俳句(定型)


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日記的に書いたもので、推敲が十分ではありません。お見苦しい点は、御容赦願います。




【近詠】(2018.7.1)

白椿白きまま落つ断崖下

あかときの風花知らず袖に受く

降りやまぬ樹間の雪に歩み入る

鴨三羽寄り合ひ眠る雪川原

炎昼下てんてんてんと輸液打つ

藪蚊打てば血飛沫走る手のうちに

虫の歌たけなわとなり史跡暮る

名月の斜交いに伸ぶ飛行雲

短夜に巻き戻し見る在りし日を

秋彼岸暗きに目覚め風を聞く



【近詠】(2018.1.1)

富士急へ六時集合風邪癒えず

フレンチも中華もいいね雪の富士

磔刑(たっけい)の顔出し写真冬日中

眠る子にこぼるるごとく冬銀河

白光のとどろき落ちて冬怒濤

棺の子の合掌凍てしまま重ね

磔刑像タリン聖堂に見る寒さ(※)

夏果つる雷なを北に轟きて

秋彼岸その名を呼べば空響み

群雲を縫ひ名月の定まらず


(※)エストニア国、タリンの「聖ニコラス協会」


【近詠】(2017.6.10)

富士急へ六時集合息白し


君と来て仰げる雪の富士玲瓏


富士帰りピザエビプリンダウン脱ぎ


返信は絶筆となりぬ二月夜半


アートなる部屋を穿がちぬ冬の雷


寒の朝不在着信五六十


目覚めよと母哭き崩る凍てし子に


棺の子の合掌の指白く凍つ



【近詠】(2016.9.15)

少女らの声上りくる若葉下

春一番海鳴り止まぬ無人駅

黄砂激し濁れる空を機が下る

新婚の目覚めは早し風光る

流行り風邪絶え絶えに泣く子の軽し

蜘蛛の糸雨粒撓め吹かれをり

もの音は黴の食ふ音書肆昏し

永劫の果てまで見ゆる秋思かな



【近詠】(2009.6.26)

新しき誌発行となり梅雨晴れに

誌の表紙夏の海透き朱の字萌ゆ

天気晴朗誌の発送了へ汗拭ふ

転居了へ梅雨の黒雲去りにけり

流感のニュース消えゆく知らぬ間に

報道のカメラ群がる蠅に似る

世論といふ如何ようにでも秋の空

子の転居アートに惹かれ青葉下

若葉揺れ空青々と広がりぬ

ITといふ魔王の如き蜘蛛絡み


【近詠】(2009.5.5)

風光る新芽の道の行き戻り

光受け光となりて椿萌ゆ

一群れの光となりて草芽吹く

初夏の目覚めは早し風の音

やはらかに風匂ひくる草の春

ヒトツバタゴ綿毛の如き花まとひ

泳ぐ鯉俄かに厚き雲湧きぬ

春芝に少女群れをり昼餉時

構内の新芽伸びゐる授業中

少女らの声上りくる若葉下



【近詠】(2009.4.4)


春浅き宝満山頂靄に浮く

風邪抜けぬ起きがけの夢忘られず

川一面に花弁を浮かべ雨止まず

伸びきたる石蕗の芽の青清々し

赤芽カシの歌ふが如し分譲地

忘られぬ夢思ひ出す鳥雲に

幼子の訪なふありて春隣

草餅の匂ひ漂ひ正午を打つ

入学の子等の強き目門を入る

職を得て子の声太く弾みをり


【近詠】(2009.2.14)

幾たびの戦を沈め海眠る

幾劫の命を包み海温む

幾劫の命育み春怒涛

海燦と輝る山影を日の出るとき

潮の香の新し磯人戻りくる

春一番海鳴り止まぬ無人駅

春一番列車を止めて離合待つ

黄砂激し濁れる空を機が下る

黄砂飛来春一番とともにあり 

春一番駐輪場を席巻す


【近詠】(2009.2.7)

万華鏡ハッシと華を彩りぬ

凍光に筑紫野明けぬ靄払ひ

凍光裡山から下りし獣哮る

久方に雪の重さを傘に受く

これほどの世の冷たさを知らざりき

リストラといふ寒風の中男あり

仕事なき家なき男月下ゆく

傲慢の果てか世の風凍てしまま

風邪の子を抱きて母の並びゐる

流行り風邪絶え絶えに泣く子の軽し


【近詠】(2009.1.1)

創世の日が透きのぼる初御空

初御空引く一機あり煌々と

初明かり湖燦々と光り合ふ

初明かり路標が示す羊歯の道

千の魂を埋めて雪の深さかな

化野の雪に雨降る西日中

甲冑着て城門に立つ冬烏

進化図に己を重ね見る寒さ

恐竜展真白く寒き余白あり

手袋に息吹きかけて少女待つ


【近詠】(2008.11.23)

落人の長も眠れる冬銀河

沈々と眠れる山に冬銀河

薄野に狂女の唄ふ子守歌

峠より雲流れきて時雨かな

筑紫野に雪積む気配宴の果て

頂の鉄塔光る時雨かな

猿岩の咆哮飛沫く冬の濤

凩の潮うちかけて曽良の墓

老農の尿長けり冬日落つ

冬濤の登り登りて巌立ち


【近詠】(2008.11.1)

冷や冷やと礎石膝下に天守立つ

甲冑着て海より来たる冬烏

永劫の果てまで透くる秋思かな

秋冷の羅漢にまなこなし哀し

秋風に噴水青く赤く散る

扇風機闇に向かひて舞ひ了はる

立冬の空ゆるゆると機がのぼる

廊下寒し一点の朱手術中

ゆく秋やガラスに残る指の文字

帰省みな頬骨高き島の顔


【近詠】(2008.10.4)

古の都は暮れず秋の風

行擦の古人や影朧

狛犬の苔濡らしゆく片時雨

里神楽八咫烏面躍り込み

神楽唄うねりうねりて月にまで

笙の音の友儚きや神楽唄

蜘蛛の糸雨粒撓め吹かれをり

秋の蝶華ぎ飛べる垣の上

彼岸花遠巻きに見る癖となり

ファインダーの縁よりこぼる秋桜


【近詠】(2008.9.5)

原爆忌昨日が見ゆる火の中に

原爆忌猫いずくかへ疾駆する

真清水のごと夏潮を掬ひ汲む

漏斗雲嵐の予感秘めしまま

雲海を貫き山の濡れしまま

千灯籠千の蛍火舞ひ上がり

里の秋光る陽やさし牛の糞

葉蘭翻る驟雨に洗ひ濯がれて

法師蝉鳴きたつ入江暮れ残り

虚空より放てるごとく蟹流る


【近詠】(2008.8.31)

夏の蝶真昼の海に君臨す

里神楽拍つ手踏む足老ひにけり

落人の山くろぐろと眠りけり

唖蝉のいつやら苔に埋みゐて

蝉時雨曽良の墓より下りきたる

雷一閃夜の対馬をはすかひに

大ひなる海を背負ひて墓洗ふ

炎天を背中に負ふて電車待つ

船酔ひの吾子ものいはず泪溜め

初秋やガラスの子らが光打つ

この人もこの人も秋鐘の寺


【近詠】(2008.8.17)

紫陽花の露千の萼よりこぼれ落つ

交差点を大ひろがりに喜雨の中

父の字を山頂なせり椎若葉

亡骸の葉に埋もるや蟻の塚

もの音は黴の食ふ音書肆昏し

扇風機闇に向ひて舞ひ了はる

白秋のデスマスクあり秋の暮

掘割の空蒼きより木の実落つ

秋天のどこかに翳の生れつつある

秋の蝶一谷渡るゆたゆたと


【近詠】(2008.7.21)

地球儀を回せば万緑滴り落つ

杉木立千年瀧を見てをりぬ

行く春や水脈ひとすじに島を曳く

麦笛ののぼりゆくらし風の中

天道虫子の手に花のごと摘まる

重力のきはみを燕翻へり

緑陰にハンケチを延べリルケ読む

その人の音沙汰なくて梅雨きざす

山を描く人に新緑滴り落つ

惜春のいたづらに野を駈けしのみ


【菜殻火】掲載(1981年9月号から1982年11月号まで)

忌の家に羽蟻はげしく舞ひにけり

雨の日の背振連山羽蟻とぶ

万緑や牛一頭を売りに行く

火の音を天に燃やして向日葵立つ

唖蝉のいきほいつかむ宙の端

爺逝きぬ夏野に白き杖ついて

海だけが見ゆる葬送夏の果

秋風に言葉返らず百羅漢

秋風や風のうしろに誰もゐぬ

秋風や非才の吾を持ち歩く

秋風やただにましろき予感あり

十月の鳥をこぼして阿蘇の天

水落つる一寸先や秋日散る

晩秋の駅煙草吸ふ間の停車

石に彫り雪の貌皆泣き笑ふ

野ざらしの果ての曼荼羅根より凍つ

祇王寺の結界の冷え底知れず

暮れ早し千の影伸ぶ念仏寺

田原坂昨日が見ゆる枯野越え

大動脈弁閉鎖不全症といふ寒さ

焚火の秀己が高きを吹きさらす

流転といふことばは悲し人の春

春昼の祈りとなりて火の燃ゆる

爆心地鳩春愁の目をひらく

ありし日の名を呼び酔へり鳥雲に

四月尽雨に朱を増す土器の片

囀りを天に石室開かるる

南風の鳴りつつ現るる大干潟

緑陰の甕に夕べの水満たす

雲峰を離るまひまひひきつれて

都府楼跡がらんどうなり梅雨しぶく

大梅雨の裾野を紺に降りつつむ

雷一閃産屋に青き火を焚けり


【馬酔木】掲載(1982年4月号から1982年8月号まで)

暁千鳥西天の星荷ひ翔ぶ

春昼の鳩いっせいに低くとぶ

元寇の石を棲み家に春の蟹

青大将泳ぐはがねの首をたて
索 引

馬酔木

菜殻火

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