のひらにのせ

鐘の余韻のなか 夕日ついと落ちていく
索  引

層雲



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